第三話Aの3 女オーク
……複雑な気分で居城へ戻る俺。ディンゴは早速ラーメンの出前を取る……。
──ズズズ~。
ラーメンを啜りだすディンゴ。このラーメンは“ぽんこつラーメン国取られ物語”と言う。お勧めメニューは“涙の味”がする“ぽんこつラーメン”が有名だ。しかし俺には“少々しょっぱい”のでいつも違うメニューを出前している。
すると、本来出入りするはずのドアからではなく、地上8階程の高さもあるだろう絶壁の窓から、持ち前の“パルクール”で見事進入を果たしたのは第二歩兵旅団長ジュリア・ナポリターノ大佐であった。
「よいしょ、よいしょ、ふぅ……。──想一郎様!」
──ビシッ!
と、敬礼するジュリアは、美しいブリュネットの髪も乱れたまま、何時も通りナウススに注意される
。
「ジュリアか! なんで何時も普通にこれんのじゃ!」
「申し訳ありません! こっちの方が早く来れるので!」
因みにジュリアは、これがどれだけ凄い事か気づいていない。自分はあくまでただの“イタ飯屋娘”程度にしか思っていないのだ。しかし、普通に来る場合より圧倒的に早いのは事実でもある。
この城は王都の城よりかは小さいが、実戦向けの入り組んだ城だ。忍者を想定して作られても居るこの城で普通に来るより早いのは異常なのだ。──今度ジュリアに相談して、対忍構造を是正しなくてはならない。それはともかく、それほど急ぎなのだろうから、俺はジュリアの話を聞く事にした。
「それでどうした? ジュリア」
「ハッ! 想一郎様! 凱旋早々で申し訳ありませんが、エリザベス大佐の部下が私の所に偵察報告に来まして、それが、えっと、オーク軍に不穏な動きアリだそうです!」
「──オークじゃと!?」
ナウススは大きい声を出すが、俺もディンゴもそうしたい気分だった。
「はい。どうやら国境付近でナリを潜めていたオーク部族のリーダーが最近変わったようなのです」
「その名は?」
「はい! その名は──オークレディ・ボボンギャマッチョ!」
「「「オークレディ・ボボンギャマッチョ……!?」」」
「聞いた事の無い名じゃ。確かに新リーダーなのか……」
(というかなんじゃその名は……)
「女オークがリーダーか。かなり珍しいが、だからこそ余計に厄介だ……」
ディンゴは言う。オークはそれだけでかなり厄介だ。オーク1匹は人間3人分の強さなのだ。なのに、何故敢えて女オークだと厄介なのか、俺は興味を持った。
「そうなのか? 厄介? 何故か詳しく話を聞かせてくれないか? ディンゴ」
「おう。……始めに言って置くが、オーク社会ってのはほとんど男性社会だ。強いこそが正義で、絶対の序列なんだ。オークの女はどうしても体格的にそこで勝てずに従わされてばかりなのだが、たまに何かあってぶっ飛んだ女が稀にリーダーとなることがある」
ほう。なるほど。オークって常に“同窓会みたいなマウントの取り合い”を拳で決めているイメージだ。
「俺のご先祖様がそんな女オークに苦しまされた事があるんだ。千年以上も前の話だが、未だに親族の食卓で話題になることがあるほどだ。……そんな俺のご先祖様、コーリー・ラムチェイサーは世界を股に掛けた伝説の交易商キャプテンバレルと共にそんな女オークと戦った事がある」
コーリー・ラムチェイサー……。ディンゴの家は代々イヌなんだな。まぁイヌ科だが。しかし苗字のラムチェイサー……。“羊を追跡し者”……? ──牧羊犬だったのか?
「その女オークの名は、ウガァハハ・バーバママー。そう、伝説のオーククイーン・ウガァハハ・バーバママーだったのだ──ッ!」
ボボンギャマッチョと言い、すげぇ~名前だな。──適当感がハンパない!
「──知らん! そんな伝説聞いた事もないわ!」
「──え!?」
ナウススが若干キレ気味で言った。
──ドシーン! ドシーン!
「イケメン捕虜はこれで全部かいッ?」
『──ハッ! ボボンギャ様!』
「ふ~ん……。コイツとコイツとコイツ……寝室に連れて来なッ! 残りはお前らで食ってよしッ!」
『了解しました! ボボンギャ様!』
(((──えっ!?)))
『『『──ウッホッホ! ウッホッホ!』』』
(((あ~神よ……!)))
──この世界は、男とて安心は出来ない……!




