04
支部長との面談はあまり長い時間ではなかったが、ライトニングの尋問については、彼もかなり評価をしてくれた。
「やり方を示してくれたんだね、大きな成果だったよ」
「私自身は全くできなくなっていましたが」
「少しだけ、光が見えたんだって?」
「音が、聴こえて来なかったんです。光もすぐ消えてしまって」
支部長は、穏やかな笑顔を崩さず、じっと彼を見守っていたが、さらさらと紙に書いて、彼にみせた。
「これからもう少し、ここで彼の指導を続けてくれないか?」
彼には、うなずくしかなかった。
さっきの彼はまだいるだろうか?
サンライズが食堂に寄ってみると、先ほど案内した場所に彼がまだ座っていた。
こちら側の隣に、背中を向けて別の人影がみえた。
ライトニングだった。
中に入って声をかけようとして、彼は立ち止った。
ライトニングが、横の男の頭をそっと、抱き寄せて額をつけている。
しばらくじっとしていたが、また静かに手を離し、今度は彼の背中をなでた。
横の男はライトニングの顔をじっと見つめて、優しく笑った。
ライトニングは、背中をなでながらもすっかりうなだれている。
その様子をじっと見つめているところに、水色のポロシャツを来た女性が近づいた。
丁寧にお辞儀をしたので、こんにちは、と手話で返す。
「耳が不自由で、聞こえません」
「わかりました」
彼女も、手話には慣れているようだった。
彼女のポロシャツの胸に、『あだたらの里』とある。
「それは?」
胸の縫いとりを指さすと、
「施設の名前です」
と答えた。
そして、女性はライトニングの横に座る男を指し
「カンノマサキくんの、おうちです」
と説明した。
―― 弟が暮らしているというのは、障がい者用の施設だったのか。
「さっきまでお兄さんといたと思ったら、どこかに出て行ってしまって……」
女性はいつもの事なのか、慈しみに満ちた温かい笑顔を二人に向けた。
「喉が渇いたんでしょうね」
今度は、弟が兄の頭をそっと抱えて、同じように額をつけた。先ほどの真似をしているのだろうか。笑っているようだ。
ライトニングの肩も震えていたが、そちらは、どうも笑っているようではなかった。
そんな彼の頭を、今度は弟が心配そうな眼をして、優しくなでていた。
サンライズは、彼女に頭を下げて静かにその場から去っていった。




