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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第9章

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830.前代未聞

「名付けて、〝ママ・ポッド〟。この中に〝雷〟と〝亜空〟の〝神力〟を埋め込むことで、核融合炉なんて目じゃないくらいの電気エネルギーを生み出すんだよ。理論上では、半永久的に」

「これが……。〝雷〟を、永遠に……?」

「正しくは、そこから発生する電気エネルギーを掬い取っていくカンジなんだけどね」


 ホログラムには続きがあった。

 回転するボールを包む形で円筒が現れ、そこからさらに、ガラス張りのドームが円筒を囲う。

 その全てをもって〝ママ・ポッド〟と名付けたらしかった。


〈ねえねえ。〝雷〟はわかるんだけどさ。〝亜空〟ってどういうこと? 私の聞き間違い?〉

「いやいや、ちゃんと言ったよ。正確には〝亜空〟のコピー……〝アクウ・コピー〟なんだけどね。先代たちが遺してくれたもののなかに、〝亜空〟のカケラがあってね。見たカンジ空っぽの小瓶の中に、〝波動術〟を使って〝神力〟を捕らえてくれてたんだよ」

〈〝神力〟……コピー? っていうか、これからって話じゃなかったっけ?〉

「ん? そういえばちゃんと話さなかったっけ? 〝神力〟の複製自体は可能だよ。二千年もかかったけどね」


〈うっそ……。なら、〝雷〟のコピーも?〉

「モチ。理屈と構造が把握できてればコッチのもんだよ。言ったでしょ、比較検証だって。っていっても、まだ〝ママ・ポッド〟は試作段階で、〝イカズチ・コピー〟も試運転中なんだけどね。仕上げるにはキラくんの協力がどうしても必要なんだ」

〈こ、古代人やばー……〉


 〝神力〟を複製するという話自体はすでに聞いていた。

 しかしそれは〝神力〟を保有する〝授かりし者〟ありきの研究であり、〝神〟をも理解する前代未聞の挑戦なのだと思っていた。

 二千年という途方もない時間をかけたとはいえ……にわかには信じ難い話だった。神話そのものを目の当たりにしているような気分になる。


「っていうか……。そもそも、〝神力〟のコピーって可能なの?」

「そりゃもちろん。どんなエネルギーも元を辿れば原子の集まりだし、その原子にだって法則がある。核分裂させるみたいに、〝波動〟を多分に含んだ特殊な電磁波を当てれば可能なんだよ」

「む、難しい話な気がする……。〝亜空〟も〝雷〟も、同じ手法で複製できるってわけだ」

「〝亜人〟が〝カミ〟ってやつだって聞いてさ。ピンと来たんだよ。〝亜人〟が使ってる〝亜空〟は、すなわち〝神力〟なんじゃないかって。で、その〝神力〟である〝雷〟と全く同じ特異性を持つはずだって。したら、ビンゴ! 技術班のみんなどころか、リーダーも息切らして駆けつけて歓声あげたよねえ」

 ちらとマントスを伺うと、すでに背中を向けていた。わざとらしい咳払いをして、少しばかり上擦った声で言う。


「歴史的な発見だった……。喜ばぬものはいない」

 恥ずかしそうではあったが、その喜びようを否定するようなことはなかった。その様子に、キラは〝神力〟のコピーというのがどれほどのものかを実感した。

 同時に、少し寒気がした。

 古代人が〝神力〟のコピーをしたことではない。

 〝コピー〟という概念を、これまでに幾度か身をもって体感している……その事実に対してである。


 〝人形〟たちの〝神力〟。

 帝都で目撃したペルーン・パニック。

 〝コルベール号〟の友人との苦々しい対決。

 その全てが〝始祖〟ディオ・アルツノートにつながっている。

 もっと言えば……。

 〝被験体十六号〟を名乗った〝キラ・コピー〟。〝パレイドリアの村〟の〝神殿〟で逃げ惑うほかになかった〝ホロビノイカズチ〟。

 自ら勇者を名乗ったハルトの〝コピー能力〟も、〝始祖〟の思惑ではないにしろ、何かしらのつながりがあるだろう。


 全てではないにしろ、それらがこの〝歴史的な発見〟から始まったのだとすれば……。一層、〝始祖〟を野放しにしておくわけにはいかなくなった。

 そのためにも――。


「肝心なことを聞いておきたいんだけど。どうやって元の時代に帰るの?」

「ん〜、そうだった! そっちも話しておかなきゃね。私たちの最終目的にどうしても巻き込んじゃうから」

「……? 僕らが巻き込んだ、じゃなくって?」

「私たちが〝六つ目の獣〟をどうにかしたい、ってところに転がり込んできたなら、そうなんだろうね。キミたちきっかけで動かなきゃいけなくなるから。けど、そうじゃない」

「あー……?」


「〝六つ目の獣〟の封印が解けるだなんて、最初から織り込み済み。先代たちは最大限時間を稼いでくれただけなんだよ。私たちは、〝雲島時代〟を終わらせるために、長い時間をかけて準備をしてきたんだ」

「ああ……。そうだ。ネメアたちが最終的に目指すのは、地上の奪還」

「そう。だから〝六つ目の獣〟が邪魔で……だから〝亜人〟も無視はできない。いくら〝獣〟を殺そうとも、〝亜人〟がまた第二第三の〝獣〟を野に放つ。そんなことを許容してちゃあ、私たちに安寧は訪れないんだよ」


 〝亜人〟と……〝神〟と事を構える。

 先代たち〝自警団〟の時代から、それが最終目標だったのだろう。

 〝神〟との戦争など、考えるだけでも不可能に近い気がするが……ネメアら古代人は、

〝力〟を掌握しつつある。なにしろ、その構造を理解し、コピーまで可能としているのだ。

 彼ら自身が〝神力〟に近しい力を身につけるのは、決定事項と見てもいい。

 途方もないことに巻き込まれつつある……キラはそう肌で感じた。


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