始まれ彼らの物語。
私は茶炉。
日本生まれの日本育ち、のだったはずだった。
気が付けば前世で読んだ転生モノの小説のように記憶を持ったまま転生してしまった、なのにその肝心な大事な記憶は役に立たない物ばかりだ。ついでに言えば名前も前世のままだった。
だから転生したからといって特に私の新しい人生は大きな試練もある訳でも、私チート!みたいなこともなく普通に成長した。悲しすぎる。
記憶が戻ったのは物心つく頃でその頃に気付いたことと言えば両親はいない事だった、私はエルフの長老に育てられていた。
どうやら両親は魔族に殺されたらしく、その母がエルフでその伝でエルフの長老に育てられていた。しかし聞いたところによると父は人間だった。そして母はエルフ、そうなるとその間から産まれた私はエルフではなくハーフエルフというものだった。私はハーフエルフ、純血主義のエルフにとっては異物だった。
だからハーフエルフの私に対して、長老は決して愛情深くないし優しくはしてくれなかったけど正直何も知らずに投げ出されるより有り難かった。
だからこそなのか前世は親馬鹿二人に囲まれて育ったため、静かで冷たい環境はどこか寂しかった。
この世界のハーフエルフは不老だ、だけど不死ではない。私は不老長寿というほうが正しいのだろう。エルフはその上をいく不老不死で魔族にさえ襲われなければずっと生きられるということだ。
不老故に成長が17歳で止まる、この世界での17歳は前世でいう成人になる歳だった。
その成人になる17歳なったらここを出ていく約束になっていた。私はハーフエルフはエルフとも人間とも違うからだ、別に私はそれでもいいと思っていた。人間はハーフエルフもエルフも区別はつかないらしいし、何よりもいつまでも冷たい目でみられるここに居座る理由もなかった。
だから私はここを出ていくその日まで知識と技術をこの身に叩き込んだ。
そして数年の月日が立ち、私はここを出ていくことになる。長老に無機質なお礼をして、私はエルフの森を出る。長老のやっと終わったかという顔にどこか苦いものを感じたけどそれでも私は前に進んだ。
ここに生まれ落ちてから自分でも分かるように冷めていた。あの森でももう少し愛想良くしていれば何か変わったのかも知れない。変わらない可能性の方が多いけど
前世に対してまだ未練たらたらだった、産んでくれてありがとうって言ってない。仲良くしてくれてありがとうって言ってない。寂しかった、苦しかった。ここを出て生活が安定したらなにか動物を飼おう。友達も作ろう。そう決意した。
そして今世の父親が私に残してくれた財産でワコクという国へと向かう、話を聞けば私の前世いた日本と類似していた。少しでも元の世界を感じられればいい、小さな希望を抱いて向かったはずだった。
「⋯⋯はぁ」
私は頭を抱えた。空が憎たらしいほど青くて、余計に溜め息をついた。
「ちゃーさん、ためいきなんかついてどうしたんですか!?」
どういう成り行きか、子供を拾ってしまったのだ。
よろしくお願い致します。