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序章

それは、少し前のことだった。


 僕にだって、少し前にはちゃんとほかの子みたいにお父さんがいた。

だけど、今の僕にはお父さんがいない。

 あの日、僕はおばあちゃんと家を出た。

田舎からわざわざやってきたおばあちゃんと、ランドセルを買うためだった。 僕はまだ、友達のようなピッカピカのランドセルを買って貰っていなかったから、喜んで家を出た。


 そのとき気付くべきだったんだ。 おばあちゃんの、お父さんの、そして何よりお母さんの様子が違うということに。


 僕は、おばあちゃんに「さんまんえん」するランドセルを買って貰った。

「さんまんえん」というのは、お金のことなんだろうが、まだ僕にはよく分からない。 それも、学校に行ったらわかるはずだと、僕は鼻歌を歌っていた。


 そして、帰ってきたときには、お父さんはいなかった。 お母さんだけが、家にいた。

「お帰りなさい」

と、お母さんは悲しそうに言うだけだった。


 そのとき、お母さんが浮かべていた悲しい悲しい笑顔を、僕はきっと忘れないと思う。

 その日から、僕がお父さんに会うことは―――なかった。




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