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愛の物語 If~未来の僕たちへ~  作者: タムタン
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決意 (1)


ノリタケは足に力が入らない。膝をつき、手を地につける。だが、目を離すことが出来ない、まるでそのアンクレットがノリタケの視界を支配し、コントロールしているかのように。何度見直しても、何度間違いを探しても、現実はノリタケの心を蝕み続ける。だがなぜか希望を求めてしまう、この現実が間違いだと真実が嘘をついていると何度も自分に言い聞かせてしまう。


ノリ「…違うよな?盗んだだけだもんな、な?」


ノリタケは存在しない他者に問いかける。いや、先ほどまで動いていたこの物体に問いかけていたのかもしれない。ノリタケはこの現実に溶け込むことが出来ず、ずっと分離し浮遊し続けていた。こんなことありえない。確かにいままでは幸せであった。何一つ不満もなく村の人々と助け合うのを生きがいに充実した、まっとうで真面目な人生を送ってきたはずである。過ちは犯していない、間違ったことは必ず友が、村の人々が、アマリアが、すぐに諫めてくれたはずである。それなのに、


ノリ「そうか、やっぱり夢なのか」


ノリタケは歩みだす。目的もなく、只々彷徨うように。

これは偶然か、それとも神の慈悲なのか、雨が降り出し血に濡れたノリタケの体を清めていく。それはまるでノリタケを憐れむこの世界の涙のようにも見えた。雨音が世界の音を遮断しかき消してしまう。ノリタケは孤独な世界で一人森の中を進んでゆく。ノリタケの頭には懐かしい思い出が駆け巡る。幼き頃に失った愛深きノリタケの両親、共に泣き共に笑い時にぶつかり合った大切な友達、いつも柔らかく優しく導き見守ってくれた村民、そして


ノリ「…ッツ!?」


突然ノリタケの腕に痛みが走る。腕を抑えるとそこには1本の矢が…。人の慄く声がする。ノリタケはゆっくりとそちらに顔を向ける。そこには4人ほどの屈強なヒュマニ達が。この森周辺には研究所からでてきたマコであった物のようなものがたくさんおり、彼らはノリタケのことを魔物同然の知能がない危険な獣人であると判断してしまったのであろう、彼らはノリタケを人間とは判別しなかった。できなかったのである。

ノリタケは逃げ出した。必死に走り出した。痛む腕を押さえ、天敵に見つかったネズミのように走り出す。うまく息が出来ない頭も回らないこの状況。その瞬間、気づいた。


ノリ「…なんで、逃げてるの?」


突然世界の旋律が変わった。激しかった雨音は感じなくなり耳鳴りがする。ノリタケは走るのをやめ、ゆっくり振り向く。遠くからは先ほどのヒュマニたちが自分を追いかける気配がする。その気配が救いに見えた、この残酷な世界から抜け出せる唯一の風穴。ノリタケは目を閉じる。


ノリ「……助けて。」


ノリタケは近づいた、その風穴に、救いを求める者に贈られた、神からのギフトに。

その瞬間、何かに包まれた。雨で、そしてこの現実によって冷え切ったノリタケを暖めるかのように。

ヒュマニたちが通りすぎる。まるであんなに恐れていたノリタケが見えていないかのように。ノリタケはゆっくりと目を開く。光景は先ほどと同じだ。ただ、何かが違う。甘い香り、懐かしさを感じるこの香りは


アマリア「ようやく見つけた、私の愛しい子。」


まるでこの地獄に差す一筋の光を放つかのような、この凍り付いた冷たい現実を解かすかのような慈愛に満ちた表情で、声で、そして手でアマリアはノリタケを包み込む。




ノリ「…ア…ア、アァ…」


ノリタケは声を詰まらせる。


アマリア「…うん」

ノリ「ア、アァ」

アマリア「うん、うん」


ノリタケは涙を流す。まるで母親を訪ね続け、ようやく巡り合うことが出来た少年のように。赤子のように声を上げて泣き出す。アマリアはさらに強く抱きしめる。


ノリ「アァ…、アマ…リア、アマリアぁぁぁぁぁ!」


ノリタケは泣きじゃくる。ようやく見えた希望、ようやく感じた暖かさ、そしてようやく現れた救い。そしてアマリアは泣きじゃくるノリタケをいつまでも、いつまでも離さなかった。


ようやく希望がやってまいりましたね笑

しかし、まだノリタケは救われてはいない。ここからどうなっていくのでしょうか。

それではこのようなつたない文章でも読み切ってくださった心優しい読者の皆さんへ

よいお年をお迎えください。

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