部屋
ぴちゃり、ぴちゃりと音がする。
ぼくの腕から流れた血が、ぬるぬるとしながら、ながいながい管を通り、どこかにたまっていってるみたいで、ぴちゃりぴちゃりと音がする。
くらくて、せまいこの場所に、ぼくはいつもひとり
いつからここに来たのかはもうわからない。
いつまでここにいなきゃいけないのかもわからない。
『お母さん』がご飯を持ってきてくれる。
ふわふわのパンや、美味しいスープ、やわらかいお肉に、みずみずしい果物。そしてたまに蜂蜜菓子も
『お母さん』がぼくのことを褒めてくれる。
すごいね。すごいね。自慢の子だよと褒めてくれる。
なぜ褒められるのかわからないけれど、痛くないからいやじゃない。
『お母さん』はぼくと違う
ぼくは『お母さん』の名前を知らない
名前も知らない人間だけど『お母さん』とよばないと、その人間はぼくの顔をぶつ
大きな声を出しながら、どうしてそんなことを言うのと泣いて、すごく怒って強くぶつ
だけど『お母さん』と呼んで笑ってあげると『お母さん』はぼくをぶたない。
人間の言葉はよく知らないけれど、『お母さん』は人間の親のことらしい
ぼくの親はぼくのことをぶたない
人間の子供はよく知らないけれど、みんなこうしてぶたれるのかな
『お母さん』はぼくのお腹がいたくなると、いたくなくなるまでさすってくれる。
おなかをくだして部屋を汚してしまった時も『お母さん』が部屋をきれいにしてくれたけど、
いっぱい心配してくれて、いっぱい優しくしてくれた。
『お母さん』はぼくの腕に針を差す。
ごめんね、ごめんねといいながら、ほそいほそい針を差す。
針がとてもほそいから、あまりいたくはないけれど、
ぼくの腕から流れた血が、ぬるぬるとしながら、ながいながい管を通り、どこかにたまっていってるみたいで、ぴちゃりぴちゃりと音がする。
ぼくはそのぴちゃり、ぴちゃりという音をきくと、あたまがおかしくなりそうになる
ぴちゃり、ぴちゃりと音がする。
ぴちゃり、ぴちゃりと音がする。




