姉は逆ハー狙いの転生電波ヒロインです
私の双子の姉、那須アカリは逆ハー狙いの転生電波ヒロインです。そういう妹の私、那須ユカリは転生者でもなんでもない普通の人間です。え?転生者じゃないくせに何故、そんなこと言うのかって?そういう小説多いですよね。だから、そう思ったのです。
きっかけは小さい頃。双子の私たちは本当によく似ていたので、どちらかが髪を切ることになりました。その時、姉は猛反発。
「ヒロインは小さいことから髪を伸ばしていて、お人形さんみたいって言われるんだから。私は絶対切らないからね!!」
当時はヒロイン=お姫様だと思っていた私。姉はお姫様になりたいから髪を切りたくないのだと納得し、自分が肩まで髪を切りました。今もそうですが、気に入っています。
次のきっかけは、お隣に同い年の男の子が引っ越してきた時です。姉が小さく「引きこもり系イケメン幼馴染キタ―――」と言ったのを聞き取りました。その時は意味が分かりませんでしたが、幼馴染となった五條ツバサ君は、そのハーフな外見をからかわれたことにより、中学生になってから不登校、今や立派?な引きこもりです。
そんなツバサ君に、高校生となった姉は何かとちょっかいを掛けています。曰く、「高校生活からストーリーがスタートだしね」。そして「私は分かってるよ」「容姿なんて気にしないで」とテンプレの台詞を呼び鈴越しに話しかけています。しかし、ツバサ君は何の反応もしません。「おかしいな。3回目から家の中に入れてくれるハズなのに・・・」とはどういう意味でしょうね。
ちなみに私とツバサ君はメールでやり取りしてます。『お前の姉がマジウゼェ』と連絡が・・・取りあえず、謝っておきます。『また、通信で対戦しようね』とも。
私と姉は違う高校に通っています。私は綺羅星女学院。姉は流星学園高等部。姉妹校です。姉妹校と言っても別の学校。噂話なんて流れてきませんが、情報源があります。
「ねえ、ユカリの姉貴、またやらかしたって」
「今度は何?」
「兄貴に『お父さんの事、分かってるわ』って言ったらしい」
「お父さんって、亡くなった?」
「そう。『悲しむのは当然なの。今から泣いたって良いのよ』だと。ブフゥ」
「・・・笑い方に気を付けてね」
メールを中継してくれてるのは卜部カナエ。私の親友です。美少女であるカナエの兄のヒトエは、かなりの美少年。恐らく、攻略対象なのでしょう。
「姉貴にウチの親父の事、話したことある?」
「カナエと友達ってことすら知らないわ」
「だよねぇ。うわぁ。本当に怖ッ。兄貴も『何でも知ってるわ』って感じに引いてるみたい」
恐らく、ヒロインなだけあって、姉アカリの容姿は優れています。あ、私自身は普通だと思っていますよ。そんな美少女でも電波だと男は引くものなのですね。
「ねぇ。兄貴がまたユカリの写真送れって」
「目の前に同じ顔があると思うけど・・・」
「何言ってんの。笑顔が違うから!アンタとアンタの姉貴は!!」
自分に迫ってくるイカレタ女の妹と、自身の妹が親友と聞いて心配になったヒトエは、カナエに絶交しろ言ってきました。その時、私はアカリが絶対しないような変顔で写真を撮ってカナエに送付させたのです。それ以来、ヒトエともメル友になりました。カナエの親友としても認めて貰っています。
「それより、今度行く遊園地の話だけど・・・」
「あ、兄貴もユカリと会えるの楽しみにしてるよ」
今度、3人で遊園地に行きます。もちろん、アカリには言っていません。
「な!?那須アカリ!?」
「違います」
私は弓道部に所属しています。試合の会場でいきなり男子生徒に顔を見て叫ばれました。解せぬ。
「た、確かに髪が短いが・・・その顔」
「私、綺羅星女学院の那須ユカリと申します。アカリは双子の姉です。流星学園の方とお見受けしますが?」
「あ、ああ。流星学園弓道部部長の鶴田ユウキだ」
「ご丁寧にどうも。姉のご友人ですか?」
「断じて違う!!」
「では、被害者の方ですか?姉が申し訳ございません。アグレッシブな性格でして」
「・・・あれは電波だ」
何やら被害があるようだ。この人もイケメンだし、攻略対象なのでしょう。
「お話くらいは、お聞きします」
「ああ、あれは入学式の時・・・」
この人も姉からいきなり家族の事情を言い当てられて気持ち悪かったそうだ。普通そうですよね。
「話を聞いてくれてありがとう。・・・姉と間違えてすまなかった」
「いいえ。良くあることですし」
「その・・・良かったらメールアドレスを教えてくれないか。相談したい」
「良いですよ」
ユウキ先輩(そう呼んでくれと言われた)ともメル友になりました。
「もう、何で攻略できないのよ!!どのルートの台詞も効果ないし!!意味わかんない!」
姉よ。いきなり家族の事情を知っている女に、男は惚れはしないのだ。
『ゲームしようぜ。待ってる』
『遊園地、楽しかったな。今度は二人で行きたい』
『相談事があって・・・会えないだろうか?』
さあ、どのメールから返信しようか。