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初クエストです①


「えっと、トジカは肉弾戦が得意って言ってたけど、何か武器は使わないの?」

「使わないのです。私の拳でなんでも吹っ飛ばすのです」

「そうなんだ。じゃあトジカの固有魔法は身体強化とか、そういうやつなんだ」

「?」


 そのときトジカは不思議そうな顔をしたが、カイリはそれに気づかなかった。


 トジカとカイリの二人は西門から街を出て、近くの森へ向かった。

 西門はトジカがこの街に入った門とは反対側で、こちら側にある森は魔獣はいるものの、そこまで多くなく、気をつけて進めば安全に抜けられる森であった。ただし、それでも魔獣が出るのには変わりはなく、また少なからず被害が出るため、冒険者ギルドへその森の魔獣退治の依頼が出される。

 依頼の中には年中出されているものがあり、それがゴブリンやスライム退治の依頼だ。これらは数が多く、繁殖スピードも早いため、いくら倒しても全て殺しきることができない。いっそ森ごと全てを焼いてしまえば全て殺してしまえるかもしれないが、その森にはポーションなどの材料になる薬草が数多くあるため行われることはなかった。


「ゴブリンはどんなところにいるんですか?」


 森へ向かう途中、トジカはカイリへ聞いた。


「ゴブリンは結構色んなところにいたりするけど、この森だと木の上に隠れていることが多いね」

「なんで木の上にいるんです?」

「ここは通り道としてよく使われてて、荷物とかを運ぶのにもここが使われたりするんだ。ゴブリンたちはその荷物の中の食糧を狙って、木の上から奇襲してるんだ」

「なるほど。それで木の上によくいるのですか」

「そういうこと」


 二人は森へ到着すると森の奥には入らず、さきほどカイリが言っていたところでゴブリンを探すことにした。理由としては、トジカはこの森に入るのは始めてだということとカイリは戦力として来ていないため、あまり森の奥に行ってもし危険な魔獣に出会ってしまった場合のことを考えてだった。


  *  *  *  *  *


 しばらく道を歩いていると突然トジカが近くの木へ向かって走り出し、その木へ思いっきり蹴りを入れた。

 木は揺れ、葉っぱがパラパラと落ちてきた。小枝も落ちてきた。木の実も落ちてきた。ゴブリンも二匹落ちてきた。


「ゴギャッ!」

「ギャ、ギャッ!」


「やっぱりいたのです」


 トジカはそう言いながら、逃げようとするゴブリン二匹の頭を捉え、そのまま地面に叩きつけた。

 砂埃を立てながら、ドカンっと音が鳴り響いた。


「ゴホッ、ゴホッ。ト、トジカ?」


 カイリは砂埃にむせながら、トジカの名前を呼んだ。


「はい、なんですか?」


 返事はすぐに帰ってきた。

 カイリが声の聞こえたところへいくとそこには頭が綺麗になくなったゴブリンが二匹と血まみれになったトジカがいた。

 その光景に若干引きつつ、カイリはトジカへ話しかけた。


「よ、よくゴブリンがいるって分かったね……」

「あの木だけ他の木とは違う臭いがしたのです。カイリはしないのですか?」

「いや、僕は身体強化の魔法は使えないから……、ちょっとそういうのは分からないな」

「身体強化の魔法?」

「トジカは身体強化の固有魔法やそういう系の魔法を使ってるんでしょ。だからあんなすごいパワーが出さるんでしょ」

「ん? ん? うん?」


 トジカは何回も首を左右へ傾けながら何か考え始めた。そして急に分からないことが分かったように、「そういうことですか」と言った。


「そういうことって?」

「さっきからカイリが固有魔法とか身体強化の魔法って言ってて、どういう意味だろうと思ってたんです」

「ん? だってそうじゃないの?」

「カイリは勘違いをしているのです」

「勘違い?」

「はい。トジカは魔法なんて使ってないです。というより使えないのです」


「えっ!」


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