02
―― ライトニングは今、何をしているんだろう?
夜になってふと気になった。
昼食後も欝うつとして、表情は晴れていなかった。頭が痛いとか、だるいとかはないか? と聞いたのだが、そうではない、ちょっと考え事、と寂しげに笑っていた。
尋問した男たちは、あれからずっと眠り続けているらしい。
明日は何ごとも動きがなければいいのだが。
布団に入って、家族のことをまた思い出した。
手紙を書こう、と思ったがすでに眠くて起きる気になれない。
業務用携帯では家にメールできないし、電話をしたくてもできない。
仮に耳が聴こえて電話ができたとしても、受付脇の公衆電話、守衛の前で「ねえ、元気?」などと話をするのもはばかられるだろう。
サトウのオネエサマに仲介してもらうのもちょっと勘弁願いたかった。
FAXも哀し過ぎる。事務課に思い切り見られてしまう。
たかだか家族と話をするだけなのに、厄介事が多すぎる。
ライトニングには弟がいたよな。ふと、頭に浮かんだ。
弟と話をすることはないのだろうか? 手紙でも書いているのか? 電話しているのか?
そういえばあまり、弟の話は出ない。
今回も父親はカズキの相続分を狙っているという話は聞いたが、そう言えば弟も同じだけ相続しているはずだ。弟は他所で暮らしているというが、彼はだいじょうぶなのだろうか?
明日起きたら、必ず確認してみよう、そう思ったところで急にアホらしくなった。
ここは一応MIROCの施設で、優秀な職員も揃っている。
その人たちがすべて、そういった仕事はこなしてくれるだろう。自分はただ、研修生の指導をしているだけだし、療養中の身だ。
オレが出る幕はない。
そこまで考えたところで、意識は自然と暗闇に閉ざされた。




