15、進路
◇◇◇◇◇
「なぁライ、お前ここ出たらどーすんの?」
「え?」
いつも通りのお昼休みでのこと。3人と3匹はすでに当たり前になった食堂の一角で、昼食を食べながら談笑していた。
レクターの授業が始まって約半年。季節は冬を越えてそろそろ暖かくなっており、ライラックとロダンダスは4年目、リザリスは2年目を迎えていた。
「今のまま行けば、俺らは後1年で卒業できるってフレイン先生言ってたろ?」
「確かにね。僕は兄の補佐のために家に戻るつもりだけど。」
国立大学では、魔術科と騎士科に別れる3年目以降は、教師の合格認定を全てもらえなければ卒業にはならず、最短で2年、通常は3年か4年ほどかかるのだ。
ライラックとロダンダスは、座学や実技共に優秀であり、さらに強力な使い魔もいるため最短で卒業できるだろうと、フレインにお墨付きをもらっていた。
ファリル王国では約500年前の大陸全土の安定時以降、他国との戦争などはなくどの国にとっても脅威となる魔物の討伐が唯一戦力を必要とする場面である。
そのため卒業後の進路は様々だが、騎士や魔術師になるのであればやはり討伐部隊への加入が最も多いであろう。
当然、ロダンダスは討伐部隊に入りたいと常々言っていたが、ライラックからそう言ったことを聞いたことはなかったのだ。
そしてライラックの言葉に反応したのはリザリスだった。
「え、ライは討伐部隊に入るんじゃないの!?」
この半年で、リザリスは2人の前では素の状態で過ごすことが多くなったため、言葉もだいぶ親しげになっていた。そしてレクター講座の成果はとても顕著で、一日中アニンを召喚していても生活への支障は全く無くなっていた。
「う、うん。その予定だよ?」
「私は討伐部隊に入るんだとばっかり思ってた。」
「こいつは昔から兄貴の話ばっかだったからなー。」
ロダンダスはなんとなく予想はしていたようだ。すでに9年目に入った2人の付き合いの長さは伊達ではない。
「討伐部隊に入るつもりはないの?全く?」
「今のところはないよ。なんで?」
いつもあまり感情の起伏がないリザリスが、珍しく動揺していることにライラックは疑問をもつ。討伐部隊に入らないのは確かに珍しいことだが、そこまで動揺することだろうか。
「あ、ううん。私の周りではあんまり卒業後の話をしないから、驚いただけ。」
なんだか歯切れの悪いリザリスに疑問は消えないが、本人が驚いただけだと言うのであればそうなんだろうと、ライラックは気にするのをやめ目の前の昼食に目線を戻した。
「卒業したらライに会うことも減るよなー。全然想像つかねーや。」
「ロダンは寂しがりだから。」
「うるせーよ、お前もだろザック。」
半年で変化したのはリザリスだけではなく、ザックもまた1人でいることの方が少なくなっていた。アニンやレクターとの仲も良く、黄豹特有の群れない性質はすっかり見えなくなったのだ。
「レクターの授業なくなるの?アニン、寂しい。」
「まだあと1年あるから心配すんな。それにまだどうなるか分かんねーよ、なぁリズ?」
「え、え、なんで私にそんなこと、聞くの。」
「みんな気にしすぎだよー。」
ロダンダスの寂しそうな表情やリザリスの慌てた様子を尻目に、ライラックは相変わらずマイペースなままだった。
王族の護衛なんかも、
全て討伐部隊のお仕事のうちです。
部隊の中でも役割が分かれてます。