世界の破滅と一人の少女
それはある日、突然起こった。
建物が突然崩れ、人も動物も消滅していく異様な光景。
一瞬で街は廃墟になり、火の海の地獄と化した。
そんな中で一人の少女がポツンと立っていた。
僕は真っ先に、彼女の元に駆け寄った。
「君、大丈夫?」
そう彼女に問い掛けるが彼女は何も答えない。しかし僕の顔へ視線を向けてくれた。
その見つめてくる表情は、何処か苦しそうだった。
「取り合えず此処は危ないから此処から離れよう」
彼女は小さく頷いた。
僕らはその場所を後にし、何処かビルの建物へと身を隠した。
暫くお互い無言の空気が出来上がってしまった。まぁ初対面の相手にいきなり大丈夫?って聞かれたらなんて反応すればいいか分からないよね……それも相手はまだ見た目が小学生の相手だし。
「ウー……」
そんな事を考えていると、女の子が窓の外を指を指しながら何かを見つめている。
それに釣られて僕も一緒に窓の外を見つめる。其処には、人と同じ形を成した怪物と、複数人の奇妙な格好の人達が戦っていた。
次々怪物薙ぎ倒していく人達を眺めていると
「ウーウーウーウー!!」
突然彼女が叫び出した。
表情で分かる位、彼女は恐怖と絶望している。
彼女を落ち着かせようとするが一向に静かにならない。
そうこうしていると、突然部屋の扉が開き、怪物と戦っていた男女達が五人押し寄せ、僕等の周りを囲んだ。
「その子を渡して貰おうか?」
中で一番強そうな隊長らしき人物が刀を突きつけ、僕に問い掛けた。
「この子を如何するつもりだ?」
「如何するも何も、殺すに決まっている」
「何でだ!?彼女は普通の女の子だろう!?」
「違う。そいつからはジャッカーと同じ反応がする。人間では無い」
ジャッカー?さっきの怪物達の事だろうか?でもそうなるとこの子は、怪物と同じ……。
「ジャッカーってのは殺さないとダメなのか?」
「ああ、殺し尽くさなければ、世界、過去、未来、現在、異次元、全てが壊しつくされ、我等人間の歴史が完全消去されてしまう。だから寄越せ。」
「嫌だ……」
自分は、無意識にその一言を呟いた。
「何?」
「嫌だって言ったんだ!さっきの怪物は醜くて、あんた等と戦って、殺され瞬間までも意思が無かった様に見えた。でもこの子は違う!殺されると思って、今、凄く如何すればいいのか分からず、感情が滅茶苦茶になっている。この子は、僕達と同じ生き物だ!あんな怪物と一緒にするな!」
そんな些細な気持ちが通じたのか、彼女の叫びが収まった。
「なら……この世界は終わったにも等しいし、一人位殺してしまっても構わんだろう。皆、切りかかれ!」
「うわああああ!」
僕は彼女を強く抱きしめ、相手に背中を向けた。
次の瞬間、背筋に鋭い痛み……いや、これは痛いと表現するべき物なのだろうか?とにかく熱い。熱くて、軽く火傷しそうな位に……。
視界も凄くぼやけて見える。そんでもって何かが流れて行く。僕の何かが……それが流れ落ちてくに連れて、意識も薄れていく。
そっか……僕……死ぬのか……。
でも、何でだろう?不思議と悪くない気分だ。
たった一人の少女の味方になっただけなのに……。
彼女の役にも立てなかったのに……。
僕は今、凄く満足している。
「……ウー……ッ!……」
声が上手く聞こえないや……。
微かに聞こえる声に、手を伸ばした。
そして、何かに触れた瞬間、視界が暖かい光に、包まれた。