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1 月旅行

 夜空を超える


 プロローグ


 ……なんにもないね。


 本編


 月旅行


 ……なんだか、毎日つまんないね。


 十五歳の少女、野川ララが月に一人で旅行に出かけたのは、ある秋の日のことだった。昔から、ララはずっと夜空に輝いている、とても綺麗な、孤独な白い月に憧れていた。

 いつか、月にいってみたいと思っていた。

 でも、なかなか月にいくことはできなかった。それは、ララが子供だったから、と言うこともあるのかもしれない。

 子供の、一人じゃなんにもできないララは、ただずっと月に憧れることしかできなかった。

 勇気を振り絞って、本当に、今日こそ月に旅行に行こうと、心に決めて、実際にそれを行動に移した今日の日までは……。


「一人旅ですか?」

「え?」

 月行きの電車の窓から、だんだんと離れていく青色のとても綺麗な(まるで神様が流した大きな涙の一粒のようだった)真っ暗な宇宙の中に孤独にぽつんと浮かんでいる地球の姿をじっと見ていたララは、知らない人にそう声をかけられてすごく驚いた。

 声のしたほうを見ると、そこには一人の少年が立っていた。

 ララと同い年くらいの年齢をした、まだ幼さの残った顔立ちをしている、でも随分と背の高い、ひょろりとした痩せ型の体格をした優しい目をした少年だった。


 ララはなぜかその少年を一目見てとても気に入った。


「驚かせてごめんなさい。でも、随分と熱心に窓の外を見ていたから、つい、なにを見ているのか気になってしまって」

 とララを見ながら少年はいった。

「地球を見ていたんです」

 少年を見ながら、ララはいった。


「地球ですか?」とララの背後にある電車の窓ガラスを覗き込むようにして、少年はいった。

「はい。地球です。とても綺麗だなって思って」とにっこりと笑ってララはいった。

「確かに綺麗です。でもきっとこれからいく月はあの地球よりも、ずっと美しい場所なんだと思います」

 とララを見て少年はいった。

「そうですね。そうだったらいいですね」にっこりと笑ってララはいった。


「あの、もう少しだけ、月に電車が着くまでの間だけ、あなたとこうして話をしていても構いませんか?」

 ちょっとだけ照れた顔をしながら少年はいった。

 そんな少年を見てくすっと小さく笑ってから(美人のララは異性の自分に対するそんな態度にとても慣れていた)「ええ。構いませんよ。ずっと一人で暇だったんです。それに私も誰かとお話がしたいなって、少しだけ思っていたところなんですよ」とララはいった。


「ありがとう」と孤独な少年はいった。

「どういたしまして」と、孤独な少年を見てララはいった。(少年の青色の瞳は、なんだかさっきまで見ていた孤独な地球のようだとララは思った) 

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