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恋愛初心者、恋をする  作者: 織田 智
婚約初心者
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83話

——は、入らない!!


 ほのかは莉子と一緒にウェディングドレスを見に来ていた。

 先日社員旅行前に莉子にあった時、少し太ったのではないかと言われていたが、あの時はそれほどシリアスにとらえていなかったが、今日それを痛いほど実感していた、

 自分のサイズだろうと思っていたサイズがキツイのだ。


「もう少し引っ張って後ろのファスナー閉まらない!?」

「無理だよ。ビスチェのホックすら閉まってないんだけど」

「だって前はイケたの! このサイズで!!!!」


 フィッティングルームからほのかの必死な声が響いてくるが、そんな彼女とは打って変わって莉子の声は冷ややかだった。


「諦めてもうひとつ大きいのにしな」


 ——嫌だ—!


 細身であるということに絶対の自信を持っていたほのかだったが、それが無くなれば何を支えに心を強く持てばいいのかという程、スレンダーだということを過信していた。


「てか、十分細いんだからいいじゃない。アンタの身長でこんなの普通は入んないよ?」


 と、友人にそう諭されても当の本人は痩せなければという感情に支配されていた、


「……ます」

「何?」

「痩せます」

「いや、痩せなくていいから。十分細いから」

「このサイズを着れるまで身を削ぎます」



 止める莉子の声にも聞く耳持たず、ダイエット生活を始めたのだった。


◆◆◆


「私、今日は昼食持ってきてますのでご一緒できなくてすみません」


ある昼食時にほのかぴしゃりと言い放つ。そう言われると、真木も「わかった」と言ってひとり外に食べに行くしかない。

ほのかは小さく切ったリンゴが入った容器を問いだして休憩室でシャクっと噛んだ。


「あぁ……辛い」


思い返せばこの2日間1日3個のリンゴしか食べていない。実に女性が1日に必要な栄養素の10分の1しか摂っていないのだ。

ぐうとお腹が鳴ればはちみつ入りの紅茶を飲むと、空腹を忘れられるためそれを1週間続けた。


「週末どこか行きたいところある?」

「え? 週末ですか? ……あ、誕生日か」


 休憩室でリンゴを食べていると、お茶を淹れにきた真木に聞かれてはっとした。自分の誕生日を忘れる程に頭の中はダイエットでいっぱいになってしまっていたことに驚く。


「うーん。水族館とか行きたいですね。でもプランナーさんと話しもしなきゃだ……」

「てか、少し顔色悪くないか? 大丈夫?」


 満足な食事が摂れていないと知られれば絶対に怒られると分かっているので、「今日はちょっと生理中で……」と言って凌ぐ。生理中は本当だが、いつもはあまり表に出ないので空腹からくる体調不良で顔に血色が無いのが現れているようだった。


「じゃぁ昼にプランナーと話をできるように予約しておくよ。夕方から水族館に行くのでも遅くないだろ」

「楽しみにしてます!」




 帰宅後に体重計に即乗り。からのボディアタックを30分の後リンゴ1個を食べるのみ。


「微妙にしか痩せてない……」


 そう言いながら友人の莉子から来たメッセージを返していた。


 “無理なダイエットとかしてない?”と、エスパーかなと思わせるようなメッセージが来るが、大丈夫だよ。“健康的に痩せるようにしてるから“と返す。


 ——莉子、嘘ついてごめん! でも私にとって死活問題なの!




 そんな中ウェディングプランナーとの打ち合わせをして、さあ移動しようと椅子から立ち上がった時に大きな立ち眩みが襲った。


 目の前が真っ白になって、平衡感覚が一瞬消えると足元がもつれてその場でコケてしまった。


「ほのか!」

「山崎さま!?」



 一緒に座っていたふたりの声が聞こえるが、こけた拍子に打った膝が痛い。


「すみません。大丈夫です」


 いててと言いながら立ち上がろうとするが、上手く力が入らないようだということに気づく。


 ——あれ、ひょっとしてちょっとマズいかも!?


 


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