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白球の恋  作者: 安松大遥
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終わりと始まり

1話 終わりと始まり



7月18日とある地方球場


「お〜とこには〜自分の〜世界が〜ある」

ベンチ外の選手たちの声が球場外にも響き渡る

毎日が同じことの繰り返しだった。だけど…

「かっとばせー加藤、加藤、加藤」

真夏のグランド、スタンドの応援、選手たちの声、それを制止するかのように、

「ストライクーバッタアウト」

主審の甲高い声。

この一言で、おれの毎日の繰り返しだった生活が、終わりを告げだ。そして新たな生活の始まりの合図でもあった。

ミーンミーンミーン

引退してから2週間後、真夏の甲子園では各県の代表校が熱戦を繰り広げてる中、このおれは

灼熱地獄の教室にいた…


「起きろ、おい、ヤス!」

「そんなんじゃ、起きないよ〜てっちゃん自分の耳塞いでなね」

「はいはい」

てつはしぶしぶ耳を塞ぎ

「おーきーろーやすだー」

あまりの大声に廊下を歩いてる生徒たちが目を丸くし、声を出した張本人は満足げにこっちを見ている。

寝ていたおれは、驚きの余り椅子から転げ落ちてしまった。

「痛たた、何すんだよ千花。」

2人はお腹を押さえて笑っていた。

佐藤哲、剛田千花この2人同じ野球部であり、てつは野球部のエース、千花はマネージャーだった。だいたいはこの3人でつるんでることが多かった。

「で、何の用だよお二人さん、おれはお受験勉強で忙しいーの」

そおいいながらまた昼寝の続きをしようとすると

「なーにが勉強よ、寝てるだけじゃん」

口を尖らせながら千花が文句を言ってきたが、構わず寝ようとすると

「ヤス、お前先生が教官室来いってさ。よ、び、だ、しだよ♡」

てつが放った先生と教官室という単語におれは不意を突かれて教室を飛び出る。

おれの急な動きに二人はあっけにとられていた。そんなのはお構いなしにおれは廊下を走った。

てつがさっき言った教官室とは、体育教官室のことである。体育担当の教師がいる部屋であり、誰しもが入るのをためらう場所でもあり、俺たち野球部のボス(監督)がいる部屋でもある。

教官室の前で大きく深呼吸して、出てたシャツをズボンの中に入れおれはドアを叩いた。

トントン

「失礼します。3年B組の安田です。荒山先生にご用があり来ました。」

教官室にはボスしかいなかった。

奴の名前は荒山和樹。野球部監督である。つねに無表情、あまり笑うこともなく、おれたちにとって何を考えてるのかも読み取れず、鉄仮面などと呼んでいたこともあった。だが、グランドに立つと毎日のように怒鳴りまさしく鬼という表現がぴったりの人だ。

「お仕事中失礼します。先生何かご用、」

突然ボスが立ち上がり

「安田お前大学でも野球やらないか?」

突然の話にその場で固まってしまった。

「実はな夏の大会の試合を見ていた高台大学さんの監督さんがお前を欲しがっててな。どうだ、あそこは2年連続大学野球選手権で優勝してるし、環境もここと違ってすごいぞ。どうだ、やってみないか。」

まさかだった。たしかにこの夏おれたちはベスト8まで勝ち進むことができた。ここ数年なかなかベスト16の壁を超えられなかったため学校はとても盛り上がっていた。その中でもこの夏5試合で打率7割1本塁打10打点という成績を残したおれはベスト8進出の立役者と周りの人間から称えられた。だけど、それが逆におれを燃え尽き症候群にも追いやった原因でもあった。

しかも、約2年半地獄のような日々を送ってきたおれにとって、大学でも野球をやると考えは微塵も考えてはいなかったため余計に混乱した。

「大変光栄な話なんですが、少し考えさせてもらえますか。両親とも相談したいので」

とりあえずおれは1秒でもこの空間から出たくてお決まりのセリフを言ったが、この後ベスト8に進出した時に見せた並みの笑顔でボスが、

「お前の親父さんは是非って言ってくれたから、お前次第だからな」

あのジジイ〜ここまで親父を憎んだことはなかった。とりあえず8月の下旬にある練習会には行くということになりおれは教官室をでて、てつと千花がいる教室へと頭を抱えながら戻った。

廊下を歩いていると、後輩たちが真夏の中グランドで練習をしている声が聞こえた。足を止め、近くにあった教室の窓からその様子を眺めた。

「また野球ができるのか…」

嬉しいような、嬉しくないようなそんな気持ちが交錯してる中、突然頭を叩かれた。

「痛、誰だよ」

睨みながら後ろを向くと

「よ、どした」

そこにはフルートをもった真紀が立っていた。

秋田真紀。おれ、てつ、千花と同じクラスの吹奏楽部で、何を隠そうてつの彼女である。

「秋田お前何してんだよ、フルートなんか持って」

そう言うと秋田はドヤ顔で、

「後輩の指導だよ!いや〜できる先輩はつらいね〜」

はいはいと軽く流すと、また頭を叩かれた。

秋田と2人が待つ教室に向かってる際に大学からスカウトされたこと、野球を正直続けたくないことを話した。相変わらず人の話をきいてるだか聞いてないだかわからない態度で少しイラついてはいたが、なんだかんだで教室に戻ってきた。

着いた途端千花と真紀は抱き合って、てつはなんでいんだよみたいな目で真紀を見ていた。

「先生なんだってー?」

てつに聞かれたため、すべてを話した。


第2話へ…




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