04
火口への上り、小路に入るところに大きな影がうずくまっている。サトウが駆け寄った。
ふり向いてサンライズに伝える。
「撃たれている」
それでも、その影は立ち上がろうとしていた。
見ると、やや小柄な中年の男だった。灰色のジャケットに灰色のズボン、かなりくたびれている。ぎゅっと押さえた右太ももの辺りが、赤く染まっていた。
髪は乱れ、髭が少し伸びている。苦しげにこちらを見上げた表情にサンライズははっとなった。
「ミヤシロ、いやライトニングのオヤジだ」
聞いてみて、とサトウをつつく。
サトウは聞きながら撃たれた太ももの場所を確かめて、自分のスカーフをきゅっと巻いてやった。
「ミヤシロくんのお父さんだって。火口に四人、向かってる」
ライトニングと弟のマサキ、それぞれについて組織の人間が一人ずつ。
「助けてくれ」
初老の男がサンライズにすがりついた。
「アイツらをやっつけてくれ。殺されちまう……マサキが」
サトウの手話も速くなる。
「ヤツらはマサキを撃って、あそこに捨てて行くつもりだ」
火口上に続く道を指す。
サンライズは駆け出した。
ライトニングが力を思いのまま使えれば、男のどちらかはすぐに片付くはずだ。
しかし、相手は二人、しかもこんな状況で精神的にも不安定な時にうまく力が使えるのかが問題だ。
自分が行って何とかなるとか、そういう事ではなく今は本能に従うしかない。
彼はガンガンする頭を両手で押さえながらも全速力で、足場の悪い小道を駆けあがっていった。




