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パパと娘⁸のらぶらぶライフ ~うまれたときからアイしてるっ!~  作者: カンサー・プロジェクト
第一章 ハッピー・ハッピー・ウィークエンド! ~とある幸せな週末~
4/17

第四話 娘とのキスはパパの大事なお役目です

 デレッデッデーデデッ♪


「やったーっ! ボクらの勝ち~っ♪」


「ぐぬぬ……」


 テレビからファンファーレ音が鳴ると、翔子がバンザイし、巴がくちびるを噛んだ。

 ちょうど、ゲームも一区切りの様子。


「えっ、もう終わったのっ?」


 巴と組んでいた凛は、よく分からないうちに負けたようだ。


「……くいくい」


 再び巴に袖を引っ張られる。


「ほら……残念賞のキス……」


 そう言って、自らの丸いほっぺたを指差す巴。

 指で押さえられたところが、ぷにっとへこむ。

 俺はひざまずき、小さな姫の仰せのまま、たまごプリンのような頬に口づけた。


「ん……♪」


 巴は、くすぐったそうにしながらも、満足げに口元を歪める。

 そして、小さな手を俺の首に回して、頬にキスを返してくれた。

 帰宅後、二度目のキス。

 巴の眼鏡が、顔に少し当たる。

 巴は大人びているようで、まだまだ甘えんぼうだ。


「巴ったらいいな~っ! じゃあ美貴はぁ、がんばって勝ったごほうびに、キスしてもらっちゃお♡」


 ソファから飛び降りた美貴が、俺にまとわりつく。

 どうやら、ゲームに勝っても負けても、キスはするようだ。


「さっきしたじゃないか」


 相変わらずハイテンションな美貴に、思わず突っ込んでしまうが、即座に反論される。


「あれは、美貴がしただけじゃないっ! ダーリンからのキスは、まだもらってないと思うんだケドなぁ~?」


「そういうこと……。それに……一度したから……二度目はいらない……というのは……意識が低すぎる……。隙あらば……何度だってすべき……♪」


 巴も美貴に賛成した。


「ああ、そうだな。ごめんよ」


 娘たちのこだわりは尊重すべきなので、おとなしく従おう。

 はやくはやくっ、と背伸びをしながら突き出される美貴の頬に、そっと口づける。

 こんなことで喜んでもらえるなら、いくらだってしてあげたい。

 しかし――。


「きゃっ♡ ダーリンのクチビルったら、ちょっとカサカサしちゃって、カワイイ~♪ うふっ、ダーリン、ダーリン、ダ~リ~ンっ♡」


 ダーリンと連呼されるのは、なかなかに恥ずかしい。

 この間、美貴は、両手で俺の片手を握り、ぶんぶん振っている。

 昔は美貴もパパと呼んでくれていたのだが、最近になって、こんな呼び方をされるようになってしまった。

 実の父親をダーリンと呼ぶ娘なんて、俺は聞いたことがない。


「それ、外では言わないでくれよ?」


「わかってま~すっ! だから今、たくさん言ってるの♪ ダ~リンっ♡」


「うそ。今日もたくさんの友だちの前で、言っていたじゃない。それ、私もやめてほしいんだけれど。私まで、“お家では、あんな風によんでるの?”って、クラスで聞かれたりするのよ?」


 ここで凛から衝撃的な真実が告げられた。

 美貴、やっぱり学校でも言っているのか……。


「じゃあ、凛姉さんも、よべばいいじゃない」


「ぜったいやだ」


「パパのことを、“あんた”とか“この人”ってよぶほうがメンドーじゃない? そんなだから、凛姉さんはヨッキューフマンになるんだわ」


「なってない」


「でも、“あんた”って、“あなた”みたいなカンジだし――ダーリンってよぶより、およめさんっぽい? そう思うと、ダーリンと凛姉さんって、あんがいジュクネンフーフらしいカモ♪」


「なんでそうなるのよ!」


 凛と美貴は、もはや俺を置き去りにして、楽しげな(?)言い合いを始めている。


「――――んっ」


 ふと、背中にぬくもりと吐息を感じた。

 ゲームを一旦片付けた翔子が、俺にしがみついてきたのだ。


「今のうちに、とーちゃんゲット♪ ……じゃあ、とーちゃん。ボクにもしてよ」


 そして、少し背伸びをし、耳元でささやく。


「いいよ」


 俺は、翔子の形のいい鼻の頭へ、軽くキスをする。


「へへっ、とーちゃんに、ちゅーされちゃった……♡」


 翔子は、くちびるの触れた箇所をこすり、頬を染めながら笑った。

 さっぱりした性格なのだが、時折こうした照れを見せる。


「よしっ! 次は凛の番だねっ!」


「そもそも美貴は――って、何?」


 はにかむのも束の間、翔子は元気よく凛の肩を叩く。

 すっかり美貴との言い合いに熱中していた凛は、急に話を振られ驚いた。


「何って、とーちゃんと、ちゅーするんだよ」


「そそそそそそんなこと、私がするわけないでしょっ!?」


 あっけらかんと言う翔子と、盛大に取り乱す凛。


「そんなコト言って、けっきょく毎日してるくせに」


 そこへ追い打ちをかける美貴。


「ん……すぅ……」


 いつの間にか俺の手を握り、うとうとし始めている巴。

 やや混沌としつつも、我が家ではありがちな平和な光景。


 しかし、凛にとっては悩ましい状況なのだろう。


「それは……みんなが無理やり……させるから……」


 凛は、俺の方をちらちら見つつ、小声で言う。


「ほら、ダーリンも待ってるよ? 凛姉さんと、キスしたいって」


「……そうなの……?」


 ――こんなとき、どう言えばいいのだろう。


 凛とキスすることが嬉しいか否かと問われれば、それは間違いなく嬉しい。

 しかし、凛が嫌ならば、無理にそんなことはしなくていい。


 我が家の娘たちはみんな、俺と触れ合うことを好んでくれていて、それはありがたいことだ。

 子を愛する親として、冥利に尽きる。


 でも、みんながそうだからといって、凛も合わせる必要はないのだ。

 俺が娘たちから懐かれることよりも、娘たちがそれぞれに楽しくのびのび過ごすことのほうが、遥かに大事なのだから。


「いいや、凛が嫌なら、無理することはないよ」


 考えた末、俺はそう言った。


「ほら、あんなこと言う……」


 すると凛は、なぜだかいじけた様子で、俺を指差しながら美貴に言った。


「も~う、ダーリンったら……」


 美貴もあきれた様子。


 今の発言は失敗だったか?

 確かにあれでは、凛に興味がないように聞こえてしまったかもしれない。


 例え鬱陶しがられても、凛への愛情を強く表しておくべきだったか?

 できるかぎり触れ合いたいと、素直に伝えるべきだったか?

 いや、それでは、こちらの気持ちが凛へのプレッシャーになり、逆に苦しめてしまうかも……。

 難しい、実に難しい!


「いいから早く……凛姉さんを……つかまえなさい……。全ての責任は……私が取る……」


 人知れず悩む俺の耳に、巴のか細くもはっきりとした声が届く。

 驚いて巴を見ると――。


「んにゃ……」


 よだれを垂らしていた。

 寝言なのかもしれない。


 だが、巴の言う通りだ。

 迷うことなんてない。

 今までも、娘たちへの接し方に悩むことは何度もあった。

 けれど、そんなときはいつだって、愛情に素直になることで解決できた。


 巴の手も、いつしか俺を解放している。


「うーん、やっぱりパパは、凛にただいまのキス、したいかな」


 言いながら、俺は凛に近付いていく。

 凛が本当に嫌なら、いつでも逃げられるくらいに、ゆっくりと。

 凛は固い表情で、身動きひとつしない――。

 とうとう俺は、華奢な体を抱きしめる――。


「凛、いいか」


 耳元で問いかける。


「あんたが、いいなら……勝手にしてよ……」


 応じる凛は、耳まで真っ赤だ。

 凛の悩みを長引かせないように、俺は素早く、その白い頬にキスをした。

 恥ずかしさを(こら)え、受け入れてくれた凛が愛おしい……!


 目を伏せ、何かを噛みしめるような顔をしていた凛が、複雑な感情を乗せた目で、俺を見つめ返す。

 そして――。


「凛ねえさま、いいなぁ! 華弥もお父さまとキスする……♡」


「愛もよ!」


「ゆいも!」


 一旦、自分たちの部屋へ引っ込んでいたらしい三人が、ドヤドヤと再登場してきた。


「りんちゃん、よかったねぇ! ちゅー、うれしいねぇ♡」


 優結が本当に嬉しそうに、ぱちぱち手を叩きながら凛へまとわりつく。


「べ、別に……そんなことないわ――っ!」


 恥ずかしさが限界を超えたらしい凛は、やたらと距離近く密着してくる優結を柔らかく避け、逃げていった。

 ……いや、単に逃げたのではなく、食器の用意をしている理沙の手伝いへ向かったようだ。

 俺も手伝いにいこうとすると――。


「お父さま……華弥たち、わすれないで……。おかえりになってから、まだキスしてないよ……?」


 華弥にズボンを引っ張られた。

 少し泣きそうな顔をしている。


「んっ、んっ」


 さらに華弥は、背伸びをして、何とか俺の顔に近付こうとしている。


「ああ、ごめんね。お父さんも、華弥たちとちゅーしたかったよ」


 姉たちばかりとキスしているのはフェアじゃない。

 華弥の健気な姿を見ていると、一刻も早くちゅーしてあげないといけない気になってくる。


 俺がしゃがむと、華弥は途端に顔を輝かせた。

 その笑顔のほっぺたに口づけ、華弥からもお返しをもらう。


「つぎ、ゆい!」


 しゅばっと両手を挙げてアピールする優結とも、ちゅーの交換をした。

 ……いや、優結からは、ちゅーされたというより、鼻や頬を舐め回された。


 そんなやり取りの中、愛は妙におとなしい。

 どうしたのかなと思って、愛を見ると――。


「ふっふっふっふ……!」


 腕を組んで、不敵に笑っていた。


「愛、どうしたの?」


 俺も笑って尋ねる。


「パパ、愛のおなかに、キスしなさーいっ!」


 愛はそう言って、服をぺろんとめくり、まあるいおなかをさらした。

 可愛いおへその辺りを親指で示し、“ふふんっ♪”と何やら勝ち誇っている。

 みんなとは、少し違うことをしたいのかもしれない。


「は~い!」


 俺は素直にご主人さまのご命令を聞き、甘いにおいのするおなかにキスをした。


「きゃぅっ♪」


 くすぐったそうに喜ぶ愛は、今度は俺の顔を両手で挟んで、物色し始める。

 耳やうなじを興味深そうに眺めた後、あごの下にキスしてくれた。

 結局、あまりおもしろそうなところが見つからなかったようだ。


 そうこうしていると――。


「ご飯ですよ~」


 理沙の澄んだ声が、夕餉の合図を告げた。


「「「「はーい!」」」」


 俺は優結たちといっしょに手を挙げ、元気に返事をした。

 キスの様子を眺めていた翔子、スプーンを並べる凛、凛についていっていた美貴、ソファでむにゃむにゃ言っている巴も、同じく返事をする。


 ――そして、家族十人そろっての夕食が始まった。

【三女・凛のウワサ 1】

ヒミツにしているつもりのことは大体、パパ以外のみんなにバレているらしい。

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