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彼女の笑顔

 空元気でも元気ともいうけど、今の弓美はそういう状態なんだろう。

 明るく笑う姿にもっともっと元気になってもらって、その笑顔を見ていたいという気分になってくる。


「そうか、よかったよ。弓美みたいに可愛い子が自殺なんてもったいないよ」


 少し冗談めかして言うと、弓美が頬を染めて顔を背けた。


「うっ……なんでさっきから。私……ある意味自分自身なんだよ?」

「ん?」

「自分自身を口説いてどうすんのよ。もう、さっきから私がいいなって感じる反応ばかりして……堕としにきてるの?もう、狙いすぎよ」


 弓美は恨みがましい目つきで上目遣いで睨んでくる。いや、だから弓美もその姿が俺好みなんだってば。

 この明るくて元気なのが弓美の普段の姿なんだと思う。

 でも、さすがに好みのタイプの女性にそんな態度を見せられると恥ずかしくなって思わず勢いのまま反論する。


「弓美だって、さっきから反応が可愛いすぎるんだよ、俺好みの美人だし……あ」


 沈黙、お互い何を言ったのかに気づいて、赤くなって見つめ合う。


「あはは、ね、私も矢的って呼んでいい?」

「え?」

「さっきから弓美って呼んでるよ。気づいてなかった?」

「あ、つい……そうだな、いいよ。でも、そう言えば……」

「何?」

「俺、女の子のこと名前で呼んだの弓美が初めてだ」


 恋人なんていた経験なんてなかった。女の人のこと、名前で呼ぶのは緊張して難しいだろうなと思っていたのに、弓美はあっさり自然に呼ぶことができた。


「へぇ、そうなんだ」

「なんだよ、恋人なんていたことないんだからしょうがないだろ」


 俺が拗ねたように言うと、弓美は微笑んで言った。


「私もないよ」

「何が?」

「男の人を名前で呼んだことも、恋人がいたことも、ないよ」


 少しはにかんだ笑顔に思わず魅入ってしまった。

 うん、弓美って本当に可愛い。

 俺はこのときにはもう彼女のことを一人の女性として受け止めていたんだと思う。

 平行世界の自分自身だなんて意識はまるでなくて……。


「俺の部屋、見てみる?」

「いいの?」

「俺の趣味と、その恰好から推測なんだけどもしかしたら好きかな、と思うんだけど」


 弓美が怪訝そうに自分の格好を見て首を傾げる。

 俺はその様子に苦笑しながら誘いをかける。

 ナンパと言えば定番の『お茶しない?』という誘いの言葉で、俺と同じ趣味の弓美にとって一番効果のあるだろう、誘いの言葉で。


「自衛隊広報センターで買った『撃』シリーズあるんだけど一緒にどう?」

「えっ、ほんとっ?」

「うん、まんじゅうとせんべい、この前買ったのがあるよ。食べる?」

「うんっ、食べる。『撃』大好き!」


 俺は足どりも軽く着いてくる弓美の様子に嬉しさを感じていた。

 それにしても、この反応の良さだと昼は『撃』カレーでも一緒に食べようかな。

 すごく喜んでくれそうだし。



もう何年も広報センターに行ってないから『撃』シリーズがどうなっているのやら。

まんじゅう、結構好きでした。

ゴーフレットもあったよなぁ、

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