後編
後ろで扉を叩く音がする。合カギは予め隠してある。私が眠る前に開くことは無いだろう。10歳の身体に徹夜はキツい。コーヒーが無ければこの時間まで持たなかっただろう。
「…私が彼らを殺した理由は、私が殺されたことによる復讐である」
こう呟いた瞬間、卓上の魔導器が赤く光った。
危なかった。捜査官に動機を聞かれれば怪しまれていた。
別に自分が殺された事はどうでも良かった。前回だって卒業パーティーで王籍離脱を表明するつもりだった。
しかし、私が首を切られた後。
私が最期に見た光景。
それは私同様に首を切られた彼女の顔だった。
母を失い、派閥も無くした私に唯一優しくしてくれた人。低位貴族で虐げられていた彼女は、それでも前を向き、その姿は私に生きる喜びを与えてくれた。彼女が側に居てさえくれれば他には何も要らない。学園では彼女と他国で生きて行く準備をしていた。そして迎えた卒業の日。
…彼等は私の全てを奪った。
私は寝台に横たわる。
今生では彼女に手出しはしない。どこに居るのかも分からない。迂闊に近づくと、どこでどうなるか分からないからだ。
心の中で何度も懺悔する。
ごめんなさい。
済まなかった。
私のせいで貴女を死なせてしまった。
赦して下さい。
貴女を害した奴等は全員殺しました。私も今から後を追います。これで貴女を害した者は居なくなります。
ただ心の中で、貴女を想う事だけは許してくれないでしょうか。
私は彼女を想いながら死への微睡みに身を任せた。
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