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02


 気がつくと、がたごとと揺られていた。


 わずかに目を開けると、暗がりの中に段ボール箱がいくつか積んであるのと、細かい角材の支えが入った壁が見える。宅配用の小型トラック、バンボディのようだ。見張りの黒服が、後ろに座っていた。

 銃を構えているが銃口は下を向いていた。

 サンライズが起き上がりそうなのを見て、あわてて寄ってきた。

 なんと、ライトニングだった。

「だいじょうぶ?」

 手話でなくても分かった。

 彼はうん、だいじょうぶと答える。殴られた所がズキズキするが、オレの頭は石頭だ、と答える。

―― しかしどうして見張りに?

「それは……」

 ライトニングにもよく分からないらしかった。

 一人に追われて逃げた、ロッカー室で追い詰められ、気がついたら相手が気を失ってしまったので、急いで服を着替えてソイツを縛り上げた(縛り方はMIROCの研修で習った)、今度は外に出て行って、もう一人に不審な目で見られ「オマエ……」と言いかけたところに「仲間じゃねえか」とつい言ったら、「だよな」と返され、急いでコイツだけでも連れて帰ろう、ゆっくり吐かせればいいさ、発砲したのがまずかった、通報されないうちに早く、という事になって、じゃあ自分は後ろで見張るということになってすぐ出発したらしい。


 たどたどしい説明だったが、サンライズにはすぐ分かった。


 彼は力を実戦で使ったのだ、初めて。


 しかし計測結果を思い出した。いつまでもつかが分からない。

「車が走り出して、どのくらい経った?」

「ええと……十分くらい」

「目的地は聞いた? 方角は?」

「ちょっと待てや、速いや」

 答えようとして手話が分からなくなってきたらしく、床に書きながらしゃべった。

「ゴールはわかんね。国道115、南西へ」

 土湯、猪苗代方面または途中から南に折れて二本松だろうか?

 高速自動車道を使っている様子はないので、それほど遠くには来ていないようだ。

「とにかく降りよう」

「了解」

 ライトニングは手早く彼の手を縛っていたロープをほどいた。体が触れて気づいたが、ライトニングの動悸が激しい。

 初めての実戦でこれじゃあ、確かにドキドキするな。それとも、オレみたいに頭痛がひどくなるのか?

 顔色は悪くないので、ただ単に緊張しているだけだとサンライズは判断した。

 手首を振って、血行を元にもどす。じんじんしびれている。

「オレが縛ったんす」

 しゅんとして、彼が言った。

「ヤツが見てたんで」

「だいじょうぶ」

 心なしか、車の速度が急に上がったような感じがした。

 気づかれたのだろうか?

 急に肩を強くたたかれて、ライトニングを見る。彼は手話で

「まかせといて」

 と言ってからわざわざ胸をたたく。

 何をする気だろうか?

 ライトニングは銃を彼にあずけ、入り口を指す。とにかく見張っていて、ということだろう。サンライズはわずかにドアに手をかけ、振動に気を配りながら彼のすることを見ていた。

 ライトニングは、積んであった段ボール箱を取り上げ、中が空なのを確かめてから力をこめて押しつぶし始めた。手際良く丸めたり引き裂いたり、器用に人の形を作っていく。しかも等身大だ。その後片隅からウェットスーツを取り上げた。あの混乱の中で、ロッカー室から着替えの服を持ち出していたらしい。サンライズの方に投げて

「着替えて、すぐ」

 と言うので銃をいったん置いて、手早く着替える。

「脱いだ服をこっちに」

 放り投げると、今度はその服を段ボール人形に着せた。

 手足をうまく曲げたり伸ばしたりして、妙にリアルなダミーが出来上がる。

「できた」

 ライトニングが段ボールの切れ端で、今度は銃らしき形を作りながら、こちらを見て言った。

「車を停めさせる、運転手がきたら、縛りあげる、仲間がいたら、知らね、いいかな?」

「オマエにまかせる」

 

 なんて新人だ。

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