閑話 ある晴れた日
俺の1日はライの声から始まる。
「ほら、レクター起きて!朝ご飯食べる時間無くなるよ!」
「んー、もうちょい。」
「先行くからね!遅かったらデザートは無し。」
まだ夢の中にいたい気分は、ライの一言で覚醒する。この大学の寮で共に生活するようになって約4年、あいつはすっかり俺の扱いが上手くなったと思う。
「あー、ねみぃ。人間は朝早すぎんだよ。」
グリフォンは元々夜行性だってのに。まぁでもライに拾われたあの日から、俺の生活はすっかり人間仕様だ。
ライは俺を拾った頃は子犬だと思っていたらしいし、グリフォンとして再会した後も扱いはあの頃と変わらない。あいつきっとグリフォンが夜行性だって知らないんだろうな。
「あ、レクターやっときた!ほら、朝ご飯。」
「おう。」
食堂に着くと、いつもの席にはいつもの奴ら。それと最近王都からやってきたシーリスが、相変わらず騒がしく笑っていた。朝から元気だな。
俺と同じぐらいに食堂にきたザックと一緒に朝飯を食べていると、ふと思い出したようにリズが口を開いた。
「そうだ、今日天気いいからアニンが日向ぼっこしたいって言ってたの。レクターとザックは用事とかある?」
「そーなの。アニン日向ぼっこしたいの。」
膝の上に座るアニンを撫でながら、俺らの方を向いて聞くリズに、すかさずシーリスが反応する。
「それなら私が一緒に日向ぼっこしますよ!」
「シーリスはフレイン先生の手伝いあるでしょ。」
「いや、しかし…。」
「お世話になってる先生のお願いを断るの?シーリスはそういうことするの?」
「そ、そんなことはしません!」
「だよね、よかった。」
あぁ、今日も哀れなシーリス。こいつは一生リズには勝てないんじゃないかと思うと、少し可哀想な気もするけど、本人は別に嫌そうじゃないしいいか。見てる分には面白いしな。
「俺も日向ぼっこ賛成。」
リズとシーリスのやり取りを楽しんでいる俺と違ってザックはリズの質問に答える。こいつも日向ぼっこ好きだからな。まぁ俺も嫌いじゃないけど。
「ありがとうザック。レクターは?」
「俺も暇だしいいよ。」
「だって、よかったねアニン!」
「うん!レクターもザックもだいすきー!」
「うぅ、私もアニン様に大好きって言われたい…。」
「えー?どうしよっかなー?」
アニンにまで遊ばれてるシーリスを見てるのは飽きなくていいけど、そろそろ移動する時間だし行くか。
「アニン、そろそろ行くぞ。ほらお前らも時間だろ。」
「そーだね、じゃあ僕とロダンは騎士科だから行くね。」
「うん!私は授業いってくる!」
「では私もフレイン先生の元に。レクター様、くれぐれもアニン様をよろしくお願いします。」
「分かったから早く行け。」
シーリスもこれから一緒に闘うようになるからということで俺らの声が聞こえるようにした。その時の反応も中々の傑作だったが、それから俺らのことを様付けで呼ぶようになったのは少し鬱陶しいんだよなぁ。まぁいいけど。
そんなこんなで俺らはそれぞれの予定へと向かった。
日向ぼっこの場所はいろいろだけど、今日は中庭の一角にした。ここは広いから俺とザックがでかくなっても問題ないからな。
「ふふ、レクターの背中気持ちいー。」
結界張ってでかくなって寝転んで。そうすると当たり前のようにアニンが背中に乗りくつろぐ。しばらくはザックの背中だったが、ザックの成長中は場所が安定しないらしく俺のところにくるようになった。
「今日も平和。」
「そーだな、いい天気だし。」
「アニンもう寝てる。」
俺の横に同じようにでかくなって寝転ぶザックが、背中の上にいるアニンを見ながら笑う。出会った頃は俺より少し小さいぐらいだったくせに、気がつけばザックのがひと回りは大きくなった。
ロダンたちも出会った頃からだいぶ成長したし、それだけ長いこと一緒にいるってことだな。もうすぐリズも卒業だし。
「こいつどこでも寝るよな、これから心配になる…。」
「これから?」
「あぁ、リズと合わせてライとロダンも卒業だろ。そしたらその後は討伐部隊での日々だ、危険もつきまとうだろ。」
「そっか。俺らが守らなきゃね。」
「だよな、あいつらのこともだけど。」
「うん。」
ザックとの会話が途切れたところで襲っていた睡魔に身をまかせる。日差しは気持ちいいし、上にいるアニンの体温が心地いい。こんな平和な日々がずっと続けばいいな、と思いながら意識を手放した。
「…ター、レクター!」
「ん、ライか…。」
「珍しいね、熟睡するなんて。」
いつもの声で目を開けると、そこにはいつもより小さなライがいた。あ、違うな。俺がでかいんだ。
少し意識がはっきりしたところで周りを見渡し、ふと疑問が湧いた。俺、結果張ってたよな?それに場所も伝えてないはずなのに。
「なぁライ、結界どうした?」
「前にレクターが解除魔術教えてくれたじゃん。」
いや、確かに教えたけどそんなすぐできるもんじゃねぇぞ。
「じゃあなんでここだって分かった?」
「レクターとザックの両方が大きくなれる場所、ここしかないじゃん。」
なんてことないように笑うライ。こいつ、思ってる以上に俺のことよく分かってんだな。
それに解除魔術もそうだけど、教えたことを習得する早さはたぶんずば抜けてる。まだまだ成長するってことだよな。
「ほら、夜ご飯食べに行くよ?」
前を歩くライの背中が、ふといつもより大きく見えた。俺らが守らなきゃ、ってのはもしかしたら勝手な考えかもしれないな。
そう思いながら横を見ると、俺と同じような目でライの横に並ぶロダンの方を見るザックがいた。
「なぁザック。」
「ん?」
「一緒に闘う、のが正解かもしんねぇな。」
「俺もそう思った。アニンは守るけど。」
「レクター!ザック!置いて行くよー?」
少し遠くから俺らを呼ぶライの声に、俺とザックはどちらからともなく笑い、それぞれの相棒の元へ駆け寄った。
頬をなでる心地いい風が、冬の終わりを告げていた。
少し長くなってしまいましたが、
レクター目線お楽しみいただましたかね?
私は書いてて楽しかったです!
次からはまたいつも通りですが、
もしご要望があればまた区切りの時にでも
書けたらいいなと思います!




