03
翌日は、フィジカルトレーニングだった。
二人して車で、少し離れた場所にあるフィットネスクラブに送ってもらった。
あいにくの雨で景色はよく見えなかったが、あたりにはやはり、高原めいた空気が流れている。
福島開発センターはまだ開所して二年足らずということで、設備が全て整っているわけではなかった。東京のセンターに完備されているトレーニングルームは、まだ用意されていないということで、市内のあるジムを契約してたまに借りるのだそうだ。
フィットネスクラブはここよりもさらに山よりにあった。かなり大きな施設だ。
完全会員制だということで、彼らの他には客はいなかった。MIROCが使用する日時には貸し切りにしてもらうらしい。
久々に本格的に体を動かす。
支部にいた頃は激務が多かったし、研修期間中には必ず体育の授業のようなものも欠かさなかったので、体力にはほどほどに自信があった。大概の運動は苦手ではないはずだが、さすがにここのところの運動不足がたたっているようだった。
簡単なストレッチから疲れが出始めて、三分間走では完全に息があがった。
ライトニングはさすがに若いだけあって、メニューを淡々とこなしている。
走りながら何か、話しかけるように口が動いているが、ちらっと見て読めなかったので手話で
「わからない」
と答えてからまた前をみて走った。
どうも、ライトニングはすぐ彼が聴こえていない事を忘れてしまうようで、あっ、という顔をしてまた前を向く。
床がきゅっきゅっと鳴る感触だけが、シューズの先から伝わってくる。
耳には厚く包帯を巻かれたような違和感がずっと付きまとっている。それも、足が重くなる原因のような気がする。
そのほかに、マシントレーニングを一通りこなす。
ゆっくりとだがだいたい二時間くらいかけて、全工程を終わらせて外に出ると、すでに迎えの白い営業車が外に停まって待っていた。
聴こえていないとはいえ、かなりの気分転換にはなったようで、福島について初めて、サンライズは朝まで熟睡した。




