05
夜になってから、サンライズはどうしても気になってまた、彼の部屋を訪ねた。
ライトニングは、めずらしくすでに布団の中に丸くなってもぐりこんでいた。
髪の毛の先だけが、枕のあたりに長く飛び出している。
しかし、眠ってはいないらしい。テレビがつきっぱなしだった。
咳払いして、
「入るよ」
と近づいていった。
「弟さんに、会えたんだね」
しばらく動かなかったが、やがてしぶしぶと、掛け布団の上から手の先だけ出して
「はい」
と指文字でこたえた。
「弟さんの、心がみたいと思っていたのか、ずっと」
声は通じているらしい。これも渋々だが、指文字で
「はい」
と返ってきた。
結果は聞かなくても分かった。
それ以上、彼が動かなかったので、サンライズはまた咳払いをして、話し始めた。
「ちゃんと、話ができているか分からないけど、言わせてくれ。
弟さんの心がみたい、という気持ちはよくわかる。
家族がほんとうはどう思っているのか、自分の気持ちは通じているのか、誰だって知りたいと思うよ。
でもね、もし万が一相手の心が読めるようになったとしても、やっぱり本当のところは分からないものなんだ。オレだってそうだ。カアチャンの心も子どもの気持ちも、なかなか分かってやれない。
今まで何度、家族の気持ちをスキャンしようかと思ったか……
ねえ、カズキ」
髪の毛の先が少しだけ動いた。
「愛する人たちの心の声を聴くには、やっぱり聴ける道具だけ使うしかないんだと思う。スキャンは元々、オレたちには過ぎたツールなんだ」
布団の中のカズキは動かなかった。かすかに肩が震えているのがみえた。
「もう行くよ、おやすみ」
カズキの震える背中にそっと手をかけ、彼は部屋を辞した。




