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パパと娘⁸のらぶらぶライフ ~うまれたときからアイしてるっ!~  作者: カンサー・プロジェクト
第一章 ハッピー・ハッピー・ウィークエンド! ~とある幸せな週末~
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第二話 フライデー・ナイト・フィーバー

華弥(かや)ちゃん! 愛がいちばんに、パパにおかえりなさいしたよ♡ パパ~ってよんで、とっしん! マジカル愛あたーっく☆」


「愛ったら、いっつも、ひとりで、はしっちゃうもの。いっしょにいこって、いったのに……」


「ごめんね! つぎは華弥ちゃんが、パパにとっしん! していいよ」


「華弥は、そんなことしないもん……。お父さまは、おつかれだし、もっとやさしくするの……♡」


 愛と話しながら、俺へくっついてくるのは、幼くも麗しき少女。

 この子は、我が家の六女、華弥だ。


 愛や優結(ゆい)に比べると長く伸びた黒髪、少し困っているようにも見える下がり気味の眉。

 今は幼稚園の年長組だが、すでに大和撫子的な美しさと気品を纏っている。

 今日は、清楚なワンピース姿だ。


「みんな、お父さんにまっしぐらですね♡ でも、そんなにくっついたら、お父さんが動けないよ」


 先ほどまで華弥と手をつないでいた、落ち着いた印象の少女が、優しく声をかけつつ、俺にまとわりついていた三人を少し離れさせる。


 華弥たちよりずっとお姉さんのこの少女は、我が家の長女、理沙(りさ)

 現在、小学六年生だ。


 眼鏡をかけており、髪は、うっとりするほど、きれいに伸ばされている。

 その奥ゆかしくも暖かな笑顔と声は、いつも俺の心に安らぎを満ち溢れさせる。


 理沙は三人の小さな妹を連れて、この最寄駅まで俺を迎えに来てくれたのだ。

 電車の中で、俺が妻から受け取ったメッセージは、この最高のお出迎えの連絡だった。


 しかし、あの元気な愛と優結が、おとなしく理沙についてくるとは思えない。

 きっと駅に着く頃には、二人とも理沙の手をすり抜け、駆け出してしまったのだろう。

 そのときの様子が目に浮かぶようだ。


「優結、愛、華弥、理沙。迎えに来てくれてありがとう。パパはとっても嬉しいよ!」


 四人それぞれと目を合わせながら、喜びを伝える。


「理沙、大変だったろう」


 少し小声になって、理沙を労う。


「いいえ。みんないい子だし、大じょうぶですよ。お父さんに近付いたら、ちょっと元気になりすぎたみたいだけれど♪ それも仕方がないですよね。私だって、お父さんに、少しでも早く会いたかったですから……♡」


 理沙は、はにかむような笑顔を浮かべ、眼鏡の下の頬を赤らめつつ、涙が出るような言葉をかけてくれる。

 しかし、ここで泣いていては、ウチの娘たちの父親は務まらない。

 なぜなら娘たちはみんな、このような嬉しい言葉を、息をするように、かけてくれるのだから。


「そうだ、お父さん。今日の晩ご飯は、オムライスですよ♪」


 理沙が人差し指を立てながら、今晩のメニューを教えてくれる。


「そうだよ!」


「おむらー!」


「お母さまの、あったかごはんです♪」


 愛、優結、華弥も嬉しそうな声で付け足してくれた。


「それはおいしそうだな!」


 妻の手料理は、長年連れ添った今でも、食べるたびに感極まってくるほど美味だ。

 温かい、ふわとろなオムライスを想像しただけで、腹の虫が鳴りそうなる。


「それではお父さん、かばんをお持ちしますね」


 想像の中のオムライスによだれをこらえていると、通勤かばんを持っている俺の右手に、理沙が自分の手を重ねてきた。


「これくらい自分で持てるから、大丈夫だよ」


 今日のかばんは軽く、理沙が持っても負担にはならないだろうが、こんなところまで甘えるわけにはいかない。


「私に持たせてください♡ 代わりに、お父さんは――こちらをお願いします♪」


 理沙はそう言って、優結たちを示す。


「なるほど、そうだな。じゃあ、かばんはお願いするよ。ありがとう」


 一瞬で説得された俺は、おとなしく理沙にかばんを差し出した。


 ――ぎゅ。

 理沙がかばんを受け取る間に、すでに優結は、俺の左手にしがみついていた。

 家に着くまでに、指を何本舐められるかな……と思ううち、愛に右手をつかまれ――。

 華弥が、それを見ていた。


「あっ」


 華弥が小さく声を上げる。

 思わず声を漏らしてしまったという様子だ。

 そして、とぼとぼと理沙のほうへ寄っていく。


 すると愛が、何かに気付いたように、ぱっと俺の手を放し――。


「いいよ、華弥ちゃん。パパと、おててつないで! 愛はもう、パパにとっしん! したもん。つぎは、華弥ちゃんのばん!」


「いいの……?」


「いいよ!」


 華弥に譲った。


 そんなわけで、俺の右手は、華弥の左手とつながれることになった。

 冴え渡る愛の気遣いに、俺は感心する。

 いつもは、わがままを言って大騒ぎをすることも多いのに、不思議なものだ……。


「ええへ――♡ お父さまのおてて、おっきくて、きもちいい……♡ 愛、ありがと……!」


 小さな指を絡め、俺の手の甲に頬ずりする華弥は、とても嬉しそうだ。

 花がほころぶような笑顔を見ていると、こちらもつられて、頬が緩んでしまう。


 一方、愛は――。


「理沙おねーちゃーんっ!」


 理沙に駆け寄り、軽くジャンプし――。


「わふっ♪」


「あんっ」


 胸に顔を埋めていた。


「う~ん、ふかふか~♡ 理沙おねえちゃん、ママみたいにふかふかよ。いーきもち♪ こんなにやらかいの、ママと理沙おねえちゃんだけよ♡」


「ち、ちょっと、愛ちゃん……。お父さんが見てるよ……」


「愛、甘えるのは、お家に帰ってから、いっぱいしような」


 両手にとびきりの花状態の俺が言葉で促すと、愛はふかふかから顔を放し、理沙の手を取った。


 このまま五人で、際限なくイチャつき続けてしまいそうな空気を一旦落ち着け、家へ向かって歩き出す。


「みんなで~かえるよ~っ♪」


「パパも!」


「おうちに~かえるよ~っ♪」


「ゆいもっ!」


 スキップしながら歌う愛に、優結が合いの手を入れる。 


「ふ~ん、ふふんふふ~ん♪」


 賑やかなセッションに、華弥も控えめなハミングを添えた。


 娘たちが集まれば、人気(ひとけ)の少ない夜の駅ですら、にぎやかなダンスホールと化す。

 

「お母さまは、ばんごはんをつくっていますよ」


「お家に着くころには、ちょうど出来ると思います。私も、下準備をお手伝いしました♪」


「そうか、ますます楽しみだな!」


「おむら~、むらら~♪ ららむら、おむら~♪ けちょっぷ、たまごん! おむごはん~♪」


「優結ちゃんのお歌も上手だね♪」


「愛も、かばんもつわ!」


「愛ちゃんが持ったら、地面にすれちゃうよ」


「他のみんなは何しているの?」


翔子(しょうこ)ねえさまたちは、ゲームをしていました」


「愛もやったよ!」


「ゆいも!」


「本当はみんなでおむかえに来たかったのですが、手がはなせないところみたいで」


「最初に連絡した時間より、早く着いちゃったからな。タイミングが合わなくても仕方ないよ」


「華弥、もっとまたなきゃっておもってたから、うれしかった……♡」


「そうだね♪ ……“行きたいケド、今のイイ流れも止めたくないし、どうしよ!”って、翔子ちゃんたちは、なやんでいましたよ。でも、すぐ近くだし、四人だけで来ちゃいました」


「ふふっ、そんなに気にしなくていいのに。みんなで来ると、大騒ぎになっちゃうしな」


「それでも、やっぱり残念だったと思いますよ。みんな、お父さんのお帰りを、いつも待っているんですから……♡」


「かえったら、パパもゲームしよ! 愛、おうえんするよ!」


「ゆいもー!」


 そんなことを話しながら、家までのわずかな距離を五人で歩く。


 ――こんな一瞬にも、幸せが満ちている。

 その実感と、両の手のひらから伝わる、柔らかくも確かな熱を噛みしめていると、すぐに、愛しい我が家が見えてきた。


 短い道中を照らす街灯の光が暖かかった。

【長女・理沙のウワサ 1】

目標は、“お母さん”らしい。

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