5話:始業式
「何処まで...ですか?そうですね...言ってもいいですが聞かれると色々不味いのでは?」
こんな状況だと言うのに慌てる様子も怖がる様子もなくただ冷静に答える。
脅しても無駄なようなのでシエスタを解放する。
パンパンと制服についた土を払うシエスタ。
「ご心配なく。誰にも話すつもりなんてないですから。」
「...その言葉を信じろって言うの?」
「信用、できませんか?」
「当たり前でしょ?私が信用してるのはこの世で3人しかいないよ」
「私は6年前、あの百鬼夜行で先輩に助けてもらった子、だと言ってもですか?」
そう言ってポケットから赤いリボンを取り出すシエスタ。
「それは...」
見覚えのあるそれに思わず反応してしまう。
「はい。6年前、先輩が私にくれた魔除けのリボンです。今はもう効力が無くなってしまってただのリボンになってしまいましたけど...」
それはそうだろう。あのリボンは急ぎで作ったものだし1ヶ月もしないうちに効力は切れてしまう。...いや、あれだけの霊や妖怪がいたのだ、1日も保てば十分過ぎる。
「これ、お返しします」
と赤いリボンを差し出してくる。
「...要らない。あなたがもってて。昔あげるって言ったでしょ」
少し考えた後そう口にする。
「そう、ですか...分かりました。このリボンは頂いておきます」
そう言ってリボンを自分の髪に結ぶシエスタ。
あの頃、私が結んであげたのと同じように。
「...それで、命の恩人だから不用意な真似はしないっていう解釈でいいの?」
「はい。そのとおりです信用していただけますか?」
じっとシエスタの目を見る。
「...嘘を言ってないのは分かった。だから様子見。ちょっとでも変なことしたら容赦はしないから」
「ありがとうございます、先輩。それと、こちらを」
そう言って小さい紙切れを渡してきた。
「連絡先を書いた紙です。何かお手伝いできることがあればいつでもご連絡下さい。
こんなのでも先祖譲りなんですよ?推理とかは。
きっと何かの役に立てるはずです」
「...分かったとりあえず貰っておく」
「はい。朝からお時間を頂いてすみませんでした先輩。
...でも、これだけは覚えておいて下さい。私はいつでも先輩の味方ですよ」
微笑みながらそんな言葉を残し駆け足で学校へと向かって姿を消した。
シエスタ・ホームズか。嘘は言ってない。かと言って信用はできない。自分で言った通り、今は様子見、かな。
はぁ、今日は本当朝から面倒くさい日だ。
っと、私も早く学校に行かないと。遅刻しちゃう。
始業式の始まる5分前、ギリギリで学校についた。
良かった。なんとか間に合いそうだ。
急いで体育館に入る私。
「あ~舞桜こっちこっち!」
2人を探しながらキョロキョロとしていると先に見つけてくれたらしい昧が小声で手招きしてくれる。
手招きされた場所は昧と阿津斗の間の席でどうやら場所取りしてくれていたらしい。
「…おはよ、阿津斗」
微笑みながら阿津斗に挨拶をする。
阿津斗は何も答えずに顔をそらした。
顔が少し赤い…熱っぽいのかな?
と首を傾げる私を見て
「な~んで気付かないのやら」
と昧が苦笑する。
「気づかないってどういう事?」
2人の間の席に座りながら昧にそう質問するが
「さーてね。私は言わないよー。舞桜が気付かないといけないことだしね」
とよくわからない事を言ってぐらかされた。
しばらく静かに座っていると始業式が始まった。
「えー、皆さん春休みはどのように過ごしましたか――」
…いつものようにつまらない校長先生の話が始まる。
校長先生の話を要約すると、いつものこれだ。
ここ数年、「見えちゃう人」と悪霊が増えてきて、ついに社会問題として認められましたーだの、
対策として除霊師なんて職業を国が作りましたーだの。
で、その除霊師は国際資格扱いになっている。
そして「除霊法」っていうよく分からない法律さえ守っていればわりと何でもアリな権限を持てます、と。
……とはいえ、そんな凶悪な霊が毎日ポンポン出てくるわけでもない。
今じゃ除霊師は調査や護衛、はたまた簡単な逮捕まで請け負う何でも屋。
さらに武装まで許可されたおかげで、世の中は守りやすくなりました。
でもその代わり、同じだけ危ない世の中にもなりました。
そりゃ武装を許したらそれを悪用する人が出てくるに決まってるよね…。
で、ここ除霊高は、そんな除霊師予備軍を育てる学校です。
だから皆さん、自覚を持ってしっかり学びましょう――と。
……毎回、よくもまあ同じ話を飽きもせず喋れるものだ。
この時の私はそんなのんきなことを考えていた。




