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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
7と2分の1章

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730/961

706.1-13「上限値」

「ミリー、大丈夫?」

 セドリックとドミニクの二人から離れ、ミリーの方へ歩み寄った。同い年くらいの女の子二人と一緒になってへたっている。

「あ……。キラさん……様」

「いいよ、いつも通りで。途中で態度変えられるの、好きじゃないんだよ」

 〝第二回ポイント大調査〟でいくらか手解きをしたとはいえ、それで体力が増えるわけではない。横たわった体を起こすくらいの気力があるだけ、友達二人よりもマシというくらい。


「騎士団入って、どう?」

「へ……。ん……。つらい、です」

「そう」

「逃げたいくらい……だけど。ちゃんと、もっと、できたら……きっと……って」

「友達、できてよかったね?」

「――はい」

 タオルを顔にかぶっている女の子二人は、話を聞いているのかいないのか、微動だにしなかった。ただ、耳まで真っ赤なのは確か。

 ミリーもそれに気づいたのか、くすくすと笑い出し……キラはそれ以上は踏み込まずに、そっとその場を去った。


〈どうしようかな……。〝覇術〟の特訓したいけど、相手いないとなあ……。〝雷業〟は下手に使えないし……〉

〈基礎トレも大事だし、そっちでいいんじゃない? 延々走り回るとか。〝呼吸〟の強化にもつながって一石二鳥。ど?〉

〈んー……。ま、それでもいっか〉

 もう一度セドリックとドミニクの様子を見て、少し考えてから、グラウンドを走り始めた。


〈ああ……。やっぱ、裾ヒラヒラすんの、気になる〉

〈こればっかりは慣れだよね〜。私も初めて鎧着たときはこんなんでやってけるのかって思ったもん〉

〈エルトでもそういうもん?〉

〈そりゃね。魔法で重さ感じないようにできるとはいえ、物理的に邪魔なとこが出てくるんだよ。で、重さをゼロにすると、これがまた違和感が増すの。音と、着心地と、実際の重さ……そういうのにズレが出ると、どうしても気になってくるんだよね〜〉


〈へえ……。そういえば、そういう防具とかって騎士団から支給されるの?〉

〈キラくんは必要ないとして……一般志願者はそうだね。〝三日研修〟が終わった翌日かその次の日に、身体測定とか諸々の健康チェックが行われて……その後にサイズが合うものを、って感じ〉

〈一般志願者……?〉

〈騎士学校があるのは、キラくんも一応知ってるよね?〉

〈ん……まあ。ふんわり〉

〈それでいいよ。で、騎士学校なんだから、竜ノ騎士団とか王国騎士軍とか、騎士職を目指してる子達が大半なわけよ。そういう子達は、騎士団あるいは騎士軍に合格後、学校の方から支給されるようになるんだよ。当然の話だけど、在籍の長い学校の方が身体的特徴をより把握してるからね〉


〈ああ、そういうこと。けどさ、セドリックとドミニクみたいに、学校には行ってないけど自分の革鎧を持ってるってこともあるよね。剣もだけど。そういう場合は?〉

〈基本、騎士団支給のものに合わせるようになるかな。どうしても支給された鎧が自分に合わないってなったら、申請してオーダーメイドしてもらうか。どっちにしろ、一目で『竜ノ騎士団だ!』ってわかるような統一感がなきゃダメなんだよ〉

〈あ〜……。ってなると、二人ともどっちみち防具を変えなきゃいけないのか……。んー……国外任務になるんだし、あんまり良くない気がするなあ〉

〈そこでキラくんの権限だよ。元帥がいいっていうんだったら、他は文句言えないからね〜〉


〈けどさあ。それって二人を特別扱いするってことで……。これからも考えると、割とマイナスにならない?〉

〈〝見習い〟なのに〝元帥〟の任務についてくって時点で注目されるよ。二人とも大会に出てるし、しかも新人らしからぬ活躍だってしてるんだから、別に気にしなくても大丈夫だよ〉

〈そんなもんかな……〉

〈てか、元帥とタメ口って時点で色々察するものがあるんだからさ。気にしない、気にしない〉


 言われてみれば、セドリックもドミニクも目立つ部類。片や一八〇越え、片や一四〇程度と、アンバランスコンビなうえに、どちらとも美形である。

 率先して動くことが身についているために、いつでも注目の的になる。

 旧エマール領での経験を経て、〝闇ギルド事件〟ではその中心にすら飛び込んでいた。〝黄昏事件〟においては、第五師団支部で随分と噂になっていた。

 今更何が来たところで、セドリックもドミニクも躊躇することはないだろう。元から周りの目など気にする二人でもないのだ。

 そう考えると心配するのが馬鹿らしくなり、キラは自分のことに集中した。


〈新しい〝覇術〟身につけたいけど……先にエルト流を覚えるのがいいかな〉

 傍目には黙々とグラウンドを走りつつ、エルトに〝声〟をかける。

〈なになに? 〝空梟〟? 〝風梟〟?〉

〈や……。〝気配面〟は十分揃ってるから、またあとかな。その前に〝気配視〟と〝気配汲み〟の掛け合わせ……〝気配読み〟を安定させたいし〉

〈ちぇ。じゃあ、何を覚えるって?〉

〈脚の強化だよ。スピード。新しい攻め手が欲しくってさ。ほら、僕の戦闘スタイルだとカウンター中心じゃん?〉

〈ん〜、なるほど。〝腕〟の時に使ったやつね?〉


〈そそ。それと……セドリックのあの戦い方見て羨ましくなった。ドンッ、てトップスピードに乗るのカッコよすぎた〉

〈わかる〜! 師匠とかユニィも当然のように速いもんね〉

〈ランディさんが何回か見せてくれた超威力の斬撃も身につけたいんだけど……〝人形〟のこと考えたら、パワーよりもスピードを優先した方がいいかなって〉

〈ああ、確かに。ほんっっっと……厄介だもんね〜。あれで不意打ちやられたらたまったもんじゃないよ〉


〈……。そう言えばさ。こういう日常的な瞬間こそ、〝人形〟……っていうか、〝始祖〟としちゃ狙い目じゃん? なんで襲って来ないんだろ?〉

〈んー……。〝始祖〟にも天敵がいるんじゃない? ほら、帝都で初めて遭遇した時……〉

〈あ……。あの光の柱? アレを放った存在が〝始祖〟を抑止してる……ってことか〉

〈あとは、そもそも〝人形〟を目立たせたくないとか? あんなの、元帥だった私ですら知らなかったことだし……あんな脅威を目にしたら、騎士団の総力を持って当たらなきゃいけない〉


〈ふん……。レオナルドも、〝始祖〟は表舞台に出て来ないって言ってたからね。〝人形〟なんて特殊すぎる存在を頻繁に使っちゃえば、墓穴を掘ることになる……〉

〈あれだけの〝力〟を持つ人間が、なんで隠れたがるかはちょっと疑問だけど……。とりあえず、当分はそう簡単に狙ってはこれないはず。キラくん〝元帥〟になっちゃったんだからさ。何かあったら、騎士団が動く〉

〈まあ……ともかく。〝瞬間移動の人形〟を軽くノせるくらいには、自在に速さを操りたい。〝パレイドリアの村〟で対敵した個体には、最後までしてやられたから〉


 ちらりと、〝コード〟の存在が浮かぶ。そのうちの〝ショート〟は、〝力〟の核を壊すような技……〝人形〟への有効打になるのは間違いない。

 だが……。ユージとハルト相手に使った〝ショート〟では、到底〝人形〟に通用しない。感覚でしか使うことのできない状況では、運頼みの面が大きい上に、時間がかかる。

 何はともあれ、その原理を理解するのが先決であり……そのきっかけすらつかめていない現状では、どれだけエルトと相談しても無駄というものだった。

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