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01

 サンライズにとって福島市は初めてだった。仕事でも来たことがない。


 東北自動車道の福島西インターチェンジを降り、車は国道115号を西南に進む。

 わずか20分ほどで、国道から一回左折して少し入っていって、車が止まった。

 カラマツのような背の高い木に囲まれた広い一角があった。

 それほど大きくないが、三階建の白い建物が少し奥にみえた。

「着きましたよ」

 と、言ったのか運転手がふり向いた。

 何だ、案外開けた場所じゃあないか、とサンライズは車から降りる。

 それでも、外に出てみると、あたりは高原のような涼しさだった。

 はるか向こうに、美しい山々が見渡せる。

 ひときわ稜線がきわだっているのが、あれが?

 目で聞くと、トノマツがボードに「あづまやま」と書いた。

 吾妻連峰か、と彼はしばし景色に見入っていた。


 入り口に着くと、玄関近くにいた看護師らしい女性が空の車いすを押してやってきた。

「アオキカズハルさん、ですか」と聞いたらしい。

 サンライズではなく、脇のトノマツを車いすに乗せようとしている。

 いやいやいや、とトノマツがぴょんと後ろに下がって、彼の方を指さし、あわてて何か言っている。

 看護師もあわてて、顔を少し赤くしながら何度も頭を下げている。

 少しばかり慌て者なのだろうか、それほど若くはなさそうだが、どことなく初々しい感じがある。

 彼は手をふって

「歩けますから。ありがとう」と手話で伝えた。

 看護師はようやく気がついて、はっきりした手話であいさつした。

「担当のサトウといいます。よろしくお願いします」

 手早く車いすをたたみ、壁際に立ててから戻ってきた。

「お部屋にご案内しますね」

 トノマツがボードを出した。「先に手続きに行ってきます。また後で」

 サンライズは軽く手をあげ、少し前に立つサトウについていった。

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