第1話 ものづくりって、とっても楽しいですよね。わくわくします。
ミネルヴァとアトラス。魔法の粘土をこねて、大きな箱の中に入れて持ち歩くことができる、この世界のどこにもない小さな大陸をつくろう。
ものづくりって、とっても楽しいですよね。わくわくします。
「うわー、すごいですね。これ、全部手作りなんですか? どうやって作ったんだろう? 作っているところの風景も、材料や道具が全然想像できません」
ミネルヴァは大きな瞳をきらきらさせながら、大きな部屋の中央にぷかぷかと浮いている小さな大陸を覗き込むようにしてそう言った。(小さな大陸の下にある古風な机の上には大きな箱が開いたままで置いてあった。どうやらこの小さな大陸はこの箱の中に入っていたみたいだった)
浮遊大陸というよりは大きなスコップで神様が大地を崩れないようにきをつけながらそのままよいしょと言って持ち上げたような大陸だった。(木々の根っこや色の違っている地層やいろんな鉱物などの地下資源、水や石油、ぼんやりと明るく光るマグマなどもそのままになっていた)
小さな大陸は本当によくできていて、まるで本物の大陸を魔法でこの大きくて立派な部屋の中に入るくらいの大きさに小さくしたような感じだった。
なにもかもが本物に見えて、『命があるようにすら思えた』。
それから小さな大陸にはちゃんと時間が流れていた。
大陸の上には風が吹いていて、(どこから吹いているか不思議だった)緑色の木々や草。そして色とりどりの花を揺らしている。風は強く吹いているところもあって、小さな大陸のはじっこを囲むようにしてたっている青色の山々(まるでここまでが世界ですよって言っているみたいな壁のような山々だった)の上にある大きな白い雲をゆっくりと動かしていた。天気も変わって、雨が降っていたり、霧が出ていたり、雪が降っているところもあった。小さな大陸の空に浮かんでいる小さな眩しい太陽は大陸を照らしながらやがて大陸の下まで沈んでしまって、そのかわりに今度は月があらわれて、(太陽と月は大陸の上と下をぐるぐると交代しながら回っていた)小さな大陸の周りは夜になって、たくさんのきらきらとした星が薄い紫色の夜の中にぼんやりと浮かび上がるようにして、見えるようになった。
小さな大陸には四季もあって、その四季は交代するようにではなくて、小さな大陸の東西南北に同時に訪れていた。(東が春で北が冬みたいになっていた。その四季は時間の経過と一緒にぐるぐると小さな大陸を回るようにしてゆっくりと変化していた)
小さな大陸の真ん中のところには赤い屋根の美しいお城があって、その周りには城壁に囲まれている大きな赤色の屋根の建物の街があった。
その大きな街の周りでは黄金色の麦畑が広がっていて、それから野菜などの食べものを育てている畑もあった。
馬や羊。牛などを飼っている牧場もあった。
それだけではなくて、天馬に一角獣。それからグリフォン。それと名前はわからないけど、『初めて見る不思議な形をした綺麗な芸術品みたいな動物たち』が小さな大陸の中では普通に元気に遊ぶようにして、いろんなところで動いていた。(果実を食べたり、水を飲んだりしていた)
だけど『人はどこにもいなかった』。たくさんの小人がお城や街で生活をしていても、全然変じゃないのにどこにも人はいなかった。(そのことがむしろ変に思えた)
小さな大陸を囲んでいる青色の山々からは小さな川が流れていて、大きな森のところには、大きな湖もあった。
自然が豊かで、清らかで、神聖で、なんだかとっても美しい大陸だと思った。
でも、どんなに目をきらきらとさせながら、心をわくわくさせて飽きることなく小さな大陸を眺めていても、その大陸がこの世界のどこにあるのか、それが全然わからなかった。
世界のすべての形を(古代からの時代の変化も含めて)覚えているミネルヴァはそのことが不思議だった。
この小さな大陸は、誰かの創造した架空の大陸なのだろうか? それともこの世界には私の知らない世界がまだどこかに(こんな風にして、箱の中に入れられていたりして)隠れていたりするのだろうか。(もしそうだったとしたら、すごく嬉しい。やっぱり世界は私の頭の中に入りきらないくらいに広くて大きいということだから)
そんなことをにっこりと楽しそうに子供みたいな顔で笑いながらミネルヴァは思っていた。




