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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第7章

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プロローグ

『竜ノ騎士団の試験日が決定しました』


 そう告げたのは、竜ノ騎士団〝元帥〟であるリリィでもセレナでもなく、王国騎士軍所属である近衛騎士〝総隊長補佐〟のクロエ・サーベラスだった。

 〝王立都市大学〟で模擬試合を行なったあとのこと。流れで共にエルトリア邸に向かうことになり、馬車の中で二人きりの状態で切り出してきた。


 といっても、キラは最初はぼんやりとしていて、よく聞き取れないでいた。

 さまざまな要因から彼女に敗北したことがあまりに悔しく……有り体に言えば落ち込んでいたのである。エルトでさえ慰めてくるのだから、相当なものだった。

 それが、昨日の出来事である。


「おお、ついにか……! で、いつだよ?」

 ずび、と鼻を啜りつつテーブルに身を乗り出すのはセドリック。彼の恋人のドミニクも、同じように「ずび」と鼻を鳴らし、前のめりになる。

 閑散としてい〝竜のくるぶし亭〟食堂にて、今にも訓練に身を乗り出しそうな病人二人を、キラはリーウと共に椅子に押さえ込んだ。


「ほら、落ち着いて。言っとくけど、今日も明日も訓練はやらないからね。風邪も完璧には治ってないみたいだし、なによりリーウからゴーサインが出てないんだから」

「そうですよ、お二人とも。そんなところまでキラ様に倣ってはなりません」

「ぅぇ……? リーウ?」

 漏れ出た変な声を三人ともに笑われ、キラは咳払いをした。


「試験は一か月後。内容はまだ伏せられてるけど、大会形式になるんだってさ」

「ほぇ〜……。大会」

「っていっても、合否の基準は勝ち負けにはないっぽい」

「おいおい……困るな、キラ。俺たちがビビってるって? 勝ちに行くに決まってんだろ! なあ、ドミニク」

「……風邪でテンションおかしくなってるね。見なよ、君の恋人……迷惑そう」

「なにっ?」


 剣士として接近戦主体なだけあって、セドリックの負けん気は強い。

 ただ、ドミニクはそうではない。

 サポート的な立ち回りを得意とする彼女は、何度か組み手の訓練を行ったとは言え、接近戦には難がある。一対一の真正面勝負となると、流石に不安を覚えているようだった。


「ねえ……。勝ち負けには意味がない……ってこと? 単に実力を測るっていう意味合いで考えていい?」

 しずしずと問いかけてくるドミニクに、キラは曖昧に頷いた。

「うん……。クロエの言い方的にはそんな感じだったし……。それに、大会に出るのは志願者だけじゃないから……大会の結果は、あくまでも参考程度なんだと思う。そもそも、騎士団にふさわしいかどうかなんて、戦いだけじゃわかんないからさ」

 ホッとするドミニクに変わって、セドリックが突っ込んでくる。


「ってことはよ? 例えばコリーさんとかジョディーさんとかも出てくるってことか?」

「あらゆる立場の騎士が参加するお祭りのようなものにもする、って言ってたから……たぶん。見習いとか下級騎士とか、クラスごとに代表者を決定してから、トーナメント戦とかになるんじゃないかな」

「はぁ、なるほど……! そりゃあ、修行に身が入るってもんだな!」

「だから。まだ安静だからね?」

「わかってるって! それで、何するんだ?」

「本当に分かってる……? まあ、今張り切ってもほぼ無意味だけど」

「? どういうことだよ?」

「昨日、冒険者ギルドに行ってきてさ。ちょうどいい依頼を見つけたんだよ。それが〝第二回ポイント大調査〟。知ってる?」

「おお……! 俺ら、〝闇ギルド〟の一件に巻き込まれて、第一回を逃しちゃったんだよ。そうか、それか……!」

「っていうことは、セドリックもドミニクも参加でいいね? 四日後に集合予定だから、しっかりと休んでおくこと。じゃないと……置いてく」

 セドリックとドミニクが小さくグータッチを交わす傍で、二人の看病モードに入っていたリーウが我に帰ったかのように話に混じった。


「あの、私は……?」

「リーウも、良ければ。この後参加の手続きしに行くから」

「もちろん、参加いたします。結局、キラ様との訓練もおざなりになっていますから」

「だね。ところでさ……。僕、読み書き苦手だから……手続きお願いできる?」

「……キラ様。この三日間で、勉強されてはいかがでしょうか?」

「ぼ、僕も色々と課題ができちゃったから。ほら、話したじゃん。クロエに負けたって……だから……」

「では、依頼中にでも。まさか、移動中も勉強できないとは言わないですよね?」

「……はい」

 セドリックとドミニクの二人には笑われ、ついでに頭の中でエルトの笑い声も響き……。兎にも角にも、そういうかたちで今後の予定が定まった。



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