アルジノンは真っ黒?
アルジノンの愛妾疑惑が浮上してからというもの、
ジュリのアルカイックスマイルに
アルジノンは戦々恐々とする日々が続いていた。
〈まさかバレた!?そんなバカな。いやでも野生の勘が鋭いジュリだからな……〉
何故バレたのだろう。
どうしよう。正直に話して土下座でもするか?
でも認めてしまったらアソコに通うのをやめなければならない、かも?
自分の自分の要求を満たしてくれるあの場所へ……。
いやジュリなら許してくれるんじゃないか?
アルジノンは頭を抱えた。
しかしこれはもともとはジュリの負担が減るようにとの配慮だ。
いわばオトコとしての責任だ。
〈でもジュリは内緒事が嫌いだからなーでもコソコソやってたのがバレて怒られるのも嫌だなー。最初から通う宣言しときゃ良かったなぁー……〉
アルジノンは深い深~いため息を吐いた。
「タバサ、わたし決めたの」
「何がでございます?」
「今夜、ジノン様を尾行する。そしてどこに通ってるのか確かめるわ」
ジュリのこの爆弾発言に
タバサは仰天した。
「な、何を仰ってるんですか!?そんな身重のお体で尾行なんてっ……もしもの事があったらどうされるんですか!?」
「でも、このままの精神状態が続く方がよっぽど
お腹の子に悪いと思うの。あのヘタレチキンは絶対に白状しないだろうし」
ち、あの○◇◎△△野郎が……
タバサは脳内で十数回アルジノンを殺害した。
「お気持ちはわかりますがこればかりは容認出来ません。誰か他の者を使いましょう」
「でも尾行なんてその筋の者じゃないと難しいのよ?」
「ジュリ様はその筋の者ではございませんでしょう」
「わたしは気配を殺すのが上手いもの」
「…………とにかくおやめください」
タバサにそこまでハッキリと言われたら、ジュリも引き下がるしかなかった。
「あーぁ…、わたしにも暗部を動かせたらなぁ」
いくら王族で王太子妃といえども
王家の秘密機関、暗部を使う事は許されていない。
「誰かいませんかねぇ……信用出来て暗部並みの能力の高い人物……」
タバサがそう言った時、
ジュリの脳裏にあの者の顔が過ぎった。
「いた!いたわタバサ!」
「えぇ?だ、誰です!?」
「ふふふ…どうして今まで思いつかなかったのかしら。暗部並みに、いえ暗部以上に使えるあの男を利用しない手はないわ……」
「ジュリ様……今とても悪い顔をされてますよ……
惚れ直しそうです」
「ふふふ……」
「って!来る早々大歓迎で嬉しー♪とか思ったらそんな事企んでるのっ!?」
例の如く
生まれ来る赤ん坊の誕生が待ちきれず、
毎日オムツやオモチャなど
何かしら持参して遊びに来る
大賢者イグリードが呆れながら言った。
「だって、今のわたしはこんなだから動けないし。でもジノン様が本当に愛妾の所に通ってるのか気になるの。お願いイグリード!助けて!」
「え~……まぁ尾行なんてお茶の子さいさいだけどさ、でもあの王子に限ってそれはないと思うけどなぁ」
「そう?そう思う?」
「でも男は下半身は別のイキモノだって言うしなー☆」
「やっぱり怪しいんじゃない!ねえ一生のお願い!
イグリード!」
「もーしょうがないなぁ。他ならぬジュリの頼みだし」
「ありがとう!大好きよ、イグリード」
「調子いいんだから」
そう言ってイグリードは
アルジノンの愛妾疑惑の調査を引き受けてくれる事になった。
……ジュリの自室で。
「……あの~、イグリードさん?ジノン様なら今日の執務も終わって、またどこかへ出掛けてしまいましたけど?貴方はここで何をしているの?」
「何って?尾行だよ?」
「ここで?」
「ホラ見てよ」
と言うとイグリードは
丸い鏡のような物を取り出してテーブルに置いた。
「ホラホラ……」
イグリードが手をかざすと、
鏡の中に王都内の一画で
まさに馬車を降りようとしているアルジノンが映し出された。
「わ……これ魔法?」
「そうだよ♪」
それにしてもアルジノン、
ここで何を?
周辺を見たところ、
ここは住宅街のようだ。
しかもそれなりに裕福な層が住む地域らしい。
アルジノンは馬車を降りると
同乗していたセオドアに何か言って、そのままとある一軒の邸宅に入って行った。
「「「!!??」」」
こ、こ、こんな一軒家に何の用!?
絶対に店舗とかではない、
こんな普通(多分貴族の家だろうが)の家に何の用があって一人訪れた!?
セオドアも連れずにたった一人で!?
「……これは……黒だね☆」
「黒!?何が黒っ!?」
わかっていて認めたくないジュリ。
「ジュリ、ここは娼館だよ。それも上客だけを相手する高級娼館だ」
「高級……娼館……?じゃあ…ジノン様は……」
「もう真っ黒☆」
「やめて!!」
ジュリは思わず耳を塞いだ。
知りたいと願ったのはジュリだが、
こんな真実知りたくなかった。
ホントはアルジノンがそんな事するわけがないと
高を括ってたのだ。
オトコのサガだからしょうがないと言われても
納得など出来ようはずもない。
「……イグリード……」
「何?」
「わたしに認識阻害魔法をかけて」
「へ!?」
「ジノン様からはわたしが、わたしからはジノン様が。互いを全く認識出来ないようにして!」
「ジュ、ジュリ様、落ち着いてください……」
珍しくタバサが慌てている。
「わたしは落ち着いてるわ。でもこのままじゃわたし、確実にジノン様をぶっ殺してしまうわ。生まれて来る我が子のために殺人者にはなりたくないの…!」
「ジュリ、ホントにいいの?」
「いいの。それが一番平和的解決だもの。オトコの生理現象なんて、そんなもの糞食らえだけれど、止められないなら仕方ないわ。だったらもういっそ認識出来なければいいのよ。わたしの知らないところで好きなだけヤッてればいいのよ!」
「わかった♪面白そうだからいいよ☆」
「イグリード様っ!」
タバサが止めるのも聞かず、
イグリードはジュリに認識阻害魔法を掛けた。
この日を境に
アルジノンの目の前からはジュリが
ジュリの目の前からはアルジノンが
ホントは消えてないんだけど
姿を消した……。




