スリーブラックゲーム2
小笠原、古谷、児玉の順に、頭も固定されていた椅子から上半身だけ自由になる椅子に殺人鬼により移され(殺人鬼は頭から麻袋をかぶっていた)円卓の上で命をかけて始まったのは、スリーブラックゲーム。
プレイヤーの児玉、小笠原、古谷にはラムカードという現在、過去、未来を示す三枚のカードが一枚ずつ配られていた。
今、児玉が現在のカード、小笠原が過去のカード、古谷が未来のカードを持っている。
プレイヤーとディーラーを務める小田切はプレイヤーがどのカードを持っているかを知ることが出来る。
親(殺人鬼)はターン終了まで知ることが出来ない。
親は羊を狩るオオカミとして毎ターンごとに一度、現在、過去、未来を選びコールする。
カードは現在が十秒、過去が二十秒、未来が五秒と時間が振り当てられている。
今、オオカミがコールしている時代は過去。
プレイヤーはオオカミがコールした時代にカードに振り当てられた時間が過ぎるタイミングでカードの交換を終えなければならない。
タイミングに合わせてカードの交換を終えなければ全員ゲームオーバーとなる。
カード交換が終わると次のターンとなる。
同じカードを次のターンに持つことはできない。
ゆえにカードの交換は必ず行わなければならないのだ。
誰に誰がカードを渡すかはターン中に相談出来る。
三人は取り敢えず、分かりやすく全ターン、時計回りにカードの交換を行う事にした。
ゲームの制限時間は三分間。
三分後が全ターンの終了を意味する。
制限時間外にオオカミがコールした時代のラムカードを持っていた者に、殺人鬼により死がもたらされるのだ。
ディーラーの小田切が腕時計の針をにらみながら二十数えている。
今、数え終わる。
プレイヤー全員が瞬時にカードを交換した。
上手く次のターンに移ることができた。
小田切がチェンジとコールする。
カードの交換がされたことを親に伝えたのだ。
こうやってタイミングを合わせてゲームを続けなければいけない。
もたもたしてはいられない。
プレイヤー全員の瞬発力、判断力が試される。
心臓が止まりそうなゲームだ。
今、現在のカードが古谷に、過去のカードが児玉に未来のカードが小笠原に渡っている。
先ほどのディーラーのチェンジの合図でオオカミがコール。
時代は未来だ。
未来は五秒。
小笠原がカードを児玉に素早く差し出す。
児玉は小笠原の顔を困惑の表情を浮かべて見る。
過去のカードが小笠原へ、現在のカードが古谷へ。
今の時代は現在。
ディーラーが十秒を数えている。
プレイヤー皆が緊張した面持ちでカード交換のタイミングを待つ。
ところで、児玉の目の横の小笠原。
胸の黒いネームプレートには小笠原と書いてあるが顔が違う。
どういうことか。
そのことに気が付いた児玉の眉間に皺が寄る。
児玉が余計なことを考える間も無くチェンジが終わる。
オオカミが未来をコールする。
ゲームは順調に進んでいた。
時間は制限時間まで残り二分を切っていた。
今、ディーラーが二十秒を数えている。
時代は過去だった。
短いが、与えられた二十秒という時間はゲームに慣れて来た今、思いのほか人を冷静にさせる。