02
診察の結果は『ストレスからくる軽いパニック症状』とのことだった。
「あれで、軽いんだ……」
ローズマリーはそれを聞いた時からずっと、腕組を崩さない。
「きつい仕事が多かったから、フラッシュバックかなあ」
「その割に普段、ヘラヘラしてたよねえ」
と同じく飲み連れのゾディアック。
「まあさ、近頃、飲み会誘っても断られてばっかだったし……」
結局、飲む量が健康のバロメーターだと、二人とも思っている節がある。
「飲みに行きたくないくらいだったんだ……かなり調子は悪かったんだな、きっと」
普段無口なゾディアックにしては、一生懸命なフォロー。いや、全然フォローになっていない。それでも二人は深刻な顔つきで腕を組んでいた。
その日は早く家に帰されたサンライズ、しかし翌日からはまたお仕事だった。
ローズマリーに謝りに行くと、ぽんぽんと肩を叩かれた。
「気にすんな」
温かい社内の目というのはまた辛いものだ。彼は眉根を寄せたままなるべく目を上げないようにずっと書類に集中しているフリして一日を過ごした。
しばらくは、何ともなかった。カイシャはたまたまデスクワークが続き、少しずつ顔も上げて他の連中と他愛ない話もできるようになってきた。外に出るのも訓練くらい。それほど負担にはならないだろう、と自分でも思っていた。
それなのに、家に帰ると何だかイライラして女房に当ってしまう。
カアチャンだって、小さな子どもが三人もいて、ストレスがたまっているだろうに。それは十分解ってはいたのだが、なぜだか彼女の前で優しくなれない。
ある晩、案の定、大ゲンカになった。
由利香が楽しみにしていたテレビドラマを、今から、という所でぶちっと切ってしまった、とにかく、静かにしてほしかった。
最後に、泣かせてしまった。