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愛の物語 If~未来の僕たちへ~  作者: タムタン
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試練 3

ここで考えてみてほしい、地獄とは一体何なのだろうか、どの様な場所なのであるかということを。灼熱、悲鳴、血まみれ、死体だらけ。ノリタケは現在、想像しうる限り地獄に一番近い世界を現実にて体感している。

村に近づいた瞬間感じる鼻につくような生臭いにおい、どこからかも分からない悲鳴の数々、ノリタケは逃げ出したくなった。しかし、逃げるわけにもいかない。聞こえた悲鳴の中で一番近いものの元へ駆け出すとよく知る顔、マサおばさんが…転がっていた。

ノリタケはなりふり構わず彼女の元へ駆け出す。助け起こすと彼女は片目だけわずかに目を開いた。彼女はノリタケを認識すると、震わしながらも右手を持ち上げ、ノリタケの頬を触れる。ノリタケは全身の血が沸々と煮立つのを感じる。彼女の目からは一滴の涙、宝石のようにキラキラ

輝きながら流れ落ちる。


マサ「エ…エスペル、エスぺ…ランザ」


今にも消え入りそうな声で必死に名を呼ぶ。彼女の唯一の希望、我が子の名だ。彼女はどうやらようやく巡り合えた最愛の我が子と離れ離れにされてしまったようだ。いつ死ぬか、いつまで息が出来るかわからないこんな状況で最後まで愛しい、もう生きては会えないであろう我が子の名を必死に呼ぶ。


ノリタケ「マサおばさん‼あの子は、エスペルは必ず見つけ出す、必ず救うから…もう大丈夫だよ‼必ず、必ず、僕が…」


ノリタケは必死に叫ぶ。少しでも安らかに逝けるように、彼女に誓うために。マサおばさんはゆっくりと手を下ろし、目を閉じる。わずかながらも微笑んだように、ノリタケは感じた。

ノリタケは涙を止めることが出来なかった。この高熱に覆われた、水気を少しでも無駄にできないようなこんな状況でも。

マサおばさんをやさしく横たえた後、ノリタケは立ち上がる。正直こんなところで一人にさせるのは心苦しい、だが、たった今与えられた使命を果たすべく彼は走り出す。原因も敵も分からない、そんな状況で。とにかく村の人一人でも救い出さなければ、エスペルを救わなければ、マサおばさんの願いを遂げなければ、彼は現在自分が生きていることを恥じてしまう。

しかし、走れども走れども、住民どころか炎以外の動く影が見当たらない。そのとき、彼の視界に黒き影が動いた。ノリタケはよそ者と確信する。この村は黒い格好をすることは不吉だと禁じられているからである。ノリタケはなりふり構わず飛び掛かる。黒い影の存在は奇襲に反応しきれなかったようでノリタケの攻撃をもろに受ける。ノリタケはとにかく殴り続けた。冷静な判断が出来ず、この現状の原因であるという可能性が少しでもあるというこの存在を攻撃し続ける、それしか脳が回らなかった。黒装束の人間が動かなくなった状態で気づく。この黒い衣服に刻まれた紋章に。ノリタケは見覚えがあった。その紋章は……。また悲鳴が聞こえた、これは…。


ノリ「カコ?」


ノリタケはまた走り出した。猛火で崩れ落ちる家の角を曲がった先に、それは起こっていた。恐怖に打ちひしがれるカコと、力なく脱力するタクジ…であったもの。タクジは大剣に腹を貫かれ、その短い一生を強制的に幕閉じさせられていた。タクジの手からは短剣が滑り落ちる。タクジは喧嘩が強かった。殴り合いだったらノリタケの引けを取らない程度に。そんな彼をいとも簡単に串刺し、絶命させる敵とは。しかし、ノリタケは今冷静な判断が出来ない。敵の姿を確認するなり飛び掛かる。カコが何かを言っているのは聞こえたが、そんなものは入ってこない。敵は一振りが遅い大剣、それを見越してノリタケは相手のスピードを上回る素早さで攻撃を仕掛ける。アマリアの祝福を受けたノリタケには怖いものがなかった。その慢心が、敵に隙を与えた。ノリタケは敵の背後をとらえ、渾身の蹴りを仕掛ける。しかし、その蹴りは空を切ることとなった。その瞬間ノリタケは体重を失ったかのように浮き上がる。いや、正しくはぶら下がる。ノリタケは敵に頭を鷲掴みにされ持ち上げられていた。敵は大柄なノリタケ身長、体格を大きく上回り、ノリタケはまるで赤子のように扱われることとなった。しかし、怒りに身を任していたのが功を奏したのか、ノリタケは恐れなかった。たとえこの場で殺されようが、太刀打ちできない相手であろうが、ここで諦めてしまっては、


ノリ「死んでも、死にきれねぇ‼」


敵はノリタケを放り投げる、その手には少しながらも血が。ノリタケは形見のナイフを握りなおす。過去に死にかけたことなんて山ほどある、その時には必ずこのナイフが懐にあり、このナイフによって活路を切り開いてきた。ノリタケは後ろを振り向く。そこには腰を抜かしたのか、顔面蒼白になりながら身動きが取れていないカコの姿。ノリタケはゆっくりと正面に向き直り、敵を見据える。


ノリ「アマリア、ごめんね」


一呼吸を置き、咆哮を上げ、もう一度飛び掛かる。そこでカコの悲鳴とともにノリタケの意識は途切れた。

ここで序章が終了です。

今のところ序章終章合わせて6章出来る予定です。

結末はもう決めているのですが、早く公開したくて仕方がないです笑

ここからのんびりになりますが、もしお時間がある時、または気になると思った場合はぜひのぞいていただけると嬉しいです!

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