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詰所には誰もいなかった。今いる所員たちは、ライトニングの追跡に追われているらしく、どこもかしこも人出が足りていないようだった。
サトウキョウコの名札はまだ勤務に入ってなかった。
自分の業務用携帯では番号が分からない。備え付けの外線をみてみる。
電話の短縮に『佐藤(京)』とあった。
ボタンを押してから液晶をじっとみつめ、『通話中』の表示に変わるのを待つ。
―― 頼む、出てくれ。
少し待って、ようやくつながったようだった。
通話中の表示になるとすぐ、彼は言った。
「アオキです。ぜんぜん聴こえていないので勝手にしゃべる。ミヤシロタケルがセンターを出た。捜したいが手伝ってくれますか? オレは歩いてセンター裏手のリサイクル倉庫影に隠れる予定です、一時間くらいそこに待機しているのでぜひ来て下さい」
二回目を繰り返す間に、電話が切れたようだった。
あたりをうかがいながら外に出て、倉庫の影に入りしばし待つ。
一時間近くたった頃、つながってなかったのだろうか、いったん戻ろうか、と業務用携帯を見るともなく見ていると、倉庫の外壁に軽い振動を感じた。
黒っぽいバイクが近づいてきてそばに停まった。
カワサキの、ええと。サンライズは名称を思い出せない。
ヘルメットを外したサトウはいつもの優しい看護師の貌ではなく、精悍な戦士の表情でにっこり彼に笑いかけた。
「私も調べたら、センターの軽で土湯に行ったことまではわかった」
手早い手話。
さっそく本題に入る所がさすがオネエサマだ。
「後ろに乗って。十分で着くから」
投げられたヘルメットを受け取る。
ヴァルキューレに相乗りとなった。
明け方前の風が気持ちいい。




