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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第9章

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847.コード

 データ回収から一週間が経った。

「——やるなぁッ……!」


 PTSD、〝魅了〟、〝殺し合いの定め〟……。解決すべきことは様々あったが、キラは基本的に鍛錬をして過ごしていた。

 諸々の問題に古代人たちが挑んで繰れているのだ。

 〝ママ・ポッド〟開発における〝雷の神力〟の提供、および〝覇術〟こと〝ハドウ・コピー〟の譲渡は、どうやら彼らの根本を揺るがす歴史的大事件だったらしい。


「〝抜刀〟――」

 この世界のあらゆる事象に〝波動〟が絡んでいることも大きい。〝覇術〟を完璧に体得することは、すなわち〝波動〟を操ることにも直結する。


「〝閃〟」

 〝覇術〟のマスター化は、ほぼ終えた。

 たった今繰り出した抜刀術による〝飛ぶ斬撃〟も、ミスなく放つことができる。

 おかげで、ホログラムなどではない、本当の古代人を相手にしても戦える。


 とは言っても、そこでようやく五分五分。

 オロスの一番弟子を自称するロンガは〝波動術〟を使うものの、練度が桁違いに高い。

 奇襲的に、飛び道具的に、タイミングも測って撃った〝閃〟。それをロンガは、硬化した腕で弾いてみせた。


「……ッ!」

「まだまだ判断が甘いなあ! 刀の切れ味とイコールってわけじゃないんだ、ぜっ!」

 一瞬の動揺も、古代人相手には命取り。

 腕の硬化と、脚の強化。ロンガは二つの〝波動術〟を重ねがけして、防御しながら突っ込んできていた。


 瞬く間に、懐に潜り込んでくる。

 やられる――少し前ならば、そう確信していただろう。


 だが今は、

「――〝ショット〟」

 〝コード〟を使える。

 〝雷〟による衝撃波を咄嗟に放ち、ロンガを吹っ飛ばした。


「ぶへっ」

 最初は、〝雷の神力〟そのものの制御を試みた。

 が、古代人たちをもってして、現状では不可能という判断が下された。

 最大出力二十パーセントまでならば調整ができる。実際に技もいくつか編み出すこともできた。

 しかしそれ以上となると、途端にコントロールが効かなくなる。

 百パーセントの力を目一杯にこめることはもちろん可能なものの、三十、四十、五十、と刻むことができないのだ。


「カーッ! ったく、なんなんだ! 組み立てもへったくれもねえ!」

「そりゃこっちのセリフさ……!」


 ネメア曰く、『制御機能が欠けている』。

 ツギハギだらけの体が原因かとも思ったが、どうやらそうではないらしい。

 驚くべきことに、ブラックも同じ状況だったのだ。

 振り返ってみれば、剣に纏わせたり分身を作ったり、ある程度コンパクトにまとまった使い方をしていた。


 ただ違うのは、〝闇の神力〟の性質上、百パーセントを放出したまま維持できるということ。

 むしろ周囲を〝闇〟で満たすのが強みであり、一撃一撃を小分けに放つことに重きをおく〝雷〟とは根本的に立ち回り方が異なる。

 そういうわけもあって、本格的に〝コード〟を会得する方向に舵を切ったのである。


「〝ベータ・チャンネル〟――」

 まだ感覚頼りの技もあるが、〝コード〟の実態は解明済み。

 使えるものをオロスやネメアに一通り見てもらったところ、その仕組みがあっけなく判明したのである。


「〝パルス・オクタ〟」

「――っぶね!」

 〝コード〟とは。

 〝覇術〟を最大限活用した〝雷〟の技。

 おそらくは、『前のキラ』が編み出したコントロール方法である。


「曲がれ……ッ!」

「――追尾すんのっ?」

 どういうわけか、〝雷〟の制御機能が欠けている。故に、二割までの小技か全力の大技かという、大味な使い方しかできない。

 それを解消するために、『前のキラ』は〝覇術〟を取り入れたらしい。〝波動〟を導線にして、〝雷〟を細かく操る。

 〝覇術〟さえしっかりと使えれば、全開してしまう出力を絞ることが出来るのだ。

 〝チャンネル〟はその加減のための符号。〝覇術〟と〝雷〟をどのくらいの割合で練るのかという指標となる。


「ってか〝ベータ〟って、五割以上じゃなかったっ? 容赦ねェ!」

「〝アルファ〟をことごとく破ったくせに……!」

 〝雷〟を矢継ぎ早に放ち、しめて八本で狙い撃ちする〝パルス・オクタ〟。

 ロンガは文句を言いながらも、〝波動〟を纏わせた剣で次々と打ち払う。剣はもちろん、人一人など簡単に飲み込めるというのに……。


「――そういう使い方もある、か」

 以前までならば舌打ちをする他になかっただろうが、今のキラはロンガが何をしているのか理解できた。

 彼は、剣に纏わせた〝波動〟を、〝雷〟に向けて放出している。

 そうすることで一瞬だけ足止めしつつ、再度〝波動〟を剣身に纏わせ、今度は斬る。

 それを、一秒にも満たない時間で、文句を言いながらもやってのける。改めて、古代人の無茶苦茶っぷりに舌を巻いた。


「そら、突破したぞッ!」

 ほぼ無傷で〝パルス・オルタ〟を捌いたロンガ。

 だがいかに古代人といえど、〝雷の神力〟相手には神経をすり減らす。まともに喰らえば継戦は不可能なのだ……緊張感は計り知れない。

 ゆえにロンガは、少しばかり息が上がっていた。疲労の色が顔に浮かび上がり、呼吸も乱れ始めている。

 古代人相手に隙と言える隙ではないが――キラは果敢に攻めることにした。


「〝アルファ〟——〝プラズマ〟」


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