8、等身大
「よし、じゃあなにから始めようか。」
「うーんそうだな、レクターどうしよう?」
現在3人がいるのは、大学内に数カ所ある実習室のうちの1つで、約15メートル四方の広さがある。
なにが起こってもいいように、とはフレインの言葉であり、大学内でも広い方の実習室を用意してくれていた。
「とりあえず、リズの使い魔と話すか。」
「あの、アニンを呼んでくれるかな?」
レクターの言葉をライラックが伝える。彼はまだリズ、とは気安く呼べないようだ。
「分かりましたわ。おいで、アニン。」
その声に反応して、ほわっと姿を現したのは昨日も見た雪兎だ。
レクターは昨日も会っているが、ザックは初対面だった。
「昨日も思ったけど、まだガキだよな?それとも俺らみたいに変化させてるか?」
「え、アニンって子供なの?」
「そうなのですか?ではザックも?」
「いや、こいつは小さくしてるだけ。」
するとアニンはレクターの方を向いてなにやら話をしているようだった。
「アニンは、私の魔力量を心配して小さくなっているそうですわ。それにしても使い魔同士は会話できるのですね。」
リザリスの言葉に2人もそれぞれの相棒を見る。2匹とも頷いているところを見る限りそのようだ。
「じゃあほんとのアニンはもっと大きいんだね。」
「その姿にはなれるのか?」
ロダンダスの問いに対して、アニンは少し顔を向けるとリザリスの手の上から飛び降り少し離れた。
そしてアニンの体が光に包まれたかと思うと、体長約70センチほどになり満足気な顔をしていた。
「まぁ、ずいぶん大きくなるんですわね。」
「だなー。リズ、魔力は平気か?」
「少ししんどいですわ。」
アニンはそれを悟っており、すぐさま元の手のひらサイズに戻った。契約者の魔力を気遣えるあたりも、魔獣の中でも上位である所以だ。
「なぁライ、俺も大きくなっていいか?」
「え?別にいいけど。」
「でかくなんの?いんじゃね?」
「え?」
ライラックはレクターの問いに答えたのだが、同じタイミングでロダンダスが答えたことに疑問を感じた。聞こえないはずなのに、と言った顔を向けるとロダンダスが向いていたのはザックだった。
「ザックも大きくなるって?」
「おお、レクターも?」
契約者が2人して疑問を感じている一方、そんなことは御構い無しの2匹はそれぞれ離れた場所に移動していた。
そしてほぼ同士に光に包まれると、それがあける時には広いはずの実習室が随分狭く感じるようになっていた。
グリフォンであるレクターは、体長約2メートル、目線はライラックと同じになり翼を広げれば両翼で3メートルほどになる。それに加え、S級聖獣たる威圧感が部屋中に広がっていた。
対して黄豹であるザックも体長と目線の高さはレクターとほぼ同じで、しなやかな筋肉と普段見えない鋭い犬歯は森の支配者の証であった。