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痰カスと言う名のエッセイ

【悲報】俺氏、また一つ歳を取る

 今日、ファイナルファンタジーⅩを人生初プレイしました。



 コマンドRPGが死ぬほど苦手な俺は、まずブーストモードをONにして、ティーダとユウナとアーロンのスフィアをカンストさせて、しかも常に進行スピード四倍という至れり尽くせりの中で、少しも休憩を取らずぶっ通しで20時間プレイすることでなんとかクリアしたのですが。



 とても面白かったです。



 数多くの配信者がプレイ動画を上げる中、一切のネタバレを食わずに生きてこられたのは、それでも一応は購入して「いつかはプレイしてみたい」という野望のもと、外付けHDDの肥やしになっていたことが功を奏したとおもいます。



 そんなゲームが、実はたくさんあるのです。



 過去、幾つものコマンドRPGを投げてきた俺ですが、下手をすれば初めてこのタイプのゲームをクリア出来ました(アクションRPGは大好き)。また一つ歳を重ねる前に何かしらのヴァージンを破れたということで、一抹の達成感に打ちひしがられています。



 少しばかり感想を述べるのであれば、ワッカがあまりにもレイシスト過ぎて、リュックがアルベド族をカミングアウトするタイミングが凄く怖かったです。一番好きなシーンは、ティーダがユウナに謝ることを決意するシーンです。



 あっは!



 そんなワケで、別に俺が望んだワケではなく、かと言って誰かが望んだワケでもなく。全然頼みもしないのに、明日には律儀に29回目の誕生日が来ます。



 小学生の頃は、アラサーの俺はなんとなくサラリーマンをやっていると思っていました。中学生の頃にも、なんとなくサラリーマンをやっていると思っていましたし、高校生の時にも大学生の時にも以下同文。



 しかし、蓋を開けてみればアラサーの俺はちっともサラリーマンじゃありませんでした。ここにあるのは、社会に馴染めず、結婚も出来ず、少なかった貯金すら直近一年ですべて医療費と生活費に注ぎ込んだ哀れなタクシードライバーの惨めな姿でした。



 こんなハズじゃなかった。



 ……のかなぁ。



 今になって思い返してみれば、俺は元から自分の運が悪いことなんて分かっていたし、昔っから成功している人に比べてちっとも努力してないし。だから、当然の結果といえば当然なワケで、その怠惰な期間(というか今も)が幸せじゃなかったかと言えばそうでもないワケで。



 なんなら、楽する道を模索して試した結果、謎の地雷を踏み抜き続けてズルズルと今の位置にまで落ちてきてしまったモノですから。「報われたかった」とか「俺にだって幸せになる権利はある」とか、そういう感性は既に枯れ果ていて、アホ面ブラ下げながら「今の生活が死ぬまで続くならいいかな」と思うようになっています。



 まぁ、もちろん続かないんでしょうけど。ここまでのあらすじは、過去の痰カスをチェックということで。



 来年には、アラサーでなくサーになってしまいます。残念ながら魔法使いにはなれないようですが(女に見向きもされない期間が長くリセットされてる可能性あり)。サーだなんて、まるで勲爵士(ナイト)でも授かったような呼ばれ方をするのであれば三十歳になるのも悪くないかもしれません。オープンワールドなんかでも、俺は魔法使いより脳筋を好みますしね。



 つまり、何が言いたいのかと言えば、今年が最後の二十代であるということです。



 俺には知識がないので感覚的に物を言いますが、きっと俺はまともな会社でまともに働く人間にはなれないでしょう。現代がどれだけ就職リベラルを語っていたって、やはり新卒からここまでの期間に培ったスキルというのは掛け替えのないモノであり、俺にはそういう蓄積がないワケですからね。



 もしも俺が会社の人事部だったならば、やっぱり俺みたいな人間なんて絶対に採用したくありません。そして、俺は一般的な社会人より二つ、三つくらいは格の落ちる人間です。なので、そのレベルの人間が感覚的に採用したくないと思う人材を、一般的な感性を持つ社会に揉まれて頑張ってきた人間が「採りたくないなぁ」と思うのは当たり前なワケです。



 残念でしたね、夏目君。キミの人生、一生うだつは上がらないよ(笑)。



 しかし、それでも幸せに生きてしまうのが夏目くちびるのいいところなんじゃないかなぁと、俺自身は思うワケです。



 どうやら、俺氏が思う「贅沢」とはお金ではなく「時間」のようです。これもアスペチックで自閉症チックな人間の感性なので本当に信用しないで欲しいのですが、とにかく俺はコンテンツを消費して何かを追体験することが至上の幸福であると捉える人間なのです。



 色んな怪我や病気をする前に思っていたのは、お金があると安心するというくらいのモノで。もちろん、貯金の最たる利点はこの心の余裕なんだろうとは思いますが。ぶっちゃけ、無ければ無いで「しゃーない」と思ってしまえる精神性を獲得しているワケであります。



 逆に言えば、焦らなくなったのだと思います。本当の意味で一生うだつの上がらない人生を歩むのだろうと覚悟した人間は、滅多な事では自分のことで焦ったり取り乱したりしないものくぁwせdrftgyふじこlp。



 来年の今頃の俺君は、果たして何をしているのでしょう。



 そんなことを思い続けた二十代。着実に悪い方向へ向かい続け、いつの間にかポジティブな考え方を忘れていって、周りの友達が幸せになる姿を見送って、無理矢理に孤独を謳歌する時間の連続。何かに期待して裏切られ、繰り返すうちにいつの間にか期待することも忘れてしまったようです。



 きっと、今年もそうなのでしょう。



 誕生日になったからといって、運気が回ってくるだなんてナイーブな考え方は持っていません。他人にとっては平日で、なんなら俺にとっても平日な8月20日。ケーキを食うこともプレゼントを貰うこともせず、読みかけの小説を読み、飽きたらブレーキング・バッドの続きを眺めるのでしょう。



 それでもこのエッセイを書いたのは、やっぱり強がりの気持ちがあるからなのでしょう。



 痛風のクセにレモンサワーをガブガブと飲みながら、酔っ払ってこんがらがった頭の中に、冷静ならば絶対に考えない妄想めいた願望が閃いてしまうワケです。もう諦めているハズなのに、未練がましく「健康に働けて寂しくない程度の人間付き合いが手に入ればなぁ」と求めてしまうワケです。



 あぁ、書いてて涙が出そうだ。



 けれど、もしも少しだけ。明日の朝の、二日酔いの頭の中にほんの少しだけでも今の願望が残っていたのなら。今日まで自殺せず生きてきた自分へのご褒美として、財布に残った少ない金でショートケーキを買い、読みたかった本をハードカバーで買ってあげようと思います。どこか、人通りの多い場所を散歩して、カフェでコーヒーでも頼んで、ゆったりとした時間でもプレゼントしてあげようと思います。



 もしかしたら、それが嬉しくってメンタルがいい方向へ向かうかもしれませんし、同じことを毎月するために金を稼ぐエネルギーが湧くかもしれません。更には、いつか大切な誰かが出来たとき、その人と一緒に同じ場所へ行って幸せを共有出来るかもしれません。



 だから、今日は潰れてしまうまで飲もうと思います。



 幸い、今夜は雨が降っています。どこかへ出かける気にはなりません。キャバクラだのガールズバーだのへ行って、惨めったらしく悩みを聞いてもらうことはないでしょう。28歳の最後の日を、この心地よく感じてしまう冷たい寂しさを、一人で噛み締めて大人していることでしょう。



 そうして、今までの人生を振り返ったりして。明日に控えた誕生日を楽しみにして。28歳までは何もなかった平日を、初めて特別な記念日にしてあげてもいいんじゃかいかなぁと。そんなふうに考えた最後の心を、ここへ書き残しておこうと思った次第であります。



 誕生日おめでとう、俺。

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[一言] 誕生日、おめでとうございます。 この一年は、より良い年でありますように。
[一言] 誕生日おめでとう!  おめでとう!!
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