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パパと娘⁸のらぶらぶライフ ~うまれたときからアイしてるっ!~  作者: カンサー・プロジェクト
第一章 ハッピー・ハッピー・ウィークエンド! ~とある幸せな週末~
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第三話 天使たちの遊戯

 優結が、俺の左手の小指と薬指をしゃぶり尽くし、続いて中指を口へ運ぼうとする頃――。

 ちょうど、我が家に着いた。


「「「「「ただいま~!」」」」」


 五人で言いながら扉を開けると、中から、にぎやかに遊ぶ音と、食欲をそそるにおいが流れてきた。


「おかえりなさい♪」


 同時に、奥のリビングへ通じる扉から絶世の美女が現れ、ヒーリングミュージックのような心地よい声で迎えてくれる。


 髪を伸ばし、眼鏡をかけた、この女性は、大人になった理沙――ではなく、俺の妻にして八児の母、沙織(さおり)だ。

 現在は、主婦をしてくれている。


 娘たちは個性派ぞろいなので、一見しただけでは、全員が血縁者だと分からない人もいるかもしれない。

 しかし、沙織と、長女の理沙だけは、誰からも家族に見えるだろう。

 もっとも、初対面の人からは、母娘ではなく、姉妹と見られることが多いけれど。


「晩ご飯はオムライスよ♪ もうすぐ出来ますからね」


「うん、ありがとう。いいにおいがしてるよ」


 微笑みを返してキッチンへ戻った沙織は、かつて娘たちからプレゼントしてもらった、ウサギ柄のエプロンをかけている。

 初めて見たときは、大人が身に付けるには少々可愛らしすぎるデザインかと思ったが、沙織にはよく似合っていた。


 もっとも、沙織に似合わないファッションは、おそらく世界に存在しない。

 どんな服装をしていても、とても魅力的になるだろう。

 特にエプロンの似合いようときたら凄まじく、俺はいつも、つい見つめてしまう。

 料理の邪魔になることも忘れて、エプロン姿の沙織を至近距離で凝視し続けてしまい、やんわりとキッチンから追い出されてしまったことは数知れない。


「お父さん……? スーツを着がえましょう……?」


 理沙に袖を引っ張られ、気が付く。


「ああ、そうだね」


 また、沙織のエプロン姿に見とれてしまっていた。




---




 理沙とともに部屋へ行く。

 ここは俺の個室ではなく、沙織と共用だ。

 さらに、寝るときは、華弥(かや)、愛、優結もいっしょになる。


 理沙はいつも通り丁寧に、スーツの上着をハンガーに掛け、部屋着の用意までしてくれてから、部屋を出て行った。

 しかし、なぜかいっしょに部屋までついてきてしまった華弥、愛、優結は、立ち去る気配がない。


「パパ、着替えるよ~」


「「どーぞ、どーぞ!」」


 一応、着替える前に断りを入れてみると、愛と優結から許可をいただけた。

 仕方なく、三人の娘に見守られる中、シャツを脱ぎ始めると――。


「お父さま、こんなとこで……! だめぇ~っ! わぁーっ!」


 華弥が顔を押さえ、叫びながら出て行った。

 華弥は、大体いつもこんな感じだ。

 よくくっついてくるのに、謎のタイミングで急に恥ずかしがったりする。

 それなら、俺が着替え始める前に、部屋を出ていればいいのにと思うが、ギリギリまで離れない華弥の不思議な癖も、親バカ目線では可愛らしく思える。


 一方、愛と優結は――。


「パパ、シャツなくなったね~!」


「でも、もうあたらしいふく、きたね~!」


 二人して俺の周りをぐるぐる回りながら、着替える様子を最後まで実況してくれた。


 その後、俺は、愛と優結を引き連れながら、手洗いとうがいを済ませ――ようやくリビングへ辿り着いた。




---




 そこには楽園が広がっていた。

 四人の美少女が、ソファに座ってテレビゲームをしていたのだ……!


 一般家庭のリビングであることを忘れるほどの眩しさだが、こんなことで動揺はしない。

 それがどれほど眩しくとも、我が家の日常の風景に違いないのだから。


「とーちゃん、おっかえり~! 今、二チームで対戦してるんだっ! 後でとーちゃんも参加してよねっ♪」


 そう言って、太陽のような笑顔を向ける少女は、我が家の次女、翔子(しょうこ)

 小学五年生で、姉妹随一のおてんばだ。

 短めに揃えられた髪が、よく似合っている。


 ホットパンツからすらりと伸びた脚や、少し焼けた健康的な肌から連想される通り、外で遊ぶのが大好きだ。

 よく公園や小学校の運動場で、サッカー等のスポーツをしたり、何やら走り回ったりしている。

 一方、テレビゲーム等のインドアの遊びも好んでいて、俺のゲーム仲間でもある。


「おう、いっしょにやろうな!」


 俺が応えると、翔子はサムズアップを返し、ソファの端から少し身を乗り出した。

 察した俺が、近付いて身を屈めると――。


「――ちゅ!」


 頬に口づけをされた。

 翔子のくちびるが触れた箇所から、熱や活力が流れ込み、全身を駆け巡るようだ。

 蓄積された疲労が、幸福感に上書きされていく。

 こんなやり取りも我が家の日常。


「へへっ♪」


 翔子は満足げに笑いながら、ゲームに戻っていった。


「ダーリンっ、おかえりなさ~い♪ 美貴も、おかえりのキスするぅ~っ♡」


 今度は翔子の隣から、甘えた声が上がる。

 そのスウィートボイスの主は、キラキラしたオーラを振りまく四女、美貴(みき)


 小学三年生の彼女は、オシャレに夢中。

 今日も、翔子の簡素かつ動きやすそうな服装とは対照的な、ピンクの目立つ、カラフルで華やかな格好をしている。

 リボンなどのアクセサリも色々と身に付けており、フリル付きのチェックのミニスカートから伸びる細い脚は、縞ニーソに包まれている。


 髪は、今のようにツインテールにしていることが多いが、一口にツインテールと言っても、様々なアレンジがあるらしい。

 俺が気付いていないだけで、厳密にはツインテールとは呼ばない髪型の日も結構あるのかもしれない。

 しかし、細かなアレンジの違いをよく分かっていないことがバレると、美貴から可愛らしいお説教を受けることになるので、注意が必要だ。


 そんな美貴からのリクエストに応え、頬を差し出すと――。


「――ふっ」


「ひょぉっ!?」


 耳に息を吹きかけられた!

 思わず変な声を出してしまった俺を見て、美貴は嬉しそうに笑っている。


「う~っふふふっ♡ ダーリン、にげないで♪ 美貴のキッス、ちゃんと受け止めて――♡」


「まったく、美貴は!」


 いつもように、からかわれてしまったようだ。


 気を取り直して、あらためて顔を近付ける。


「いっつも美貴を待たせてるんだから、おしおきだよ?」


「!」


 美貴は、俺にだけ聞こえる大きさで、脳がとろけそうな声を耳元から吹き込んだ。

 俺が固まった一瞬に、頬へキスをすると、何事もなかったようにゲームに戻る。


 美貴はこうした不意打ちを多用してくる、なかなか油断できない子だ。


「……おかりなさい」


 そんなやり取りをさえぎるように、美貴の隣から素っ気ない声が上がる。

 少しばかりひんやりしたあいさつで俺を迎えてくれたのは、クールな印象の少女。

 小学四年生の三女、(りん)だ。


 シンプルで落ち着いた服装を好み、今も上下共に、黒と白をメインにしてそろえている。

 また、きれいに伸ばされた黒髪は、美貴のやや明るめの髪色とは好対照で、異なる美しさがある。

 柔らかな光をたゆたわせる、穏やかな夜の水面(みなも)のよう。


「お仕事でおつかれだと思っていたけれど、ずいぶん元気そうね?」


 ゲーム画面から目を離さず、こちらも見ずに言う。

 その声音には、どこか険があった。

 凛は、ちょっぴり反抗期気味なのか、俺に対してきつめの態度を取りがちだ。


 しかし、それはあくまで、他の娘たちと比べればの話。

 凛以外の娘たちは、父親との距離がかなり近い。

 世間では、凛くらいの態度が一般的なのかもしれない。


 それに凛は、実際に話してみれば、驚くほどに素直で優しい。

 そんなギャップがまた可愛く、俺は話しているとついつい笑顔になってしまうのだが、そんな接し方が凛の反発心をさらに刺激してしまうことも多々ある。


「うん。疲れてたけど、凛たちの顔を見ると、すぐに元気になったよ!」


「~~~~~!」


 ……こんな風に。


 しかし凛は、ようやく俺のほうを振り向いてくれた。

 利発で意志の強そうな顔を赤らめ、引き結んだ口を少し震わせている。


「なら、よかったっ!」


 投げやり気味に言い放ち、ふんっ! と、再び顔を背ける。

 何を言っても、俺を喜ばせてしまうと悟ったらしい。

 余計なことは言わずに、この場をやり過ごすつもりのようだ。


「……くいくい」


 擬音を口にしながら、袖を引っ張る者あり。

 凛を見て頬を緩めていた俺の意識も、一緒に引っ張られる。


「ん……。やっと、こっち見た……。パパとの……ファーストコンタクト……♪」


 舌足らずな声で、ささやくようにそう言って微笑むのは、どこか眠そうな目をした眼鏡の少女。

 我が家の五女にして荒ぶる頭脳の持ち主、(ともえ)だ。

 現在、小学一年生であり、その身体は同級生の中でも一番小さいらしい。

 そんな彼女は、姉妹でも随一の早熟な知性を持っている。


「ふむ……。今夜も……いい感じね……。シャツの……くたびれ具合といい……ネクタイの……歪み具合といい……絶妙……♪ そこはかとない……へっぽこ感が……実にそそる……。アーティスティックよ……パパ……♡」


 そして、独特な感性も持っている。


「はは、ありがとうな、巴」


 何だか分かりにくいが、巴なりに褒めてくれているらしい。

 こちらも感謝を伝えるために、寝ぐせの目立つ巴の頭をもしゃもしゃと撫で、さりげなく整えてみた。


「ん……♪」


 俺のほうを見ながらも、休むことなく高速でコントローラーを操作している巴は、半分眠っているような目を、さらにとろんとさせる。

 どうやら気持ちいいようだ。


 とはいえ、巴の表情は、一見、変化が非常に少ない。

 家族だからこそ、その愛嬌溢れる微笑みなどにも気付けるが、初対面の人からは、無表情で淡々と話しているように見られることが多い。


「それじゃあ……出すもの出して……」


 巴に、俺を見上げながら言われたので、おとなしく頬を差し出す。


「んん……っんちゅっ……」


 手では、だだだだだっ、とボタンを叩きつつ、小さなくちびるで、ついばむようなキスをくれた。


 ――これでようやく俺は、帰宅してから、家族全員と顔を合わせることができた。

【次女・翔子のウワサ 1】

サッカーや鬼ごっこ等をするときは大体、たまたま近くにいただけの、知らない子どもたちも巻き込んでいるらしい。


---


【娘たちの学年】

長女・理沙:小学六年生

次女・翔子:小学五年生

三女・凛:小学四年生

四女・美貴:小学三年生

五女・巴:小学一年生

六女・華弥:幼稚園 年長組

七女・愛:幼稚園 年中組

八女・優結:幼稚園 年少組

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