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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

サイコパスが異世界に転生した噺

作者: ヤマダタロウ

サイコパスが異世界に転生した噺。


描写を詳細には書いていませんが

グロが苦手な方は閲覧しないで下さい。



長編異世界転生恋愛モノを描こうとしたキャラの副産物です。なんでだ。

どれも話が長くなってしまって飽きて書けなくなるのでこいつだけでもと思いつつ投下させて頂きます。

短編のつもりでも長くなって途中で飽きてぶつ切りにしました。



描写を詳細には書いていませんが

グロが苦手な方は閲覧しないで下さい。

僕には前世の記憶があります。



そうですね、所謂《記憶持ち》というやつです。



前の世界の僕はね、()()ではなかったんです。



沢山の動物を殺していました。



沢山の人間を殺していました。



ずっと、何かを殺す光景だけがあった。



それが、僕の前世でした。



でもね、前世は前世。あれは今の僕じゃない。



最初はね、そう思ってたんです。



今の僕はね、伯爵家の三男として産まれて金に困らない何不自由ない暮らしです。



でもほら、金で貴族位を買った成り上がり貴族でしょう?



それで三男。



身内からも他人からもそこまで大事にされることはなかったんです。



使用人にはいないものとして扱われ、ご飯を3日間食べれないことはざらでした。



目があったと理由で兄達に殴られ



下賤の血といわれて他の貴族からは誹謗中傷⋯だけではすみませんでしたが。



まあね、色々あったんです。



唯一、僕を愛してくれていると思っていた母も、⋯母が愛していたのは僕ではなく父だった。



寂しかったし、苦しかったんです。



でも、だからといって人を殺そうなんて思わなかった。



⋯僕が5歳の頃、夢をみたんですよ。



前の世界の、()の記憶。



部屋の中で、医術士と()だけが居ました。



それで、その医術士の方が()に聞いたんです。



「どうして殺したの」



それに対して()は「うるさかったので」って答えたんですよ。



⋯あのときの()に、殺した人達に対する特別な殺意はなかったんです。



ただ目の前を飛ぶ蚊を叩き潰すような、そんな軽い感覚で人を殺していたんです。



それを知ったとき、僕は畏怖と同時に尊敬を抱いたのです。



それまでは、人を殺して満足げに笑うだけの記憶しかなかったので怖かったんですけど。



()にとって、蚊も犬も人間も価値の等しい取るに足らないものだった。



⋯今の僕はなんて馬鹿なんだろうと思いました。



だって、僕を蔑ろにする人間に憎悪と軽蔑を抱きながらも殺せないと思ってたんです。



()より殺す動機があるのに⋯ほんと、馬鹿みたいじゃないですか。



それでも僕にはすぐに殺せるほど勇気はありませんでした。



だから、()が今までやってきたように小動物から殺そうと思いました。



貴族邸に侵入する動物なんてまず少ないですけど、食糧を扱う商家でもありますから、まず動物とは滅多に会えないんですよね。



だから下町で評判のいい冒険者に、冒険者に憧れる貴族の子供を扮して近付きました。



連れて行ってくれたらお金あげるから、僕を冒険に連れて行ってって。



まあ、断られましたけど。



じゃあ、どうすれば殺せるのかを考えていたその日の夜、また夢を見ました。



()は友達に飴玉をあげていました。



異様に赤い飴玉でした。



口に入れた途端顔を顰める友達に()は笑って聞くんです。



「美味しい?」って。



僕には()が殺すときの記憶しかありませんでしたから、殺す前も殺した後も知らなかったんです。



けれど、僕はその夢で殺した後のことを理解してしまった。



()の異常性を再認識してしまうとまた怖くなってしまって、勇気がなくなってしまった。



僕はあそこまで狂った人間にはなれない。



そのときまでは、そう思ってました。



六年前、飢饉が原因で治安が荒れたのを覚えていますか。



今は持ち直してきてはいますが、その頃は外出を憚られるほど賊があちこちで騒動を起こしていたでしょう。



この王都ですら、そうでしたね。



僕が母に連れられて商会に行く道でのことでした。



賊に襲われたんです。



護衛は全て殺されました。



金目当ての犯行で、「抵抗しなければ傷付けない」と言われたにも関わらず侍女のひとりが恐怖のあまり泣き喚いたんです。



恐怖が伝染して、またひとり、またひとりと泣き出しました。



母は護衛より侍女を多く連れてしまいましたから、そのせいでもあったんでしょう。



そして賊の一人が最初に泣いた侍女を殺しました。



あまりに呆気なく、首を裂いて死にました。



前の()は、そんな優しい死を与えるような人ではなかった。



屈辱を、苦痛を与えて殺すような人でした。



だから、その殺し方はあまりに新鮮で少し魅入ってしまったんです。



そんな凄惨な現場を黙って見ている僕を、賊達は恐怖のあまり放心していると思ったんでしょう。



彼らは言葉通り、抵抗しなかった僕たちを無傷の死体の山に放置して帰って行きました。



生き残ったのは、僕と母と、腹を刺され怪我をした御者がひとり。



呆然とした僕を置いて、御者に治癒魔法をかける母を見ていると新しい記憶が蘇りました。



医術士に()が笑って話していました。



「人を殺すのに勇気なんていりませんよ。思い入れのあるものを捨てる時って多少の葛藤はあっても捨てると決めたら捨てますよね。でもそれ、勇気っていわないでしょ」



殺すなら今しかない、そう言われたような気持ちになりました。



治癒魔法を施している母も、治療されている御者も僕を見ていない。



殺された護衛の剣を取りました。



子供の僕では重すぎて簡単には振りかざすことができない。



これでは抵抗されるか、異変を察知した警備隊が現れてもおかしくないと焦ったとき、殺された侍女のスカートが巻かれてその中に輝くものをみつけました。



隠しナイフを持っていたんです。



抵抗する前に殺されてしまったようですが。



僕はそれを拾って、母に近付き後ろから首を狙って刺しました。



初めてだったので、骨が当たって深くさせなかったんです。



血はたくさん出ましたがその時は失血死なんてわからなかったものですから、もう一度ナイフを振り下ろそうとしたんです。



そうしたら御者が僕からナイフを取ろうと飛びかかってきました。



御者は完全ではないとはいえ母に治癒魔法をかけられていたので大変でした。



耳とか噛みちぎったりして抵抗しました。



でもまあ、簡単に押さえつけられて。



そうしたら警備隊が現れたんです。



僕はとっさに叫びました。



「この人が母さんを殺したんだ助けてって」



そうしたら、⋯ふふっ、話を聞く前に御者を殺したんです。



初めてだったので杜撰でしたけど、警備隊も酷かったので助かりました。



そのときは御者のこともあって放心してしまいましたけど。



家に帰って、母を殺せた達成感に高揚しました。



罪悪感よりは、⋯ ()のようになれたという悦がありました。



普通、人を殺せば殺すほど疑われると思うんですけど前の()は決して疑われることがなかったんです。



なんでだろうと思い、殺し以外の少ない記憶を何度も思い返しました。



()は、()()()()()()()でした。



常に笑顔で、相手の警戒心を解くのが上手い。



自分の異常性を理解し、普通の人間を装うのが得意だった。



話を聞いて、共感を示し、相手の欲しい言葉を告げるんです。



前の()が医術士の方と話したことを何度かしたでしょう?



実はね、()が幼少期にの頃にも医術士の方と会ったことがあるようでした。



()はね、動物とかを殺していたのがバレて医術院に入れられていたんです。



あの世界には()のような人を治療する医術院があるんですよ。



そこで()はその医術院から出るために、模範的な人間を装って退院しました。



()は新しく住み始めた土地では瞬く間に人気者でした。



人柄もよく、近所の人とよく交流して女性からよく声をかけられていました。



転々と土地を変えていましたが、どこの土地でも彼は人気者でしたよ。



下賤の血と罵られる僕とは大違いだ。



⋯だからね、僕は()を真似る事にしたんです。



僕は周囲に認められるくらいに勉強しましたよ。



10歳になった頃には商会へ前世の知識をアイディアとして売りました。



12歳には冒険者として登録して魔物を狩って稼ぐようになりました。



肉は、孤児院の子供達にあげました。



貴族や兄さんの一人は貢いだり、煽てることで何とかなりました。



それでも僕にうるさかった兄さんは車輪に細工をして事故を起こしました。



殺すことはできませんでしたけど、事故で足を失ったショックで静かになりました。



僕には今まで、耐えるという選択肢しかなかったんです。



でも、殺すという選択肢を得てからは、僕は息がしやすくなった。



それからはまあ、気持ちのままに人を殺すようになりました。



遺体ですか?



遺体はもうないですけど一部は遺してますよ。



僕の工房はもう調べたんでしょう?



見つからない?



ああ、⋯大丈夫ですよ。きっと、気付いてないだけです。



遺体は解体して魔物の餌にしたり、革製品に加工したり色々使ったんですけどね。



使えなかった人もいるんですけど、必ず全員からは血は取っていたんです。



工房に瓶詰めされたキャンディがあるでしょう、それですよ。



ほら、父の商会に有名なお菓子があるでしょう?



ブラッディ・キャンディって名前の赤い飴玉。



商会の一押しなんですよ。



いやね、前世の()が記念品として飴を作っていたんです。



だから僕も真似たんですよ。



記念品として作ったんです。



あははっ、食べたことあるんですね。



あなたが食べたのは誰のものだったんでしょうかね。



なーんて、そんなに怖い顔しないで下さいよ。



安心してください。



商会には卸したのは()()()()()()()()()()()()()()()()()ですよ。

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