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愛の物語 If~未来の僕たちへ~  作者: タムタン
2/14

いつもの4人

前回の部分のみではどんな物語かわからないので連続投稿します。



さわやかな風と共に灼熱の太陽が大地を照らす。それはまるで太陽神がその土地に生きる者たちを奮い立たせるよう。

ここは王国グランディズムのはずれにある村、キャリメラ村。ここでは毎年の冬にキャメリという美しい花がたくさん咲いて観光名所になるからそう名付けられた。キャメリの大花畑は見事なものなので冬の時期は世界各国さまざまな種族の者達が集まるのであるがその時期以外は基本寂れており、人口も若者四人を除いてあとは老人、中年合わせて二十数名である。


タ「うがぁーー」


少年は突然唸りだす。


タ「やってらんねぇよ!!いつになったら終わんだよ!!」


タクジは血気盛んな若者、地道に畑仕事をするのがつらくて仕方ない様子であった。


マ「うるさいなぁー、余計熱くなるじゃない!」

マナはタクジを睨み、ぐちぐち言いながら雑草を抜き続ける。マナも年頃の女子であり、おしゃれをし、恋をしたい年齢ではあるのだが、この村ではそんな余裕はない。


タ「だってよう、こんな暑い中雑草抜きもう2時間はやってるぜ?干からびちまう!」


マ「それはみんな同じじゃないの!!ねぇカコ?」


カ「そうよ、タク」


カコも目は手元に向けたまま同意した。カコはこのいつもの光景に飽き飽きしながらも穏やかに二人を宥める。


タ「なんだよー!ノリは俺の味方だよな?な?」


ノ「あ、あはは」


ノリタケは困ったように笑った。男同士タクジの味方をしたいところであるがマナの目線が怖いため今回はノリタケはタクジを宥めることにした。


ノ「頑張ろう、タク。あともう少ししたらメシだし」


ノリタケは普段は森へ薪取りや狩りを主にしているため、村で作業をすることは少ない。しかし、最近森の中で大けがをし、しばらく動けないでいたため、なまりまくった体を奮い立たすリハビリついでに安全な村でお手伝いをしていた。


タ「ノリもマナ側かよ!!いいよな、お前はいつもは森の中で涼しくてよお!」


タクジは駄々っ子のように口をとがらせる。


マ「いい加減にしなさいよ!」


マナは般若のように目を吊り上げる。


マ「山は村よりも全然危ないのよ!あんたいつもノリに薪とかお肉とかとってきてもらってるん


だからそんなこと言うんじゃないわよ!」


タ「わ、わかってるって、冗談じゃん…」


ノ「まあまあ」


ノリタケは苦笑しながらマナコを宥める。


マ「ノリも!!」


マナの怒りの刃がノリタケに向く。


マ「アマリアにいつも心配かけて!この前あんたケガして帰ってきたときのアマリアの顔みた?女の子にあんな顔させるなんて…」


というのも、最近ノリタケは山に入った際、危険な存在に襲われ、命からがら逃げだしたものの足の骨を折ってしまったのだ。その為ノリタケは言い返すことが出来ず、苦笑いしかできなかった。


ノ「ごめんて」


カ「マナ、その辺にしておきなよ…」


カコも助け船を出す。


マ「まったくカコも甘いんだから、もう…」


「あんたらー、メシだよー」


赤子を抱えた女性が4人を遠くから呼ぶ。はっと4人は嬉しそうに顔を向け、マナはそれに答える。


マ「マサおばさーん!!」


彼女は村の中でも四人を特にかわいがっている人であり最近高齢出産をしてようやく待望の赤ちゃんに出会えたという幸せの最中なのである。


タ「よっしゃ飯だー!!」


4人は女性の元へ芽を踏まないように畑を駆け出す。


カ「きゃっ!」


後ろでカコが悲鳴を上げる。皆が振り向くと泥だらけになったカコが膝をついている。


ノ「だ、だいじょうぶ!?」


ノリタケがすぐにカコの元へ駆けつけ腕を引っ張って立たせる。カコはまるでつかまった猫のように無気力に持ち上げられる。


タ「おいおい、何をやってんだよカコ」


マ「もー、畑を歩くくらいいい加減慣れなさいよねー」


タクジはカコの腕を支えながらもあきれ、マナは笑いながらカコについた泥をはたく。


「あららカコちゃん大丈夫?」


カ「はい…」


カコはいかにもな感じで落ち込んだ。カコのワンピースは泥だらけとなり、たくし上げた意味がなくなってしまった。


「こりゃあすぐに洗ったほうがいいわね、カコちゃんは私の家においで。あとはタエコさんのとこ行きな。」


「「「はーい」」」



人々にとって食事は生きるための糧であり、労力の目的であり源だ。場面が変わって住民が大きなテーブルを囲んで食事をしている。この村民が少ない村では昼食をいつも共にし、今日も食事をすることが出来た、生き延びることが出来たと神の恵みに感謝をしながらも村人同士友好を深めていた。これも村人同士手を取り合って生きていくための大切な行事だと村の中心で毎日必ず行われる。

たかが食事だといっても村民にとっては恵みであり、数少ない娯楽のようなものだ。その為食事中、特に皆が集まる昼食時はいつもお祭り騒ぎである。マナとタクジはおかずの取り合いで争い、他の大人はその様子を見てケラケラ笑う。その一方でノリタケはなぜかおかずを皿によそいそして一人で村のはずれへ向かう。


「ノリタケ―、マロの餌かい?」


マサおばさんがノリタケに気づく。


ノ「そうです!」


「そうかー、じゃあこれもやりなー」


とおばさんが大皿を渡す。その上には大量の野菜が乗っていた。どうせ食べてくれないさとノリタケが苦笑しながら村はずれにいるマロの元へ向かう。


「ノリタケー!」


カコがノリタケを呼びながらとてとて風に押されるように駆け寄ってくる。


「マロのところにいくの?」


ノ「そうだよ」


カコは茶色のシャツにロングスカートの裾を風になびかせる。


カ「わたしもいく」


ノ「いいけどまた転ばないでね」


カ「転ばないわよー」


カコは口を膨らませながらもノリタケについてくる。

しばらく歩いていると大きく無骨な木製の柵があらわれる。これは村の敷地の範囲を表すものでありそしてこの土地を所有する権力者が最低限に保護する敷地の目印である。この村を保護し、所有する権力者はストロングス家というグランディズム王国での五大権力者一家の一つの一家である。そのおかげで警備も整っており、外からの襲撃も受けたことがない。そして大きな門が見えてくる。その近くの小屋にマロがいる。マロとはノリタケが1年近く前に拾った子犬でえさをやっているうちにどんどん大きくなり、今ではノリタケの手伝い兼番犬をしている。ただ、あまりに大きくなったせいで村の中には入れてもらえず、ノリタケを待つ間は鋼鉄の鎖でつながれなければいけない。


ノ「マロ―!」


ノリタケは小屋へ駆け寄る。中をのぞくと厳重に繋がれたマロの姿が。動きにくそうで可哀想だが、飼育を許可してくれた時点で感謝をしなければいけないとノリタケは考えていた。


ノ「マロ―、餌だぞー」


マロ「グルルゥゥ」


鳴き声はおっかないがどうやら喜んでいるようだ。マロはすごい勢いでご飯を食べまくり、皿を押し戻す。その皿の上にはきれいに野菜だけ残っていた。


ノ「こらぁ!マロ!また野菜だけ残して…」


カ「あはは、ここまできれいに残すのもなかなかすごいわね」


笑いながらマロの頭をカコが撫でる。そしてカコはスカートを風になびかせながらゆっくりと立ち上がる。その足には木の皮をなめしてひも状にし、編み込んで作られたアンクレットがはめられている。


ノ「そのアンクレット、つけていてくれているんだ。」


カ「もちろんよ。こんなにきれいな物もらえてすごくうれしいんだから」


このアンクレットはノリタケがカコの誕生日に贈ったお手製のアンクレットである。このアンクレットの原料はレッセンジャスの大木という村を囲む森の中に存在する希少な大木の皮であり、この木の皮は乾燥、なめしなどの加工を経ると永久に切れることはない。そのため、縁が切れない、運をつなぎ留め続けるなど縁起が良いものとされている。


カ「ねえ、ノリ」


カコがマロに目を向けながらノリタケに話しかける。その目は少し寂しげである。


ノリ「なんだい?」


ノリはカコの表情の変化に少し驚きながらやさしく応える。


カコ「あのね、突然変なこと聞くんだけど」


ノリ「うん、なんだい?」


カコ「…あのね」


カコが不安げにノリタケの目を見る。


カコ「最近悪夢をみるの」


ノリ「……悪夢?」


カコ「そう」


カコがあまりにも真剣な顔で幼子のような話をするものだから少し拍子抜けしてしまった。


ノリ「…ど、どんな夢?」


カコ「……」


カコはなにか躊躇するかのように目を泳がせた。カコは昔から何か隠したり、悪いと思うようなことがあったりするとこうする癖がある。ノリタケはやさしく微笑みながら尋ねる。


ノリ「気になるから教えてよ、ね?」


カコ「うん…」


カコは意を決したような顔でノリを見る。ノリは優しく耳を傾ける。


カコ「あのね」


ノリ「うん」


カコ「…みんながね、離れ離れになる夢を見たの。」


ノリ「離れ離れ?」


ノリが少し興味深そうに聞き返す。


カコ「そう」


カコが詳細をゆっくりと寂しげに語りだす。


カコ「いつも通りにノリは森に、私たちは村でお手伝いをしていたの。でも急に場面が変わって暗くて狭い空間にいてノリやみんなも離れ離れでみんな私を探しているの。なんでそれがわかるかはわからなかったけど」


ノリ「なるほどね」


ノリは相槌を打つ。カコは昔から怖がりでよくノリタケが話を聞いてあげていた。またそんな感じだろうとノリタケは優しく話を聞いてあげる。


カコ「それでね、暗転して気づいたら何かにつかまっていてもうここから出られないってわかったの、なぜかわからないけど。そしたら急に光が差し込んで、それで目が覚めるの」


ノリ「……へ、へえ怖い夢だね」


ノリも少し背筋が冷たくなった。なにせノリタケもカコも暗いところは苦手だ。ノリは昔暗くなった森の中で迷子になり、それ以来トラウマで暗いところや視界の悪いところは近づかないようにしている。


カコ「うん…」


カコは少しうつむきながら言う。長いような、短いような沈黙が二人の間を流れる。二人はほんの少しの恐怖に身をなぞられたような不快感に襲われた。


ノリ「あ、あのさ」


ノリタケは不快感を振り切るために口を開こうとすると、全く違う方向からかき消される。


「ノリー!カコー!なにやってんのー?」


二人はそろって声のするほうを向く。そこにはマナコ、そしてタクジがいた。いつもの顔ぶれに二人は不快感から自然と逃れることが出来た。二人は目を合わせてフフッと小さく笑いあう。すると走ってきたマナコとタクジは怪訝な顔で二人の顔を覗き込む。


マナコ「なによ~、なんの話をしてたの?」


マナコは眉をひそめながら尋ねる。タクジは何か勘違いをしたようでノリタケの首を固める。その目はマジだった。


ノリ「違う違う違う!!」


その日は一日タクジの機嫌が直ることはなかった。



まだ一番のメインキャラが出ていません笑

一話につきどれくらいで切ればよいのかわからないので切りのいいところで切ってます。

ここから投稿ペースはかけているところが終わるまで一日一回にします。


2020年12月8日

ちょっと編集します。あまり大きな差はないのですが、こちらのほうが書きやすいので笑


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