プロローグ
セドリックとドミニクが目の当たりにした、キラの〝気配〟の消失。
それは確かな事実である。あの瞬間……〝宵闇現象〟に引き込まれた数秒後、キラはブラックと共にこの世から姿を消した。
「ここは……?」
〈え……えっ?〉
「なんだ……?」
キラとブラックは、事実、〝贋の国〟アベジャネーダからは居なくなった。
広くいえば、エグバート王国とルイシース王国とが隆盛を極めるあの世界……あの時代から、消えてなくなった。
だがそれは、〝宵闇現象〟に飲まれて死んだわけではない。
〝転移の魔法〟のごとく、飛ばされただけだった。
何十世代と続く人類史の原点……〝原初の時代〟に。
「なんか……空気が違う?」
〈……! 〝魔素〟がない!〉
これは。
これより始まるのは……。
「……? なんかずっと地響きが……」
〈……横、見て〉
本来いるはずのない異星人にも近い三人組が、こののちの〝時代〟全てを歪ませる物語。
人知れず、〝時代〟そのものを形作る物語。
そして。
「……〝腕〟だ」
〈〝腕〟だね〜……〉
正しく、〝始祖〟アルツノートに至る物語。
〝贋の国〟アベジャネーダで混沌が渦巻くかたわら、キラたちは〝怪物〟により地上を支配された世界で生き残ることを強いられていた。




