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異能の学徒  作者: こゆるぎ あたる
二章 九州本土決戦
13/15

戦闘、開始


 異能第一混合班が駆け出すのを感じる。感じるというのは、僕の龍眼では人間の動きというのは感知できない。しかし、“膜”を発現した異能の学徒の動きは感知できるためだ。


 この第一班は、相当な使い手が編成されていると感じた。というのも、“膜”を発現させる事が出来る者は少ないとされているが、現在動いている中の六人は、確実にそれを発現させている。この割合を通常の前線基地の人員と当てはめれば、尋常ではない事だ。


 舞坂基地総勢十二人いる中でも、常に膜を纏う事が出来るのはツジのみ、体調によりクニエダ、という二名のみなのだ。それを考えれば、この六人の“膜”の発現者というのが、各基地の選りすぐりの人物というのが伺える。


「混合第一班、目標へ接近」


 ハヤシは無線機を手に取り、祈るような顔で報告をしている。


「“激蹄(げきてい)”の異能、“健磐龍命(たけいわたつのみこと)”へ初撃をを加える。目標は大きく体勢を崩してることが見受けられます。トノサキ、攻撃の効果を」


 ハヤシの言葉にはっとして、僕も報告を付け加える。


「目標は中程度の損傷。規模、先の戦車の砲弾の一撃の数倍の効果と見られます」


 無線に言葉を伝えるが、返答は無い。おそらく、各地の観測班から同じような報告が次々と届いている為だろう。

 

 “激蹄(げきてい)”|“は、端的に言えば猛烈な足技を用いる異能であり、乙の異能に分類されると聞く。いわば、僕の良く知るクニエダの“反重力脚”の上位互換とも言えるかもしれない。こと戦闘における柔軟性のみを言えば反重力脚に軍配に上がるかもしれないが、制圧力、機動力、攻撃性能を考えれば、激蹄の方が数段上だとする資料を呼んだ事がある。そして、各前線基地の報告によりそれは明らかである。


 僕の異能の“龍眼”は、膜を感知出来ても、実際の姿を視覚としてとらえる事が出来ない。そのため、状況把握に優れる“千里眼”のハヤシと組まされている。本部への報告は、この二つの異能によって初めて有用な情報となりえるのだ。


 強大な害物の反応と、異能の学徒のいくつもの“膜”の反応が交わる。

 異能の学徒の特攻が始まったのだ。学徒の膜の反応と、害物の反応が交わっては離れ、また交わる。

 龍眼を通して見れば、それは連続した一瞬の火花のようであった。

 ハヤシは無線機を置く。


「ついに始まったな」

「ああ、そうだね」

「今先陣を切った“激蹄(げきてい)”の異能が、横浜基地のカキクラだ。トノサキ、正直に答えてくれ、カキクラの一撃は、目標に効いているのか?この第一班は“健磐龍命(たけいわたつのみこと)”に損傷を与えられているのか?」


 ハヤシは、若干不安の表情を浮かべて問う。


「ここで嘘を言った所で意味はあるまい、無論効いているさ。害物の反応が、現代兵器の攻撃を受けた時と比べて段違いに減っている。流石は横須賀前線を取りまとめている者の一撃だな」


 僕の言葉に、ハヤシはホッとした表情を見せて椅子に座り直し、正面を見据える。勿論、僕の言葉に嘘偽りはない。無論、効いているのだ。航空、戦艦、戦車の攻撃に比べれば。

 しかし、“健磐龍命(たけいわたつのみこと)”の纏う膜、いわば生体反応は依然としてその存在をありありと示している。

 

「大丈夫、大丈夫だ。選りすぐりの第一班なんだ。僕たちの心配とは裏腹に、すぐに目標も退治できるやもしれない」


 慰めとも取れる言葉が口から出た。僕が、僕自身を落ち着かせる為にほとんど無意識に出た言葉だった。


 「弩級腕、激蹄、波動砲の異能の学徒が目標を攻撃。目標は大きく体勢を崩しました。反撃の傾向無し」


 ハヤシは矢継ぎ早に状況を口にする。

 状況だけ見れば、順調なであると言えると思えるが、初めての特別個体の害物との戦闘という事実が心をざわつかせる。


 




 


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