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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第9章

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820.飼い主

「キミたちも対峙したアイツ……〝怪物〟の飼い主が誰だか、わかる?」

「飼い主って……。あんなのを従えてるのがいるって? ……あり得ない」

「だよね〜。先代たち……〝雲島〟時代以前の――地上時代の偉大な先輩たちは、〝怪物〟と対峙した際、〝波動術〟でようやく感知できるくらいの微妙な空間の揺らぎを発見したんだよ。それを、〝亜空〟って呼ぶことにした……」

「〝亜空〟……。亜空間……」


 苦い記憶が蘇る。

 〝帝国反乱〟のあの日……〝コルベール号〟の友達を殺したあの日。おそらくはサガノフが、〝亜空〟を操る〝神力〟を与えられていた。

 もしも、それが同じものであるならば……。


「その当時、人類は絶滅に瀕していたから、〝亜空〟の調査にまでは手を伸ばせなかったけど……。〝雲島〟に時代をつなぐことに力を注いで、〝亜空〟については後代である私たちに任せたんだよ」

「で……? 〝亜空〟に何がいるか、知った?」

「……正確なことはサッパリ。あれから何千と調査に出向いたけど、ごく微妙なデータをとって帰るだけだったから。なんせ、〝亜空〟の座標は〝怪物〟のお腹ら辺にあるもんだから、成果を持ち帰るだけでも御の字なんだよ」

「でーた……」


「そ。この世は〝波動〟に満ちている。だから、その周波数を計測することで、〝亜空〟が何なのかを調べてたんだよ。で……一つの結論に至った。どうやら〝亜空〟ってヤツは、私たちも知り得ない未知の〝力〟で形成されていて、その中に何者かがいるってね。そいつを仮に〝亜人〟って呼ぶことにしたんだ」

「〝亜人〟……」

「その正体を、キミは知ってるんだね? ……私も、今、見当がついた」

「うん。前に、その〝力〟と対峙した。あの〝気配〟はまぎれもなく〝神力〟だったよ。〝怪物〟のことも考えれば――〝亜人〟は、〝神〟ってことになる」

「やっぱりねえ……」

 椅子をクルクルと回転させながら、ネメアは考え事に耽った。といってもほんの十数秒ほどで決着したらしく、またも四角い板を操作し始める。


「前だったらもうちょい絶望してたとこだけど……。今は割と何とかなる気もしてるんだよね〜。さあ、なぜか?」

「え……。さあ?」

「キミらがいるからさ。〝氷枷〟の解析で〝神力〟ってやつの具体的なデータは取れたし。それに……キミのポーチに入ってた〝お守り〟。それ見た時は笑っちゃったよ」

「……? なんで?」

「私らってさ。言ってみればビンボー集団なワケ。地上奪われて、空が生活空間になっちゃって、資源を無駄遣いなんてことはできない。昔は使役ロボットを使って効率化を図ったらしいけど、そんなことに鉄も銅も電気も使えない……だって、私らが自分でやった方が何千倍も早いんだから」

「そういえば……。〝神殿〟にいたあの鉄人は見かけなかったな……」


「そうはいっても、情報の共有とか認識の共有とか、そういうためにも端末は必要なわけ。スマホとか、タブレットとか、パソコンとか。そのための通信設備もね。ま、早い話がそっちの方がいいよね、ってなったってコト」

「すま……たぶ……? それが……なんだって?」

「こういう端末って、起動するにはエネルギーが必要なのね。そのエネルギーの最適解が、電気……わかりやすく言えば、〝雷〟。で、こうして手に持つスマホとタブレットとかは、持ち運びできる〝雷〟が必須。〝雷〟を蓄えてくれるバッテリーが」

「うん……? あの、それって……」

「キミのもつ〝お守り〟は、スマホのバッテリーなんだよ」


 思っても見ない事実に、キラもエルトも絶句した。もう一度ポーチから〝お守り〟を取り出して、しげしげと見つめる。

 するとネメアが、参考にとばかりに、スマホを投げてよこした。


「すまほ……。これが」

〈ほんと、板みたい。ちょっと重たいね〉

「これが、この中に……。けど確かに……。なんとなく似通ったものがあるというか……。形状とか、手触りとか……」

〈〝旧世界の遺物〟。謎が一つ解けちゃったね〉

「うん……。でもここって、〝旧世界〟っていうかな?」

〈旧は旧でしょ。ひっくるめて〉

「あー……。ね」

 〝旧世界の遺物〟オタクなセレナには黙っておいた方がいいかもしれない。そんなことを考えながら、スマホをネメアに返す。


「けど……。じゃあ、だいぶ頑丈なんだね。すまほって。ばってりーに……この〝お守り〟に、これまでずっと助けられてきたんだよ。〝雷〟の予備の保管庫として」

「……ここからが本題ね。私たちがなぜ〝雷〟のコピーを可能と思ったか。何を思って、キミの〝お守り〟から希望を見出したか」

「ん? うん……」

「その前に、よくよく分かってて欲しいのが……。君たちが、この時代よりも、ずっとずっと未来からやってきたってこと」


 神妙に、丁寧に切り出すネメアに、キラは並々ならぬものを感じた。

 態度も仕草も表情も、それまでと変わらず飄々としている。ただ、その口調と声のテンションだけは、希望を口にしながらも、絶望に浸っているかのようだった。


「同様に……。そのバッテリーも。未来のものなんだよ」

「え? けど、スマホのだって……」

「そう。その通り。この時代のものではあるよ。だけど、今じゃない。数ヶ月後か、数年後かは定かじゃないけど、未来のものなんだよ」

「ああ、そういう……。でも、別にそれくらいなら大したことないっていうか……。だって、ネメアたちは千年以上も生きてるんでしょ? 誤差みたいなもんじゃん?」

「その誤差で、世界が変わっちゃうこともあるんだよ。私がキミらを見つけたあの一瞬だって、世界の命運を分ける出来事の一つ……かもしれない。まあそんな話は置いといて――重要なのは、そのバッテリーの正体だよ」

「正体……?」

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