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オレとご主人サマとランクの差

「んだごらぁ!? やんのか! あぁん!?」


 ビクゥッ。

 と、唐突に大声出さないでくれよ! マジでびびるだろ!


「ソーマ、大丈夫かい?」

「おう、びっくりしただけだ。大声苦手だかんな!」

「もうしょうがないなあ。ちょっとソーマの為に止めてくるよー」

「お前、それあわよくば殴られたいだけだろ?」


 ちらっと視線をやれば、ガラの悪そうなゴロツキ二人がにらみ合ってる。

 あの肩のトゲトゲってゴロツキは絶対つけとかないかんのか?

 オレを攫った盗賊共もつけてた気がするんだけど。


「あはっ、ばれたー? でもなあ、できるなら可愛い女の子に殴られたいなあ」

「おう、後で好きなだけ殴ってやるから止めてこい。折角の料理が不味くなる」

「はーい。行ってきます!!」


 抱きかかえられてたのから解放されて、座ったときに感じたパンツの不快感はとりあえず無視した。流石にご主人のズボンまでは濡らしてねーよな!? オレの尿道括約筋弱すぎぃ!! いや、奴隷商館で開発された結果なんですがね!! 特殊性癖つけんじゃねーよ、クソがっ!


 そして、ご主人は悦び勇んでなんか口論してる二人組のゴロツキの所に向かっていった。


「ねーねー。可愛い女の子の為にも、ここは穏便に済ませてくれないかなあ?」

「あぁん? だったらお前が解決してくれんのか!?」

「えー、原因が分かれば僕が解決しても良いけど、何が原因なの?」


 あーくっそ、アイツめっちゃ期待してる顔だ。

 すげえ、嬉しそうな顔してやがる。横顔だけで分かるのがなんかなあ。


「ねえ、お嬢ちゃん、彼、有名な冒険者だって聞いてはいるけど大丈夫なの?」

「大丈夫っす。クレーターができる一撃にも平気で耐える防御バカです」

「それは凄いのかなあ?」

「すげーっすよ。迷宮中層程度の魔物なら鎧無しでヒール不要だったし」

「すごーい!!」


 ドゴンッ!

 おお、なんか揉めてたようだけどついにゴロツキが痺れを切らせてご主人に殴りかかったみたいだ。

 派手な音に風圧も凄かったところ見ると、ゴロツキのランクも高そうだなあ。

 いやあ、不意打ちの大声はビビったけど、流石に何が起きてるか分かれば心持ちも違う。


 まあでも、ランク差って早々に埋められる物じゃないし、AとSでもかなりの開きがあるのに高く見積もってもBランクだったらかすり傷だろうなあ。


「いったいなあ! ほら、もっともっと!」

「な、なんだコイツ……! 俺の全力が効いてないだと」

「ええ!? 効いてるよ! 超気持ちいいよ! ほらもっともっと! そのたまった物全部僕にぶちまけなよぅ!!」

「うわ、やべえ奴に目をつけられちまったぜ」


 公衆の面前で殴られて気持ちいいとか言うんじゃねえ! オレの品位まで疑われるだろ!? まあ、奴隷だから品位どうこうはどうでもいいんだけどなっ!


 一撃だけ加えて、そそくさと退散していったゴロツキども、あれ、金払ってなくね?


「うーん、もうちょっと欲しかった……」

「おう、屋敷に戻ったらご褒美に苛めてやるよ」

「ホントに!?」


 しょんぼりされても困る。折角外に出てるんだから楽しくなきゃな!


「おう、つーか、顔大丈夫か?」

「かすり傷にも満たないよ、こんなのー。タンスの角に小指ぶつける方がダメージ大きいね!! ああ、またぶつけようかなあ!?」

「……はあ、とりあえずヒールヒールっと」


 オレの手から淡い光が漏れて、かすり傷程度のご主人の傷を癒やす。

 癒やし終わったら、なんか店内がざわついてたんだけど、何これ。オレなんかしたか?


「あははー、ありがとー。やっぱりソーマのヒールが一番嬉しいなあ!」

「そうかそうか、屋敷に戻ったら初等魔法でじっくりたっぷり苛めてやるからな!」

「ほ、ほんとに!? 期待しちゃうよ!?」

「お、おう……」


 どん引きである。

 まあ、言ったからにはやるけど、たまにはゴロゴロまったりしたいなあとか思ったりもする。

 ご主人居るとなんだかんだでうざいし。あれだ、人懐こい大型犬飼ってる感じ。ドMの。


「うーん、ソーマ、街楽しくなかった?」


 会計を済ませて、店を出るとご主人がそんなことを聞いてきた。

 テンション低いのはパンツが湿ってて気持ち悪いだけなんだけどなあ……。路地裏行って乾かしたい……。


「いやあ? ただ疲れた。オレ人混み苦手だって前にも言わなかったっけ」

「あれ、そうだっけ? それはごめんねー」

「あー、気にすんな気にすんな。身分は弁えてるつもりだ」

「ソーマの嫌いなことをするつもりはなかったんだけど、いつも屋敷に一人だし、寂しく無いかなーって」

「お前がいるから、十分楽しいぞ」

「えへへ、そっかー」


 全く、世話の焼けるご主人だ。不器用な気の使い方に苦笑が漏れる。

 これは戻ったら存分にご褒美をあげないといけないじゃないか!! ランクも上がったことだし、傷つける位はできるだろ! ああ、ちょっと楽しみだ!


「それにしても、ソーマってやっぱり魔法の才能の塊だよねー」

「はあ? いきなりなんだよ」

「無詠唱なんて、Sランクの魔術師でもできないのに! 特にヒールなんて最難関なのに!」

「ああ、ざわついてたのってそれ……」


 おう、ヒールとか一番簡単だったぞ。

 要するに、細胞が修復するイメージだしな。ちょっと理科の生物分野の知識があればなんとかなる。

 あー、なんだ、オレもオンリーワンスキル持ってんじゃねえか。


「いやあ、やっぱりソーマを買って正解だったなあ! 苛めてくれるし、効率的なダメージの受け方教えてくれるし!」

「……おう、今度DEF溶かす魔法覚えてやるから魔道書買ってくれよ」

「ほ、ほ……」


 ほ? なんだ?


「ホントに!! わあい、やったあ! ソーマが本気で僕を苛めてくれる気になったわあーい!!」

「だから、いい大人がみっともなくはしゃぐんじゃねえ! 屋敷に帰るぞ!」

「うん!! 帰ったら早速取り寄せのお願いしないとだ!!」


 早まった気がした……。

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