7、和やかなスタート
翌日からリザリスへの授業は始まった。
「まずは改めて自己紹介からしようと思うんだけど。」
「そーだな、昨日は緊張したし固かったもんな。」
まだ緊張が残るライラックに対して、ロダンダスはすでに通常に戻っていた。昔から楽観的なところのある友人に、やはり苦笑いを浮かべるのはライラックだ。
「1番下ですもの、私からしますわ。リザリス・ファリル、13歳ですわ。リズって呼んでくださると嬉しいですし、王女扱いも嫌ですわ。」
「よし、分かった!リズだな!」
「ロ、ロダン!?」
「ライも慣れろって。本人が嫌だって言ってんのに王女扱いはそれこそ失礼だろ?」
「え、そうなのかな、、、」
「そうですわ!」
そんなこともないと思うが、2人に押し切られライラックは渋々頷いた。
「じゃあ次俺な。ロダンダス・アイーク。ロダンって呼んでくれ。歳は15で、一応騎士志望だけど、魔術も人並みにできる。こいつは相棒のザックな。」
爽やかな笑みでリザリスに向かい、隣で丸くなって寝ようとしていたザックの頭を撫でる。
ロダンダスは騎士志望なだけあり、背丈はライラックと変わらないが体つきは一回り大きい。さらにキリッとした精悍な顔つきで近づき難い印象を受けやすいが、商人家の出なのもあり口数は多い方なのだ。
それと、大人しくあまり社交的ではないライラックと常に一緒にいるため、世話焼きになっていたりもする。
「えっと、僕はライラック・カルバン。ロダンとは同い年で昔からの腐れ縁、かな。魔術師志望で、相棒はレクターだよ。」
「こいつはライって呼べばいい。」
饒舌なロダンダスに対し、少しぎこちない自己紹介をするライラック。
くせ毛とタレ目で幼く大人しい印象が強い彼と、短髪と精悍な顔で少し怖い印象になりがちなロダンダスは側から見ても正反対である。
そんな2人が昔からの仲というのは、ほぼ初対面であるリザリスにとっても不思議なことであった。
「ロダンさん、ライさん、よろしくお願いしますわ。」
「むず痒くなるから呼び捨てでいーぜ。」
「ふふ、ありがとうございます。」
リザリスはそんな不思議をいつか聞こうと思いながら、その愛らしい顔の威力をさらに高める笑顔を浮かべた。