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オレとご主人サマ  作者: 来宮悠里


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37/40

オレと聖職者サマと重大な事実

 アルラと別れた帰り道。気がつけば随分と話し込んでいて、辺りには夕暮れ時になっていた。

 昼間以上の冷え込みに、商店街の人達も早々に店じまいをしているようだ。

 軒先に篝火を焚き、営業するのは食い物やばかりである。


「あれ、ソーマ? こんな遅くにどうしたの?」


 そんなオレに声を掛けてきたのはミセリだった。

 相変わらずの聖職者然とした格好は、性職者然として見えてなんともエロい。

 何がエロいって、群青の法衣が体のラインを包み隠さず見せつけてくれているのがとてもエロい。こんな格好している聖職者なんてミセリだけだ。


「相変わらず分かりやすいのね。触る?」

「うむ、いい尻だが、残念だけどオレはおっぱい派だからなあ。でもミセリがいるって珍しいな」

「そろそろ下層掃討の時期だからここまで来たの。宿取ってないからお邪魔してもいいかな?」

「おお、いいぞー」


 どうせ、部屋は余っているし、誰か客がいればオレが襲われる心配は全くもって無い。

 だからこそ、オレが反対する理由はないのである。


「わあい、久々にソーマの手料理が食べられるー!」

「なんで喜ぶときはこんなに子供っぽいかね……」


 割と付き合いが長くなってきてはいるけれど、これはミセリ最大の謎である。

 まあ、慣れたし、それはそれとして今日の出来事でも道すがらの雑談にしようと思って、オレは口を開いた。


「そいやさ、さっきアルラっていう女の子に人違いされたんだけどさ」

「……アルラ?」


 オレのその一言でミセリの顔が一気に険しくなる。

 何かマズい事でも言ったのだろうか?


「えっと、ソーマ……。そのアルラって子の容姿覚えてる?」

「ああ、勿論。可愛い子だった……ぞ? あれ?」


 オレはつい先ほど話をしたアルラという女冒険者の容姿を思い出そうとする。

 しかし、話をした記憶はあるのに、容姿がさっぱりと思い出せない。


「そう、やっぱり思い出せないのね……と言うことは、見つけられてしまったと思った方がよさそうね。スィエの宿は分かる?」

「え、ああ。分かるけど……。緊急事態か?」

「まあそんなものだと思って。マーク、いるのでしょう? クリスに伝えて、災禍の魔女が復活したわ」


 ミセリは眉間に皺を寄せたまま、虚空に声を掛ける。

 そうするとすぐさま目の前に小悪党顔の男が現れた。マークだ。


「……すぐに伝えます。ミセリ、無茶はしないように。ソルナ様の体を渡すわけには行きませんよ」

「勿論よ。ソルナ様の願い、無碍にできるものですか」


 短くやりとりを交してマークの姿が掻き消える。


「……はあ。やっぱりなんか特別なんだな、オレ」


 全くもって隠そうともしない、この剣呑さ。これじゃあどれだけ鈍くても分かる。

 そもそも、アルラとの話で出てたソルナという人物名まで出ているのだ。


「出会わなければ、ソルナ様の肉体を持つ子がいるなんて知らなかったのよ」

「そうか、全部ご主人が悪いって事か」

「そう言う事。さ、スィエを拾って屋敷に戻りましょう。全部説明するからね」

「了解、了解。ただの転生者だと思ってたんだけどなあ、オレ」


 まあ、異世界に転生できること自体が稀な事だと、転生するときに聞いた事を朧気に思い出す。

 それと体の素体は用意されて、自分好みにカスタマイズをしたつもりだったのだが、そこに何物かの意思が介在していたのかと思うと、少しだけ気分が悪い。

 それと服飾士のクレア……本名はクローネなんとかという人物を見るからに、本来なら元の姿で転生を果たすはずなのだ。アイツはオカマだったからどこまでが本当なのか分からないけれども。


「そういうこともあるわよ。当たりくじよ!」

「なんか、世界の命運に巻き込まれる気がぷんぷんするんだけど」

「だ、大丈夫だと思うけど……災禍の魔女って二つ名ついてるけど、ただのソルナ様ファンだから……多分」

「いや、そこまで聞いたら、もう今後何が起こるか簡単に予想出来るぞ!」

「だ、大丈夫よ……街一つ滅ぶ程度の戦争で済むから……」

「あーあー!! 聞きたくねえ!! 聞きたくねえ!!」


 街一つ滅ぶのが程度で済む、こいつらのスケール。

 やっぱSランク冒険者の価値観って頭おかしいわ!

 こちとら転生するまでは一庶民として生活していたくらいの平凡な人間だったんだぞ。戦争とは無縁だったんだぞ!

 くそう……後でご主人を思いきり殴ってやる……殴ってやるぞ!

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