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カ・え・ダ・ま…………  作者: 円間
7/18

スリーブラックゲーム1

 このゲームを始めれば赤ずきんはオオカミを連れてくる。

 そうして羊飼いは生贄になる。

 過去の羊は鍵を持つ。

 現在の羊は檻の中にいる。

 未来の羊は羊飼いを連れてくる。

 生贄は檻に入れられるとオオカミになる…………。




「助けて!」

 その声で児玉エイジは目を覚ました。

 悲鳴にも近い声を上げているのは同級生の女子。

 小田切雪おだぎりせつのようだ。

 児玉は壁を向いて硬い椅子に縛り付けられている。

 児玉の頭は椅子に固定されていて首を動かすことができなかった。

 なので、目の前の壁以外ほとんど何も見ることができないが、どうやらここは学校の地下のボイラー室の中のようだと児玉にはわかった。

「嫌! 来ないで! あっちへ行って!」

 小田切が泣き喚いている。

「お、小田切さんから離れろ、このっ、化け物っ」

 弱々しくそういう声は小田切と同じく小笠原仁おがさわらひとしのものか?

「俺たちを解放してくれよ! なんで俺たちをこんな椅子に縛るんだよ!」

 児玉の悪友、古谷真也ふるやしんやの声だ。

 古谷たちも児玉のように椅に縛られているのか? 視界が限られた児玉には全く状況が掴めなかった。

「アナタたち自からここへ来たというのに勝手なことばかり言いますねぇ」

 呆れた風に誰かが言った。

 ボイスチェンジャーでも使っているのか機械的な声だ。

「僕は好きで来たわけじゃない。小田切さんだってそうさ。児玉君と古谷くんに無理矢理連れてこられたんだよ」

「なっ! 俺だってこんなしけたところに来たくなかったけど、小笠原が隣のクラスの小田切を好きだから、小笠原と小田切をボイラー室に閉じ込めて、からかってやろうってそう春馬が俺と児玉に……春馬のヤツはボイラー室の鍵開けて中で先に待ってるって。で、来てみたら……春馬が、中で……死んで」

「ハルマ? ああ、コイツならボクが殺しました。正確には、ボクの中のボクがねぇ、クククッ」

「いやぁーっ!」

「いったい何がどうなってるんだよ!」

 児玉がボイラー室で目を覚ましてから初めて言った台詞がこれだった。




 児玉がそれぞれの話を聞いて分かったことは、児玉のもう一人の悪友、春馬文則はるまふみのりが謎の殺人鬼に殺されたこと。

 その殺人鬼に児玉、古谷、小笠原、小田切は捕らえられているということ。

 児玉、古谷、小笠原は椅子に、頭を固定されて縛り付けられている。

 小田切は犬のように鎖で繋がれている状態だということだ。

 児玉は自分に起こったことをまだ信じられないでいた。

「古谷、春馬は本当に死んだのか」

「児玉、気絶する前、お前も見たろ? 春馬のあの有様を。お前には見えないだろうけど、今、俺の足下に春馬の死体があるんだ。死んでる、死んでるよ」

「アナタたちも死ぬよ? もう一人のボクがそろそろ目覚めるぅ」

「いやぁーっ!」

「大丈夫、女子は助かるよ。もう一人のボクは紳士だから」

「え、マジっすか。私が助かる理由が紳士すぎる。サイコパス最高!」

 小田切が弾んだ声を出す。

「あの、僕も助かりませんか? 僕、児玉君たちにいじめられてて、今日も無理矢理連れてこられただけなんで。僕、児玉君たちと死ぬのは嫌だな」

「ちょ、小笠原、お前、ずるいな! ううっ、わけわかんないよ。なんだよ、これ、うっ、うっ」

 鼻をすする音がする。

「古谷の言う通りだぜ。こんなわけわかんないことで死ぬのかよ」

 鼻をすする音が響く。

「アナタたちさ、そんなに死にたくない?」

 殺人鬼の問いに、全員がうんと言う。

「なら、三分間、ゲームやろう。負けたヤツだけ死ぬゲーム。ゲームが終わる、三分後に目覚めるもう一人のボクに殺されるヤツを選ぶゲームを」

 殺人鬼の笑い声が響く。




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