8.スーパーファミンゴww(つーだぶりゅー)用ソフト。めきめきメモリーズ2はNAGOMIから、10800円で好評発売中
次の日。
学校への通学路を歩きながら考える。
これから、俺はどんな結末を目指して歩んでいくべきなのか。
そして、その結末を迎える為には俺はどう行動していくべきなのか。
少し考えを纏めてみる。
そもそもこの世界の元になっていると考えられるのは俺の前世でプレイしていたゲームだった~めきめきメモリーズ2~だ。
その「めきメモ2」はゲームハードのスーパーファミンゴww (すーぱーふぁみんごつーだぶりゅー)から発売されていた恋愛シミュレーションゲームなのだが。
当然ゲームだから全ては二次元の世界の出来事だし、ディスク五枚組と言うふざけた枚数だったがそれでもなお容量の少なさからイベントの数にも限りがある。
だがその全てが現実世界の出来事となった今、当然イベントとしてゲーム内では起きなかったことだって起こるだろうし、ゲームにない結末を迎えることだってありうる。
しかし現実では、今のところおおよその出来事は「めきメモ2」の流れと重なっているし、今後いい結末を迎えたいなら大いに参考にするべきだろうとは思う。
そう考えた時に避けるべきことは、ある一部のヒロイン達のルートと、また二股以上攻略でのヤンデレルートなのだ。
あるヒロインについては近づかなければ大丈夫だろう。だが危険度がそれよりは下がるとは言え二股以上のルートも避けるべきであると考える。
一度上がってしまったヒロインの好感度は下げるのは至難の技だから、今から攻略対象を変更するのは難しい。
そう考えると既に陽山から小波への好感度が恋愛モードまで入ってしまっている以上、小波にはこのまま陽山一人だけのルートに入って貰えると非常に助かる。
ちなみに「めきメモ2」では二股以上の修羅場ヤンデレルートとは対照的に、ヒロイン個別ルートに入った際にはほのぼのとした癒し系恋愛ゲームとなっている。
基本的にそれらのルートは「アマキスルート」と呼ばれ、それだけで見れば非常に完成度の高い良くできた幸せな恋愛ゲームとなっている。
まあ、どのヒロインも内面には恐ろしい物を持っているヤンデレラ達なので、ゲーム終了後の例えば大学、社会人、そして結婚生活など。
小波とヒロイン達の過ごす未来が平穏なものであるかまでは知らないのだが。
しかしまあそこまでは俺も責任は取れないし、傷害だろうが殺人だろうが俺に被害の及ばないところで好きにしてくれとは思う。
だが、今はとりあえず手近な未来を確定させることこそ最重要なのではないか。
そして、その為にどうすればいいのかを考えるべきなのだ。
とりあえず、今はこれ以上他のヒロイン、特に危険域にある多仲ちゃんの好感度を上げないようにして、陽山さんを応援することに全力をかけよう。
他のヒロインについては、好感度にも多少余裕があるし静観しておいて、何かあればその都度対策を取ればいいかな。
うん。それしかない。
そう決心して一息つき、菊城高校前の、長い坂を歩き続ける。
やることさえ決まってしまえば心積もりもつくし、かなり楽になる。と思えなくもないのだが。
だがまだひとつだけまだ気がかりなことがある。
それは隠しパラメータのプレイヤー。つまり小波誠から各ヒロインへの好感度である。
「めきメモ2」を普通にプレイしている限りはほぼ起こらない展開なのだが。
稀に狙ってレアイベントを起こした場合主人公からヒロインへの好感度が著しく下がってしまうことがある。
そうなると、ヒロインから主人公への好感度は十分でも個別ルートには入れないまま二股ルートに入ってしまうことがあるのだ。
これは出来るだけ避けたいパターンだ。
まあ、今のところレアイベントに繋がるような兆候は見られないし楽観視していていいだろう。
とりあえず、今日はもう一度小波と話して陽山さんの良さとかを力説しとくかな。
などと考えていたら。
「よっ、山田。なんだか難しそうな顔してるけど何か考え事?」
いきなり背中をバチンとかなり強く叩かれると同時にそう声をかけられた。
振り向くとそこには、ご機嫌な表情で男前に悪戯な笑みを浮かべる美人がいて。
「樋渡か……朝から元気だな」
「まあね。昨日少しいいことがあったから」
「へー。そうなんだ」
「うん」
「へぇ」
「ん」
「……」
「……チッ」
なぜ舌打ち!
続きを聞いて欲しかったのか。
まあいいや。聞かないで。俺はどこぞの誰かみたいにギャルゲーの主人公じゃないからな。
だがそんな俺の対応が樋渡はお気に召さない様子。
「ハァ、全く。そんなんだから山田は小波みたいに女の子にモテないんだよ。小波みたいに極端になれとは言わないけどもうちょっと女心を考えるべきじゃない?」
「えぇ? ヤだよ。それに俺は別に小波みたいに女にモテモテにはなりたくないし」
「なに。どういうこと? 山田ホモなの?」
「ちげーし。そういうんじゃないけどさ。小波が言い寄られてる女みたいなのにモテてもなぁ」
「なんでさ。全員学校を代表するような可愛い娘ばっかりじゃないの」
「そりゃ美人だとは思うけど。でもああいうタイプは苦手なんだよ」
「ああいうタイプ? どういうタイプさ。みんなそれぞれ個性豊かで性格なんかバラバラじゃないか」
「まあ、そりゃそうなんだけどさ……」
記憶の中にある俺の人生の最後が女絡み。しかもヤンデレ、と言うか具体的に言えば更にタチの悪い頭の狂った、キチガイな恋人に刺されただけに、今世ではもうそう言う女は懲り懲りだ。
なのに今世でも何故か俺の周りはヤンデレばかり。と言うかこの世界がヤンデレゲームの世界。どうしてこうなった。
それこそ今、俺の周りにいる身近な女性で真っ当なのは母親と樋渡と里見先生くらいだろ。
まあ、女だてらに武芸十八般をこなしたり、美人なのに29歳彼氏いない歴29年の処女なのが真っ当かと言えば微妙な気もするが。
しかしそんなことはヤンデレに比べれば些細な問題だ。
事実、里見先生は処女だけに真面目でいい先生だし。
樋渡だってちょっと男前過ぎるけど真っ直ぐでいい奴だし、本当に友達としては気に入っている。
つまり俺からしたらあのヒロイン五人衆よりも樋渡や里見先生の方がよっぽど魅力的に見えるって訳で。
「だから人それぞれ好みがあるってこと。個性的なのはいいけどさ、表面的には解らない部分で合う合わないってのがあるんだって」
「そういうものなの?」
「そういうものなの。例えばさ、いい年して、そうだな例えば29歳くらいで独身の上に男性とお付き合いしたことがない女性がいたとしてさ」
「やけに具体的な例えね」
「いいから。そう言う人が居たとして。それは結構表面的な問題じゃん。でもそんなことはその人の本質にはあまり関係ないんだよ。まあ深いところではあるのかもしれないけど」
「なんか解るような解らないような。ねぇ山田、嫌に具体的な例えだけど誰か特定の人のこと話してるの?」
「そりゃあもう。我らがクラスのたん……」
「山田くんっ!!」
「に"っ……」
いきなり大きな声で後ろから呼び止められたせいで変な奇声を上げてしまった。
振り向くとそこには笑顔のまま、いつもと同じスーツをピシッと着こなした我がクラスの担任こと里見先生の姿があって。
「山田くん? 今何を言おうとしてたのかな?」
一瞬笑顔だから大丈夫だと思ったのだが。あ、これダメなやつだ。
昨日と同じように、こめかみに青筋が浮いている。なんだこの人こめかみの皮膚が薄いのか。
「いや、その、ちょっとー……、え、えと、今はカブトガニの育成の仕方とその進捗具合をについて樋渡と楽しく談笑してただけで」
「嘘おっしゃい! 後ろ歩いてたから聞こえてたけど全然そんなこと言ってたなかったじゃない!」
バレてる!
「そう言えば山田くん。国語の成績が微妙に良くなかったわよね。どうしようかしら。このままだとマズいかもしれないし、今日辺り山田くんの為を思って補習を入れようかしら」
そして脅されてる!
「あ、あの。本当にすみません。何も僕は言ってないですから。勘弁してください」
「ふぅん。何も言ってないし、何も言わない。のかな?」
「ええ、勿論。素敵な先生のもとで勉強できるのは嬉しいことなのですが、ここしばらく忙しくなるのでそれは勘弁してください」
「……まぁ、そこまで言うのなら今回だけは見逃してあげようかしらね」
「あ、ありがとうございます!」
ええぃ、このままここにいるのは藪蛇をつつきそうだ。さっさと立ち去ろう。
「そう言えば僕らちょっと教室でやることがあるんで先行きますから。な、樋渡?」
「ん? そんなんあったっけ?」
「いいから。と言う訳で僕ら急ぐんで。じゃ!」
「えっ、ちょ、ちょっと待ちなさい!」
そう言いながら樋渡を追い立てて教室へと向かって走り出した。
先生が何か言ってるが無視無視。あのヒールの高い靴じゃ早く走ることはできまい。
と、そんなこんなで俺は戦略的撤退をしたのであった。
逃げるが勝ちとはよく言ったもので。
昔の人の言うことは大抵正しいんだな。うん。