仲間です
ギルド長室を出たトジカとカイリの二人はひとまずこれからのことを話し合うことにした。
二人は空いてるテーブルを探し、そこへ座った。さっきの戦闘のせいで人が減っていたため、比較的すぐに空いてるテーブルは見つかった。
だが残念なことにどちらも引っ張っていくというタイプではなく、話を振られそれに答えるというタイプだった。そのため席に着いた二人の間で会話は生まれず、代わりに沈黙が生まれていた。
「え、えっと、自己紹介でもしますかね……」
「そうですね」
「じゃあ僕からしますね。僕はC級冒険者のミノキ・カイリといいます。……ギルド長は強い固有魔法を持ってるとかいってましたけど、全然戦えませんので、本当に見てるだけになると思います」
「わかりました。まあ、私は強いですから大丈夫です」
「……まあそうですよね。ギルド長だって君を見て学べって言うほどですし、それにグリズさんやさっきの人倒してましたからね……」
「じゃあ私も自己紹介するのです。私はローエス・トジカといいます。肉弾戦が得意です。よろしくです」
「はい、よろしくお願いします」
話はそこで途切れ、また沈黙が生まれた。
中途半端に話が途切れてしまうと話を再開するのは難しい。特に二人とも受け身タイプだった場合はなおさらだ。
そしてトジカの頭の中の九割は仲間ができたという喜びで支配されてしまったいたため、元々の目的であった、これからのことについて話し合うということを忘れてしまっていた。
カイリの方はこの状態を気まずく感じ、なんとか話を振ろうと考えるが、何を話せば良いか上手く纏まらずにいた。
そうして三十分ほど時間がたった頃、ようやくトジカの頭は落ち着き、本来の目的を思い出した。
「すいません、完全に意識飛ばしてたのです」
「あっ、いや、こっちも何も話せなくてすいません……」
「ではこれからのことについて話しますか」
「あっ、その前に確認したいんですけど、本当に僕と一緒に行動するの、良いんですか? 僕、本当戦えないし、もしかしたら君の邪魔をしちゃうかもしれませんし。もし嫌なら僕からギルド長に頼みますから」
「全然大丈夫です。むしろうれしいです」
「うれしい?」
「はい。私仲間をつくるってのに憧れてたんです。だから私、ギルド長に貴方と一緒に行動してって言われたとき仲間ができたって結構興奮してたんです。憧れてたことが叶ったて。だから嫌じゃないです。むしろこちらのほうからお願いしたいです。……それとも、もしかして貴方が嫌でしたか……」
トジカは不安そうな顔をしながらそう言った。彼女の目は少し潤み始めていた。
カイリは急いでそれを否定した。
「いや、そういうわけじゃないです」
「それは良かったです。では、これからよろしくです」
トジカは嬉しそうにそう言った。
カイリは若干照れつつ、噛まないようにと返事をした。
「こちらこそ、これからよろしくお願いします」
* * * * *
その後二人は話し合い、ひとまず最初は簡単なクエストを受けることにした。
現在二人が受けることができるクエストの中で、簡単なものは「スライム退治」と「ゴブリン退治」、「薬草採取」などがあった。
「カイリ、どれを受けたらいですか?」
「えっと、トジカは戦いたいんだよね?」
「はい、戦えるほうがいいです。あっ、カイリは戦わなくて大丈夫です」
「ありがとう。えっと、トジカは肉弾戦が得意だから……、スライムは物理攻撃が効きにくいから、ゴブリン退治の方が良いんじゃないかな」
「分かったです。じゃあそれを受けるのです」
トジカはそう言うと「ゴブリン退治」のクエストを受けることをノンへ伝えに行った。
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