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恋愛初心者、恋をする  作者: 織田 智
恋愛初心者
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28話

 みんなで集合写真を撮った。そしてこのあとめちゃくちゃはしゃいだ。

 あんなに泳ぐのを嫌がっていた真木をみんなで海に引き入れたり、ビーチバレーをしたり楽しい時間はあっという間に過ぎていった。


 日も傾き始めた頃に誰が言ったわけでもないが、そろそろ旅館に戻り始める。


 散々はしゃいだ後で温泉にも入って、夕食前にみんなで飲もうと話しをしていた時にほのかはあることに気づいた。


 ――スマホが無い!! 海から戻ってきてから見てない。絶対ビーチだ!


「由香里ちゃん私スマホ忘れたから、先に行ってて」


 ぱたぱたと走っていくほのかを見た三國が「山崎さんどこ行ったの?」と由香里に尋ねる。「お風呂。スマホ忘れたんですって」と返した。


 当の本人は風呂場には向かわず、夕焼けで赤く染まりかけた海岸へとひとり走って行った。


 昼間はあんなにも賑わって色とりどりのビーチパラソルを咲かせていた海岸も、傘が閉じられて、砂浜に寂しそうに並べられていた。

 

 パラソルが取り払われた場所もあり、昼間自分が座っていた場所の目星が付けにくくなっていた。恐らくこの辺だろうという場所にしゃがみ込んで砂を掻きわけるが、なかなか見つからない。


「ないー! どこー?」


 誰もいなくなった海岸でひとりごちった。

 水平線を赤く照らしていた光は次第に陰って手元がだんだんと暗くなってくる。もう諦めて明日の朝から探そうかと思っていたその時、聞き覚えがある着信音が近くから聞こえてきた。

 

 音が聞こえる場所の砂を少し掻き分けると、透明な袋に入ったスマホが出てきた。


 煌々としているスクリーンを見ると『真木先輩 プライベート』と表示されていた。


「もしもし」


 着信に応答したが、向こう側からは何の音も聞こえてこない。

 と、その時スクリーンを眺めるほのかの頭が何者かによって鷲掴みにされた。


「”もしもし”じゃなくて、お前はこんな所で何をやってるんだ」

「痛いです」


 話しを聞くに、風呂から上がった真木が外に走っていくほのかを見たが、なかなか戻らないので見に来たようだった。


「免許証の次はスマホか? よくそれだけ落とすな」

「そうですけど……そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」


 鷲掴まれた手を掃ったとき、腕がひどく汗ばんでいた。ほのかを探すのにそこら辺を走ったのだろう。


「すみません。じゃなくて、ありがとうございました」


 少しふくれっ面になったが、正論過ぎて何も言い返せなかった。


「早く戻るぞ」


 真木も安心した表情を見せて、踵を返した。

 そしてほのかも続いて歩き出そうとした瞬間、畳んであったビーチパラソルにつまずいて前を歩いていた真木を巻き込みながら砂浜に倒れこむ。

 

 思わぬ衝撃に真木も振り返りながら、半ば彼女を受け止めるように砂浜に倒れこんだ。ふたりの体は柔らかい砂にばさっと着地する。


「何で次から次へとトラブルを起こすんだ」


 広い肩に顔を埋めながら「すみません」と言うしかない。

 倒れこんだ体をゆっくりと起こしながらその動きを途中で止める。そして真木の目を見つめながら「先輩」と含みを持たせながら言った。

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